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燕市庁舎の設計に関わった建築家が庁舎を見学(2003.3.22)
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燕市役所の本館庁舎は、昭和37年の竣工から41年になる。その設計に携わった建築家の夏目勝也さん(62)=千葉県習志野市・夏目設計事務所=が20日、燕市役所を訪れて当時のままの姿を残す庁舎を感慨深く見学した。
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燕市役所の設計に関わった夏目勝也さんとその妻、幸子さん
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建築から40年ほどたつ建物が、耐震性や老朽化の問題で次々と取り壊されており、夏目さんは歴史の欠損になると危惧している。とくに庁舎は、市町村合併で取り壊しが加速度を増しており、ここ2年が危機と言う。
夏目さんは、時代を問わず話題になった建物を見て回っており、燕市役所も以前から見学したいと思っていた建物のひとつ。22日行われる新潟市のグループホームの竣工式に、その設計を手掛けた同じ建築家の妻幸子さん(62)が出席することになったため、夫婦で来県して念願だった燕市役所の見学を実現した。
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今では珍しい人造研ぎ出しの技法のカウンター
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本館庁舎は、建築家の故佐藤武夫さん=東京都=が設計した。佐藤さんは主に市役所や公会堂を設計、県内では旧新潟市役所も設計している。夏目さんは、大学時代に佐藤さんに弟子入りしてから大学を卒業してアトリエ事務所に入社するまで佐藤さんの仕事を手伝った。その間に佐藤さんが燕市庁舎を設計。佐藤さんは、たくさんの建物を設計したなかでもとくに燕市役所は気に入っていたと言う。
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防災面も考慮して交差する設計の階段
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昔の状態を保つ建物は、その当時の材料や時代背景を見ることができる。庁舎3階の議場は、内装にラワン材を格子状に組んでいる。ラワン材は、今は環境保護の面や不燃材でないことからほとんど使われなくなっている。
各課カウンターの黒い大理石風の材料は、セメントに石の粉を混ぜて研ぐ「人造研ぎ出し」という懐かしい技法。階段は隣り合わせの2本の階段が中央の踊り場で交差する設計で、これは火災発生時に踊り場の中央にシャッターが下りるという防災上の工夫といった具合だ。
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外装はヘリンボンのタイルを張り、その存在が忘れられているバルコニー
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外観は西洋を意識しながらもヘリンボンに貼ったタイルは日本的。正面玄関上の市長室となりの応接室には、バルコニーがある。欧州ではバルコニーに市長が立ち、市民に声をかける場所という意味合いがあるが、今ではその存在にすら気づかない職員もいる。
夏目さんは、洋食器の町として外国との関係を深めた燕市について「今で言う情報発信の町。世界に通用する市役所を作ったのだろう」と、当時の市や佐藤さんが庁舎に込めた思いを推測する。
「建物のオリジナリティを極めて忠実に残している。市民の皆さんが大事にしてくれることが大切」と今後の保存に期待し、幸子さんも「そのまま残っているのが見られてうれしかった」と話していた。
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