不登校の子どもたちの居場所になればと2023年春、新潟県三条市月岡の空き家に開設されたコミュニティースペース「マサラ楽縁(がくえん)」。そこに新たに「つぼ焼きいも」を販売する「マサラ笑店(しょうてん)」がオープンした。
マサラ楽縁は、キッチンカー「ソイルカフェ(SOYL cafe )」で100%無添加のオーガニックなスパイスカレーを移動販売する三条市の小林正樹さん(46)が手がけるプロジェクトだ。
「マサラ」はインドのミックススパイス。みんなの個性(スパイス)で調和するコミュニティー、楽縁(がくえん・らくえん)のような空間になればと、田んぼ1枚付きの月岡の空き家を購入。DIYでリフォームしてマサラ楽縁を開縁した。
マサラ楽縁の田んぼで昨年からコメを有機栽培しているが、コメや物価が上がっていることもあり、試しに近所の畑を借りてサツマイモを有機栽培してみた。思いがけず500kgものサツマイモを収穫できた。
近所や知り合いにも配りきれず、それならいっそ焼きいもにして販売し、収益をマサラ楽縁の環境整備に充てようと思い立ち、成り行きで焼きいもを屋を始めることに。どうせなら人気のつぼ焼きいもにチャレンジしてみようとなった。
つぼ焼きいもは、一般には特製のつぼで焼くが、小林さんは植木鉢を買って自作。オリジナルの炭火焼きつぼ焼き器を完成させた。
マサラ笑店も車庫を小林さんがDIYでリフォームして1月18日にオープンした。移動販売の営業日を除き水曜、土曜、日曜の週3回、正午から午後5時ごろまでの営業。1日で最高70本ほどのちょうどいい甘さに焼き上がった「シルクスイート」や「紅はるか」を1グラム2縁(円)で販売している。
マサラ楽縁は、おとなの無理解という観点で、全国に広がる不登校の子どもたちが安心して生き生きとして活動できる拠点「トーキョーコーヒー」の全国で239番目の拠点にもなっている。
原則として毎週水曜の午前10時半から午後3時半まで、イベントやランチ会、お話し会、映画上映会、農業体験などを行っている。誰でも500円で利用できる。
不登校の子どもはもちろん、その親にとっても居場所になると小林さんは言う。
「不登校の子どもに悩むおとなが集まってみんなでいろいろ活動していくうちに、“いいんじゃない?”、“そのうち外へ出てくるよ”、“うちも初めはそうだったよ”みたいに、親が共感して大丈夫だと思うことで、親がまず変わり、そうすると家が子どもにとって居心地のいい場所になり、子どもも自分の未来に対して一歩、前向きになれる」。
学校に行かない選択をした子どもたちに学校とは違う学ぶ場所をつくりたいと思った。「学校のカリキュラムじゃなく、食、健康、農業を子どもが生きていく術として学んでくれたら、親の心配がなくなる。すると子どもたちは勝手に自立して勝手に自分たちで学んでで育ってくれる」。小林さんが考える教育論だ。
マサラ笑店を始めたことで近所の人が立ち寄ってくれるようになった。「近所の人とのつながりがコミュニティーの再構築のようになってめちゃいい」と小林さん。「学校は行かなきゃいけないんだと思ってるお母さんお父さんが悩んでるならぜひ来てほしい。とらえ方を変えるだけで悩みが消える」と来店を待っている。
昨年はほぼ小林さんひとりでサツマイモを栽培した。ことしはマサラ楽縁の利用者と一緒に育てることにしている。つぼ焼きいもの販売は3月中旬までの予定。ほかにソイルカフェの冷凍カレーも販売している。営業日時を含め問い合わせは小林さ(090-3213-3103)へ。