三条商工会議所交通・運輸部会(岡田大介部会長)は18日に開いた経営者セミナーで、新潟県大沢山温泉の旅館をリノベーションして「里山十帖」を開業した(株)自遊人代表取締役でクリエイディブディレクターの岩佐十良(いわさ・とおる)氏を講師に「なす(茄子)で1泊2食三万円?新潟の隠れ資産〜里山十帖プロジェクトの取組〜」を聴いた。
午後6時半から三条ロイヤルホテルで開き、同部会以外の会員からも希望があり計32人が参加。「新潟は知られざるもの、皆さんが気づいていて、気づいていないものがたくさんある」、「今のところ潜在的なポテンシャルはあるけど生かされていない。宝の山をどう生かすか考えれば、今後伸びる大幅な伸びしろはある」と新潟の大きな可能性を示し、あらゆる角度からのたくさんのヒントを盛り込んだ岩佐さんの話を、多くの参加者がメモを取りながら熱心に聴いた。
岩佐さんは1967年、東京・池袋に生まれた。武蔵野美術大学でインテリアデザインを専攻。同大学四年次在学中に現・株式会社自由人を創業。2000年にライフスタイル雑誌「自遊人」を創刊。02年に雑誌と連動した食品のインターネット販売を始める。04年に活動拠点を東京から新潟・南魚沼に移転。09年TBS系『情熱大陸』出演。10年農業生産法人自遊人ファーム設立、代表取締役となる。
2012年、新潟県南魚沼市の大沢山温泉・旅館「高七城」を引き継いでフルリノベーションに着手。14年にクリエイティブ・ディレクターとして全デザインを担当した新たなライフスタイル発信メディアとしての宿「里山十帖」(さとやまじゅうじょう)をオープン。ディレクター、キュレーターとしても活動し、食の分野では企業や講評団体の商品開発も多数。「一度は泊りたい宿 覆面訪問記」(角川マガジンズ)など著書多数。行政の召集する委員なども多数勤める。
セミナーでは、昨年5月にグランドオープンした「里山十帖」について話した。料金は1泊2食で平均4万円前後で、この料金からであれば部屋も広くて豪華、伊勢海老や船盛など豪華で食べきれないほどのごちそうが浮かぶはずと話したが、「うちは、なんとナスなんですね。夏はナスばっかり。おそらく新潟県内の人がくると途中でちゃぶ台ひっくり返すかもしれない」、「でも新潟県の人はそうだが、うちに来ていらっしゃるお客様は首都圏が中心、首都圏のお客様はそれがおいしいといっている」と満足度の高さを示し、それが「なんでなのか」考えて頂いたり、観光のヒントにしてもらえればと始めた。
「里山十帖」は、宿ではなく「ライフスタイル提案型複合施設」、「たまたまやろうとしていたことに宿泊施設がついていた」。小さいけれどライフスタイルのいろいろなことを複合的に提案しており、十帖の「帖」は「綴り」の意味で、「十の綴り」、「10のものがたり」。住、衣、食、農、健、環、癒、遊、芸、集の10のテーマで構成するプロジェクトは、2014年のグッドデザイン賞で、旅館で初めて「Best100」に選定され、中小企業長官賞「ものづくりデザイン賞」を受賞した。
10のテーマを紹介しながら、新潟の古民家の価値や寒さ対策も考えたリノベーションの手法、農業を知ってもらうために「なんでこのおコメはおいしいんだろう」と興味を持たせる手法、観光や旅行で求められているモノやコト、暮らしている人たちが気づいていない新潟の自然環境や食などの観光資源や強み、横のつながりの大切さなど、たくさんの取り組みを話した。
岩佐さんは、新潟県は、県内経済が強く、昔から独自の文化のようなところがある。県内で暮らし、県内で商売していけば生きていける時代があり、県内だけを見る傾向があると指摘。今の世の中は日本中の人は県外を見ていると言い、「新潟県のかただけが県内を見ている。県外を見て、県内をもう一回見直した瞬間に、すごいぞ宝の山だと気づく」。「三条が勝つ、魚沼が勝つとか、村上が勝つとかではなくて、新潟を全域でアピールしていくと、新潟県はすごいことになる」と大きなヒントを投げかけた。