新潟県燕市内すべての15小学校は3月24日、そろって卒業式を行い、合わせて692人がそれぞれの学びやを巣立った。新型コロナウイルスの感染リスクを下げるため、時間短縮や参加者の規模縮小などの措置をとる異例の卒業式となった。
政府の休校要請を受けて市内小中学校は3日から休校している。卒業生は22日ぶりに登校、再会して卒業式にのぞんだ。
燕市立小池小学校(菊地博之校長・児童290人)は午前9時半過ぎから同校体育館で卒業式を行い、47人の卒業生が学びやを巣立った。燕中学校へ2人、燕中等教育学校に2人が進学するほかはすべて小池中学校に進学する。
同校は在校生や来賓は出席せず、卒業生と保護者、職員の出席にとどめた。そのためプログラムから来賓祝辞や告辞、全校生徒の呼びかけなどがなくなった。入退場もなくそうとも考えたが、やはりそこはやらせてあげたいという担任の願いもあって予定通り行い、45分ほどに短縮した卒業式となった。
在校生がいなくて席も間隔を広げて並べたこともあって、寂しい印象にはなり、休校で卒業式を練習する時間もとれなかった。本番直前に20分ほど練習しただけのぶっつけ本番に近い卒業式だったが、何ごともなくスムーズに進行した。
寂しくなった卒業式を少しでも盛り上げてあげたいと、5年生の保護者が動いた。「卒業式に花を添えようプロジェクト」に取り組み、「花いっぱい作戦」と「贈る言葉を届けよう」を企画した。
「花いっぱい作戦」は、在校生や保護者で折り紙や花紙などで花を作って卒業式に飾ろうというもの。3月16日から21日までのわずか1週間足らずで1,394個もの花が集まった。卒業式会場の体育館入り口を色とりどりの手作りの花で飾り、門出にふさわしい華やかな演出になった。
「贈る言葉を届けよう」は、在校生が出席できないので、予定していた5年生の「お別れの言葉」をあらかじめ録音して卒業式のなかで流した。
しかも、5年生は担当するせりふをそれぞれの家庭でスマートフォンで録音し、録音した音声データをLINEで集めてBGMまで加えて3分30秒に編集。ITの力を使って感染拡大防止の制約を見事にクリアした。
おまけに卒業生2クラスの教室には、教諭が同校校舎と満開のサクラを描いた驚きの黒板アートを制作し、これを背景に記念写真を撮影する卒業生も多かった。こうした卒業を祝ってあげようという取り組みに「かえって特別な卒業式になった」と喜ぶ卒業生の保護者もいた。
菊地校長は「在校生がいないのはやはり物足りないが、卒業に対する思いはいつもと一緒。気持ちを込めた卒業式にしようと思った」と話していた。