有名企業や団体が導入しているアイデア創出イベント「アイデアソン」と開発イベント「ハッカソン」の概要と効果をわかりやすく紹介しようと燕市で23日、セミナー「アイデアソン・ハッカソンってなぁに?」が開かれ、大学生も多い135人が参加してそのさわりも体験し、盛り上がった。
アイデアソンは「アイデア」、ハッカソンは「ハック」とそれぞれ「マラソン」を掛けあわせた造語。いずれも米国のIT企業から広がったもので、アイデアソンは多様なメンバーが対話しながらアイデアを生み出し、ハッカソンはシステムやアプリケーションを開発する。アイデアソンはハッカソンの事前学習として行われることもある。
燕市ではそれらを紹介し、さまざまなシーンで自由な発想力を鍛えたい学生、主婦、エンジニア、クリエーター、デザイナー、企業人に生かしてもらおうと企画した。6月25日にはスクラップとなる運命のハザイを素材に新しいモノを生み出す本格的なハッカソン「TSUBAME HACK! VOL.1〜ツバメをハックして、新たな価値を生み出せ〜」を計画。それに向けたプレイベントでもあった。
ヤフー執行役員でCMO(チーフモバイルオフィサー)の村上臣さんによるインプットトーク「アイデアソン・ハッカソンとは?」に始まり、今回のイベントを企画した株式会社フィラメントの代表、角勝さんと2人で対談してからワークショップを行った。
ヤフーでは以前から社内でのイノベーションにハッカソンを活用している。村上さんはヤフーモバイルを立ち上げており、4月にはオープンイノベーション室を設置した。「ビジネスはストーリーに共感してもらうことが本質」、「これからのものづくりは課題に対して共感できる人が集まるべき」、「アイデアがそのまま生きることはない。アイデアを足したり掛けたりをもう1回やるといろんなアイデアが生まれる」、「アイデアがどんどん生まれる環境づくりが必要」などと話した。
複数の企業が連携して事業を進めるうえで「親の総取りはなかなか続かない」、「だんだんバランスしなくなる」ため、「いかに課題を共有し、ワンチームになって中長期でビジネスを続けるか」とも。
ワークショップは20チームに分かれて行い、与えられた2つのキーワード、「はやい」と「米」、「眠い」と「iPhone」、「ふわとろ」と「サバ缶」といった組み合わせからアイデアを生み出すトレーニングのあと、同じチームで「燕発のプロダクト」をテーマに考えた。
背脂ラーメンを取り上げたチームが多く、背脂ラーメンの携帯食、入浴剤、アイスクリームなど。燕市の金属加工技術を生かした義手ファッション、燕職人を家庭などにレンタルするサービス、通信教育型の鎚起銅器の製作、TSUBAME式職業訓練校と、さまざまなアイデアが生まれた。
参加者は高校生から70歳近い人まで。大学を通じて参加者を募集したこともあり、大学生の参加が約30人にものぼり、燕市ではあまり見ることのない構成だった。市外からの参加も多く、地元企業の経営者、クリエーター、デザイナーなど多様な人たちが参加した。それぞれの属性を超えて各チームが一体となってアイデアの創出に熱中し、盛り上がった。
ワークショップで優勝したのは、燕を回って自分たちの手でオーダーメードの結婚指輪を燕職人直伝で作る結婚指輪を考案したチーム。そのチームのメンバーのひとり、新潟大学経済学部3年中島絵里さん(21)は栃木県出身。学校の友人に誘われた。「セミナーの情報をFacebookで見て、有名なヤフーで働く講師の話を聞いてみたい」と参加した。
ワークショップに参加して「アイデアを出す発想、視点は勉強になった。皆さんがぽんぽんアイデアを出してくれ、すばらしい皆さんと一緒で光栄だった」。大学のゼミで燕市の金型工場とコラボレーションしているが、燕市について知っていることは少ない。6月のイベントにも参加したいと思うようになった。
最年少の参加者は、燕市に住む県立燕中等教育学校6年の高橋哉弥さん(17)。昨年4月、県内の高校生団体「NADO」のメンバーになった。昨年度、NADOが燕市の「羽ばたけつばくろ応援事業」の補助を受けたこともあり、市から誘われて参加した。
「日本を代表するIT企業のヤフーで若くして執行役員になった村上さんからいろいろなことを吸収させてもらおうと思った」と高橋さん。村上さんを目の当たりにして「最新の情報などたくさんのことを知っていて、突拍子もないアイデアでもいろんなことに関連づけて話せる。経験の濃さが違うと思った」と目を輝かせた。
将来は研究者が起業を目指す。6月のイベントは模試などがぶつからなければ参加する。「こうした所に参加する人たちは常にいろんなことを頭の中で考えている。刺激になった」とふだんとは違うおとなとのコミュニケーションを楽しんでいた。