三条市下田地区に残る「中浦歌舞伎関係資料」が新潟県三条市の指定文化財に指定されたことを記念したイベント「地歌舞伎を知る・観る・楽しむ」が19日、三条市中央公民館で開かれ、約150人の来場者は地歌舞伎の魅力を講演と地歌舞伎上演でたっぷり楽しんだ。
中浦歌舞伎は三条市下田地区の中浦で江戸時代後期に始まった。約200年間、伝えられたが1995年の上演を最後に途絶えた。その関係資料指定資料はの衣装や道具、台本、奉納額など158点が昨年6月、指定文化財となった。
この日のイベントでは、古典芸能解説者で元NHKアナウンサーの葛西聖司さんの講演会「歌舞伎を遊ぶ〜農村芝居の醍醐味〜」、中浦歌舞伎詳細調査を担当した三条市文化財保護審議会委員の高橋郁子さんの調査報告「中浦歌舞伎詳細調査」、 南魚沼市・塩沢歌舞伎保存会の地歌舞伎「ます釣り〜三条編〜」 上演が行われた。
ステージの背景に中浦歌舞伎の大きな引幕を飾った。葛西さんは全国各地の地歌舞伎についてフィードワークのように現場で見聞きし、感じたことを映像を使って紹介。高橋さんは写真を使って指定文化財の内容を紹介した。
塩沢歌舞伎保存会が上演した「ます釣り〜三条編〜」 は、オリジナルの演目。大名と太郎冠者(たろうかじゃ)が川でマス釣りをしていろいろなものを釣り上げる。釣りをする場所にご当地ネタを取り込みやすいシナリオで、会場の三条市中央公民館や五十嵐川に三条六角凧も登場した。
ほぼぶっつけのような形で三条市職員なども出演し、いちばんのサプライズは滝沢亮三条市長。白浪五人男のひとりとしてかさを差し、百日鬘(ひゃくにちかつら)をかぶり、派手な着物にばっちり化粧もして花道から登場。せりふはなかったものの見栄を切ってみせる演技もあり、大いに会場をわかせた。
来場した78歳の女性は「三条のことをいっぱい入れてもらったのも楽しかったし、あれはあの人だなと思いながら見て楽しかった」と大満足だった。
塩沢歌舞伎保存会はおとな20人、子ども10人ほどの会員があり、演目は20以上のレパートリーがある。毎年2月に開かれる「しおざわ雪譜まつり」で公演しているが、新型コロナウイルスの感染拡大で昨年、ことしとまつりが中止になっており、2年ぶりに公演が今回の三条市でのイベントになった。
会長の太田喜一郎さん(73)は「楽しかった。失敗だのとちったりだったの舞台のやる楽しみがあり、お客さんが喜んでくれれば倍になる」と笑顔。三条市では中浦歌舞伎の保存だけでなく、再現、復活も目指している。「そういう気運のきっかけになってほしいなと思って、三条市の担当者ともつながりができている。そういうご協力はしたいとお邪魔した」と太田さんも期待していた。
滝沢市長も「ストーリーもおもしろかったし、皆さんの演技もすごくて、その中に入れてとても楽しく、満足してる」と言い、中浦歌舞伎の復活については「ゆくゆくはだが、まずはこうやって一歩一歩、県内の方の力もお借りして。新年度は地元の子どもとのかかわりも始めてる予定」と意欲的だった。