新潟県燕市と弥彦村で構成する燕・弥彦総合事務組合消防本部は27日、28日の2日間、解体作業が始まった旧燕市東幼稚園園舎のリアルな建物を使って大震災を想定した救助訓練などを行っている。
大地震や記録的な豪雨災害などの自然災害が頻発するなか、より現実的な訓練で救助力を高めようと行っている。
燕東幼稚園は昨年度で閉園し、この1月から6月ごろまで解体作業が行われている。その鉄筋コンクリート造2階建の園舎を使った訓練。燕・弥彦消防で同様の訓練を行うのは、10年余り前に旧分水庁舎の解体にあわせて行って以来となる。
大地震の発生を想定して1階部分がつぶれ、2階から床に穴を開けて1階でけがをしている人を救出する訓練を燕消防署、窓やドアを破壊するなどして開放する訓練を吉田消防署のそれぞれ救助隊員が行ったあと、今度は消防署が交代して行った。
訓練に参加したのは、若手が中心の約40人の救助隊員。救助訓練は、穴を開けてから救出まで1時間で訓練を終わって交代する計画だったが、2時間を費やしても救出に至らなかった。
古い削岩機はあるが新しい削岩機はこの1台しかなく、15〜20cmある床下のコンクリートにドリルやエンジンカッター、ハンマー、携帯用コンクリート破壊器具などを使って穴を開けようと試みたが、困難を極めた。なんとか開けた穴からファイバースコープで階下を確認したが、穴を広げているところで予定したすべての時間を使い切り、救出できなかった。
人命救助は、被災から72時間を過ぎると生存率が大幅に低下するとされる「72時間の壁」があり、救出作業は時間との勝負だ。
故障の可能性を考えると削岩機が1台では心もとない。救助隊員がこうした特殊な能力が要求される作業を習得するのもハードルが高い。災害時に専門的な知見をもつ建設業者に資機材や人材の提供を求める仕組みづくり求められそうだ。
青木和也警防課長は「要救助者にアプローチする開口部の設定といったかなり高度な救助技術が利用されるが、このような訓練の専門施設が不足している」と現状を話した。
それだけに「リアルな建物を使った訓練経験がで隊員にとって非常に貴重なもの。今回の訓練の経験をもとに実際の災害でも1人でも多くの要救助者を助け出せればいい」。
さらに「きょうやってみて、資機材の能力の限界も感じ取れたと思うし、これから検証してさらに効果的、効率的に救出できる体制を整えていきたい」と話した。
訓練では、ベテランの救助隊員が若手に機材の扱い方や作業のこつを指導した。穴を貫通させたのは、16年目の金山哲郎消防士長(37)。「今回の経験を通して実際の建物を破壊することと、訓練で使う部分の乖離(かいり)を少し埋められたと思う。今回の経験を生かしてより速い救助を目指したい」。
旧分水庁舎で行った救出訓練にも参加しており、「久しぶりの実際の訓練で、非常に成果のある訓練ができたかなと感じている」と話していた。
救助隊員は24時間勤務で、翌28日は燕消防署と吉田消防署の反対番の救助隊員が参加して、27日の救助作業の続きなどから訓練を行う。