第20回の節目の三条市展に昨年を39点上回る283点の応募があり357点を一堂に展覧 (2024.10.19)

新潟県三条市で第20回の節目の三条市美術展（市展）が19日、開幕した。第20回記念展賞の追加や版画部門の新設もあり、昨年を39点上回る283点の応募があり、特別出品を含めて357点の作品が市民の鑑賞の目を待っている。

開場式のテープカット

三条市主催で毎年、開かれている三条市の芸術の秋を彩る展覧会。22日までの4日間、三条市体育文化会館を会場に開かれており、アリーナに7つの部門ごとに一堂に作品が並んでいる。

版画部門を新設、第20回記念展賞と三条美術協会賞も

応募作品数は7つの部門ごとに日本画20（昨年26）、洋画57（64）、彫刻8（3）、工芸29（28）、書道64（47）、写真83（76）、版画22（−）の内訳になる。

会場のようす

版画部門が新設されたが、これまで版画作品は洋画部門に含まれていた。しかし版画部門がないと版画の出品をためらわれがちで、県内の自治体では版画部門がある美術展が珍しくない。版画の出品を増やすためにも以前から新設の要望があり今回、実現した結果、昨年の版画出品は10点余りだったが、今回は22点と増えた。

第10回展もそうだったように、ことしは各部門1点の最高賞の市展賞と同格で各部門1点の第20回記念展賞を設けた。三条美術協会も歩調を合わせて応募20点以上の6部門に1点ずつ三条美術協会賞を提供した。

版画部門新設で「出品する方も美術展に信頼や親近感をもつことができる」と鶴巻貴子さん

会場のようす

市展の特別出品者の銅版画作家、鶴巻貴子さん(46)＝三条市＝は「ようやく版画部門ができてすごくうれしい」と手放しで喜ぶ。三条市主催の銅版画の基礎講座の講師を務めており、受講生が10点の作品を銅版画部門に出品。市展賞作品も鶴巻さんに学ぶ銅版画の作品だった。

「版画部門がないと、版画の文化がなかなか認知されないし、発展も難しい。版画がひとつの部門として認められると、出品する方も美術展に信頼や親近感をもつことができ、すごく良かった」と話していた。

また、若手の育成を図ろうと、これまで高校生以上だった応募資格を今回から中学生以上に引き下げ、高校生500円だった出品料を中高生とも無料に変更するなど、市展を盛り上げるための工夫を凝らした。

新設の版画部門の作品解説会

初日19日は開場式でテープカットを行って開幕。心待ちにしていた市民がさっそく続々と来場して会場はにぎわっていた。

滝沢市長は書道部門に漢字仮名交じり文の「物欲はないが…」を出品

滝沢市長は昨年に続いて書道部門に出品した。約70×150センチの大きめな横額でタイトルは「物欲はないが…」。市長室にある賛助し名誉市民の漢学者、諸橋轍次（1883-1982）が編さんした古語辞典から秋にふさわしいものを選んだ。

中国の古典「菜根譚（さいこんたん）」にある「心に物欲なければ即ち是れ秋空霽海（しゅうくうせいかい）なり」。物欲さえなければ、人はいつでもさわやかな秋の空。晴れた海のように清らかな気分になり得る。人は欲心のために汚れてしまうという意味だ。

書道部門に漢字仮名交じり作品「物欲はないが…」を出品した滝沢市長(左)と書道部門審査員の山田修也さん

書道部門の審査員、書家の山田修也さんは「純粋な書だと思う。“菜根譚”は質素に暮らそうということが主で、それを選んだことに思いがあるんだろうし、純粋な作風とも合っている」と分析。技術的には「漢字を強めに、平仮名をちょっと小さめに。潤渇で、潤いてだんだん墨がなくなる感じ出れば」と指南しだ。

滝沢市長は「今まで漢字だけだったのが、初めて仮名を書いたので難しかった」。「物欲はないが…」という思わせぶりなタイトルの心は「見ていただく方に委ねたい」とにやり。ともかく2日後の21日告示される27日投開票の三条市長選に2期目を目指して立候補する。

作品解説動画の上映

開場は午前9時から午後6時まで、初日19日は午後9時まで、最終22日は午後4時まで。入場無料で、無料の目録も配布され、作品解説動画の上映もある。