新潟県加茂市の藤田明美市長は21日、令和7年度当初予算案の編成について記者会見した。当初予算は総額で前年度比+5.0%(9億1,978万円)の194億2,492万円、一般会計は同じく+7.0%(8億3,400万円)の128億2,100万円とした。本来なら毎年5,000万円を削減しなければならないところで、「やりくりは非常に厳しいものがあった」と予算編成を振り返った。
藤田市長は、令和6年度の当初予算編成で、これからも毎年5,000万円ずつ見直していかなければならないと話したことにふれた。いろいろな事業を見直して削減したが、物価高騰や人件費の高騰、国の方針にそった新規事業もあり、「その通りにならなかった」。
不足分を補うため財政調整基金を取り崩した。「これからもずっとそのようにやっていくと、ずっと財政調整基金を取り崩していくことになるので、なんらかの見直しは今後、必要だと思う」と危機感を示し、「そういった意味でも令和7年度に行う公共施設の再編アクションプランは非常に重要になってくる」と述べた。
一方で「新規事業もほとんどできないのではないかという思いがあったが、そのなかでも複合施設、教育関係、子育て支援のメンタルヘルスの相談、乳児の1カ月健診の助成などが厳しいなかでもできるようになったのかなというのが実感」と思いを話した。
複合施設は、子育て・教育分野で、子育て健康作り拠点複合施設の整備に着手する。複合施設の基本設計作成などに1,850万円を計上した。施設の設計施工を一括で発注するデザインビルド方式を採用し、民間事業者のノウハウを生かした建設コストの縮減と品質の向上、早期のサービス提供を図り、令和9年度中の供用開始を目指し、7年度には事業者の選定と基本設計を実施する。
ほかにも新規事業は、土日・祝日に西宮保育園で未就学児の一時預かり実施(171万円)、乳児1か月健診費用を助成(58万円)、妊娠や出産時の給付金支給(854万円)、専門医によるオンライン健康相談(230万円)、小中学校統合と給食センター新設を含む教育施設の全体像策定(1,540万円)。
健康・福祉分野で遠隔手話・文字通訳システム導入(101万円)、生活・環境と生活基盤分野で、加茂市産業センター裏手に2000平方メートルの災害時の避難場所となりイベントにも使える公園整備(1,050万円)と、拡充事業で橋の老朽化対策(1億0,657万円)、緊急性の高い加茂病院通線の舗装の打ち替え(8,220万円)。
芸術・文化、スポーツ、自治・人権分野では、文化会館の照明器具LED化(1,170万円)、温水プール長寿命化のためのボイラー・ろ過機の更新(7,200万円)。
都市の魅力創造、産業・雇用分野では、美人の湯の空調設備のデジタル化やLED化の設備更新(3,310万円)、災害に強いまちづくりを目指す立地適正化計画の策定(1,200万円)、民間主導による旧加茂銀行の活用可能性の調査(389万円)、地場産品の開発や磨き上げの費用を助成する制度の創設(500万円)、産業センター非常灯のLED化(350万円)、中山間地域の農業継続の支援(592万円)、遊休農地での新規作物導入に取り組む農業者支援(30万円)。
冒頭、藤田市長は予算編成の所感を話した。予算案のキャッチフレーズは「笑顔咲く未来へ続く道しるべ」。これまで令和3年度の総合計画策定をはじめ、中・長期的な視点で「あるべきまちの姿」を示して魅力あるまちづくりの実現に注力してきた。
7年度もこれまで掲げた「持続可能な行財政運営を目指す」、「基本的な生活環境を守る」、「質の高い子育て・教育環境を整備する」の3つの目標を基本方針とした。
3つの目標は今後の加茂市政の根幹をなすもの。どれも行政単独ではなく、産学金と連携し、市民と協働して前進することで大きな成果をもたらす。
7年度は、加茂市にとって大変革の年となるが、ここで確実に変革する、変革し切ったと言えなければ、加茂市が変わるチャンスは今後、訪れることはない。
加茂市には、若年女性人口が想定よりも大幅に減少。それに伴って、乳幼児の人口も想定を超えるスピードで減少している。この問題に対処するにいは、行政だけではなく、地域社会全体で雇用機会の創出や地域の活性化、子育て支援などさまざまな対策を講じる必要がある。
加茂市が直面する問題を一朝一夕に解決することができるような魔法や手品はない」。時間がかかってもひとりひとりの意識と行動を積み重ねていくことでしか解決への道筋を見い出すことはできない。
未来へのスクラップ・フォー・ビルドの理念に基づいた変革の締めくくりを迎え、加茂市の現状と現実に向き合い、持続可能な未来を実現するためには、何より市民の理解が必要。そのため7年度は、市民とさらなる対話の機会を設けて、これからの加茂市についてともに考えていく。
そうした思いの積み重ねが私たちの愛するこの町を未来につなげていくための、何よりも大きな力になり、道しるべになると信じていると述べた。