田上の轡田さんの4こま漫画が大賞に次ぐ高知市長賞 (2021.11.17)

新潟県田上町の4こま漫画イラストレーター「Kutsu（くっつー）」こと轡田禎（くつわだただし）さん(47)は、42都道府県から1,163人、1,550点の応募があった高知県高知市など主催の4こま漫画の公募展「第17回まんがの日記念・4コマまんが大賞」で大賞に次ぐ高知市長賞を受賞した。

高知市長賞を受賞した轡田禎さん

この公募展は、『フクちゃん』が代表作の漫画家、横山隆一（1909-2001）の故郷、高知市から漫画文化の発信をと2005年から毎年開かれており、ことしは一般7点、ジュニア5点の2部門で計12点の入賞が決まった。

一般部門で高知市長を受けた轡田さんの作品のタイトルは『自動化』。ロボットによってあるゆる業務が自動化されて人間に置き換わり、ロボットと人間の立場が逆転する未来を風刺した。

高知市長賞受賞作品『自動化』

審査員は轡田さんの作品について、AI（人工知能）が人類の知能を超える転換点そのもので3こま目のロボットの言葉が効果的、「どんどん」が「ここまできてたのか！」とびっくるさせるオチが見事と評した。

「自動化が進んで人間のする仕事は何が残るんだろうと思った」のが、轡田さんの作品の構想の出発点だった。「ここまで技術が進んでいるのに、いまだに貧困があり、人間の悩みは消えない。果たして人間に残された仕事は以外に単純なことなんじゃないかと思った」と話すあとあとから「ここまで深く考えず、意外と思いつき」とにやり。

轡田さんの4こま漫画と仕事

田上町で生まれ育ち、山形大学を卒業して極真空手の指導員を15年間。新潟へUターンして新潟市の広告会社で営業の仕事に就いた。

転機がやってきた。海岸で泥酔して砂浜と思って飛び降りたらそこはコンクリート。両足のかかとを骨折して2カ月、入院した。「そこで自分を見詰め直した。ここでやってていいのかなと」。入院中に4こま漫画を描き始め、看護師に見てもらったら、ナースステーションで回し読みしてもらえた。勤務先の関係で雑誌に載せる4こま漫画を描き、好評だった。「才能があるんだろうと思った」。

「漫喜利 -MANGIRI- 2020」で優秀賞を受けた轡田さんの4こまマグカップ

自己表現をと週2回、東京のお笑い養成所に通った。半年間、通って2019年にやめ、同時に会社もやめて合同会社LFRデザインを設立。4こま漫画とイラストが描けると看板を掲げた。4こま漫画はまだ収入につながっていないが、お笑い養成所時代にシナリオのコンクールで採用されてラジオ広告をつくったこともあり、その経験が4こま漫画のストーリーづくりに生きている。

2020年の池袋アートギャザリングプロジェクトによる第1回のアート4コマ公募展「漫喜利 -MANGIRI-」では、轡田さんの4こま漫画マグカップが大賞に次ぐ4点の優秀賞のひとつに選ばれた。大賞は該当作品がなかったので、優秀賞が最高賞。轡田さんの受賞作品は漫画家のしりあがり寿さんに絶賛されたと言う。

毎年、継続して発行していく冊子「SANJO 4KOMA HISTORY」

轡田さんは自宅で塾も経営する。「答えをイメージして逆算していく方が早く問題が解けることがある。4こま漫画を描くことに慣れればロジカルな力が身につくのでは」。4こま漫画を描くことは思考の整理にもつながると、4こま漫画の“効能”を信じる。

昨年、いろいろな人が描いた4こま漫画を収録した冊子「SANJO 4KOMA HISTORY」を試験的に発行した。毎年1冊、発行を続けて誰でもわかる市民目線の三条市の歴史を4こま漫画でつづっていくプロジェクトも進めている。「おもしろく楽しく4こま漫画をやりつつ、少しずつ結果を出していきたい」と目を輝かせる。