世界のアウトドアブランド、スノーピーク(山井太社長・本社三条市中野原)は、百パーセント出資子会社として就労継続支援A型事業所「株式会社スノーピークウェル」(山井太社長・三条市三貫地新田)を設立。7月1日に認可を受け、9月20現在で6人の利用者を雇用してスノーピーク本社からの受託業務に就いている。福祉と関係のない民間企業が就労継続支援A型事業所を設立するのは県内でも初めてで、社会貢献する新たな企業のあり方として注目を集めている。
就労継続支援事業所は、障害者自立支援法に基づく就労継続支援のための施設。障害者に働く場を提供する。A型とB型があり、A型は障害のある利用者と雇用契約を結んで最低賃金を保障し、B型は利用契約を結ばない非雇用型。A型では利用者は社員となる。
スノーピークウェルが雇用しているのは、三条市内に住む20代から50代までの男女3人ずつの6人。定員20人で、9月末までに三条市、燕市、見附市に住む3人を雇用して9人になる。週休2日の午前10時から午後4時まで、1日実働5時間の勤務。時給は最低賃金の683円で、10月5日からは689円に引き上げになる。福祉サービス利用の1割負担金があるが、事業者側が負担し、利用者の負担はない。雇用保険と労災保険に加入する。
利用者の対象は障害福祉サービス受給者が対象で、雇用は随時、ハローワークで募集し、同社の採用面接を行って合格する必要がある。
仕事はスノーピーク本社のキャンプ場、そしてスノーピークウェルの事務所を置く三貫地新田の旧本社建物の物流センターでの軽作業など。スタッフは施設長、サービス管理責任者、生活支援員が1人ずつ、職業指導員2人の5人。就労中はスタッフが付き添い、あくまでも受託業務に就く形態をとる。事務所には設置基準にそって相談室も備え、仕事にかかわる利用者のさまざまな悩みや心配事にも答える。
スノーピークは1995年の阪神・淡路大震災以降、地震や水害のボランティア活動に取り組み、常に社会貢献を企業活動のなかに組み込んでいる。昨年、山井社長は岐阜県で就労継続支援事業所を立ち上げている企業の経営者と知り合い、スノーピークはメーカーなので、委託できる作業がたくさんあり、仕事が提供できるのではと勧められたのがきっかけだった。
利用者からすると雇用契約のないB型よりもA型が有利だが、B型に比べてA型は申請や雇用環境の整備などハードルが高く、県内ではA型が圧倒的に不足していることから、あえてA型に取り組み、5月1日にスノーピークウェルを設立。7月1日に認可を受けて業務を開始した。社名にある「ウェル」は、「福祉」の意味の英語「ウェルフェア(welfare)」から。
授産施設や医療機関のソーシャルワーカーとして働いた経験のある池上宏志サービス管理責任者は「障害のある地域の人たちから地域の会社で働いてもらえれば、地域全体としていいこと」で、「人材育成には時間や労力などの投資が必要となるため、ちゅうちょされる企業もあるかと思います。弊社で実績を積んだ人材であることを企業に対してアピールしていけば、今後の転職活動が有利に進められるのではないでしょうか」。
山井多香子施設長も「ここを訓練の場と考えて、さらにステップアップを目指していってほしいと思います。特別支援学校を卒業していきなり一般の企業で働くのは親御さんも心配でしょう。仕事や社会を経験してもらい、より長時間の仕事ができるようになるお手伝いをできれば」と働く場所を提供するだけにとどまらず、障害者の受け皿となる地域全体のポテンシャルを高めたいとう思いが強い。
10月10日午後2時から燕三条地場産業振興センターで行われるハローワーク三条と巻の合同の障害者合同就職面接会に同社も参加し、活動をPRする。採用などに関する問い合わせは同社(電話:0256-39-7711)へ。