新潟県三条市が17日発表した令和7年度当初予算案に、大型観光看板の撤去工事の設計費として250万円を計上した。この大型観光看板は、三条市栄地区の川通東町付近の北陸自動車と上越新幹線が最も近接したあたりに、はさまれて立つ。
幅30メートル、支柱を含めた高さは14メートル。その上から6メートルが看板部分で、田んぼにぽつんと巨大看板が立つ。両面に緑地に白抜きで「くらしの品 ハイテクのまち 三条市」とある。日光がよく当たる南向きの面は、白が退色してほとんど文字が見えなくなっている。
この看板は1989年、三条市が円高で特定不況地域に指定されたのに伴う経済活性化緊急プロジェクトの一環で設置した。それからことしで36年になる。
支柱のさびなど老朽化が進んでいるが、2年前の点検では基準以上の耐力度があることを確認したものの、そう遠くない将来、改修や撤去の必要に迫れらる状況だ。
その救世主となる可能性があったのが、一般社団法人燕三条青年会議所。新たなデザインで燕三条をPRしようとリニューアルの事業化を検討した。デジタルサイネージにするアイデアもあったが、ここで屋外広告物条例の壁にぶち当たった。
補修や塗装は、原状回復に毛が生えたていどしか認められない。デジタルサイネージはもちろん、新たなデザインも許されず、あきらめざるを得なかった。
改修には相当な費用がかかり、費用対効果が見合わないため、撤去を進める方針を決めた。来年度は撤去工事のための設計をし、再来年度以降に撤去作業を行う方針だ。
それにしても多くの人には目的がはっきりしない謎な看板として認識されている。無駄に2行で余白がやたら多い間延びしたデザインは、違和感を覚える。建設当時を考えると、「くらしの品」はさておき、筑波とかならいざ知らず「ハイテクのまち」は気恥ずかしかった。
「職人のまち」とすれば良かったのにと思っていたが、ブルーカラーが「きつい」、「汚い」、「危険」で「3K労働」という言葉が流行したような時代。地元では今と違って「職人」という言葉がネガティブにとらえられていた。
とはいえ、ある意味、悪目立ちしていたことから、注目を引くという最低限の広告物としての役割は果たしていると言える。この看板を目にしてふるさとへ帰ったと実感する人もあり、撤去されることに一抹の寂しさを感じる人もあるだろう。