英国の伝説的ロックバンド「レッド・ツェッペリン」のギタリスト、ジミー・ペイジになりきるのがライフワークの新潟県十日町市出身のギタリスト、ジミー桜井(本名:桜井昭夫)さん(61)のドキュメンタリー映画『MR. JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男』が、22日(土)から28日(金)まで新潟・市民映画館「シネ・ウインド」(新潟市中央区)で上映されている。初日22日は桜井さんが来場してトークショーを行った。
桜井さんは14歳でギターを始め、17歳ごろからレッド・ツェッペリンの演奏に没頭した。父は着物のデザイナーで、桜井さんは1990年にバンド活動を目的に上京して着物のセールスマンとして働きながら「ジミー桜井」としてレッド・ツェッペリンのライブパフォーマンスを再現するバンド活動を続けた。
94年にリーダーバンド「MR.JIMMY」を結成。2010年に米国でレッド・ツェッペリンのトリビュートバンド「Led Zepagain」に飛び入り参加した。
2012年に東京で行ったライブにジミー・ペイジが来場したのをきっかけに、仕事を辞めてその年に渡米。14年にLed Zepagainに加入したが、メンバーとの考え方の違いで17年にバンドを脱退。自らMR.JIMMYを立ち上げたが、解散して帰国を考えているときにレッド・ツェッペリンのドラム、ジョン・ボーナムの息子、ジェイソン・ボーナムからオーディションに声をかけられ、そのバンドの一員になっている。
映画は桜井さんの故郷、十日町の雪景色に始まる。桜井さんの演奏シーンはそれほど多くない。桜井さんのギタープレーや楽器、サウンド、アクション、さらにはステージ衣装にまで徹底的にジミー・ペイジと同じであることに愚直なまでにこだわる姿を描写する。
撮影は7、8年前、Led Zepagain時代から行われた。49歳で渡米し、米国での華やかな成功が伝えられるが、映画では桜井さんのこだわりの強さがメンバーとの溝を深め、孤立していくようすなど苦しい時代も描かれ、感情移入して見入ってしまう。
毎日午後6時からの上映。初日はチケットが完売し、補助席も出して80人余りが来場し、上映後に桜井さんのトークショーを行った。
桜井さんは映画製作の始まりから話した。ピーター・マイケル・ダウド監督がレッド・ツェッペリンのトリビュートバンドを撮りたいと考えていたときに、YouTubeでMR.JIMMYの動画を見つけたて、連絡があった。ジェイソン・ボーナムからもYouTubeがきっかけでオファーがあった。
作品は2019年にテキサス州のオースチンで開かれた米国最大級の映画祭で招待作品になった。その後、パンデミックがあり、その間に監督は作品をブラッシュアップし、2年前にハリウッドでも公開された。そのバージョンが1月10日から日本でロードショー公開されている。
桜井さんは60歳を過ぎたが、まだ夢の途中で、「ジェイソンとやることが僕の最終目標ではない」。例えば72年のレッド・ツェッペリンのUS公演はこんな様子だったと、今のようにLEDではなく照明に当たったら汗をかくほど暑くなるセロハンを使った当時と同じライティングシステムを使い、昔のアナログのPA卓をそろえる。
「楽器はもちろん、バンドのメンバーは本当にあの当時のディテールをそのままに追求した、皆さんからすると昔からの演目の変わらない演劇を違う俳優で見てるような感じ」。それが夢だ。
ミュージシャンを固定せず、「そのとき、そのときに同じシンパシーでぼくと一緒に演奏してくれる、MR.JIMMYとバンドをやることが夢だったんだよって言ってくれる人とやりたい」、「日本でそれをスタートしたらどんな素晴らしいかと思う」と熱い思いを語った。
ロードショー開始以来、上映期間を延長した劇場もあり、評判を呼んでいる。今回は故郷での上映とあって、来場者はレッド・ツェッペリンのファンの世代のほか、十日町から訪れた古くからの桜井さんの知り合いも多かった。「想像した以上に山あり谷ありで苦労していると思った」、「神がかり的なこだわりがすごかった」と桜井さんの誠実な生き様に共感していた。
シネ・ウインドでの上映は、経営コンサルタント鈴木秀一郎さん(63)=新潟市中央区=が持ち込んだ。鈴木さんは山下達郎のフォロワーでボーカルとギターをたしなむ。近年、音楽観光をコンセプトに音楽で新潟に交流を生み出そうとプロモーターとして活動を行っている。
桜井さんが新潟出身として知って驚き、3年前に南魚沼市のライブハウス「カフェレオン」で行われた桜井さんのライブを見に行き、桜井さんに魅せられて新潟でのライブをオファーした。
しかし会場や日程の都合でなかなかライブが実現できなかったところで、映画公開を知った。昨年末にシネ・ウインドのボランティアスタッフと知り合い、ぜひ上映してほしいとお願いして実現した。
「映画のプロモーションを頑張って次はライブにつなげたい」と鈴木さん。「ジミーさんは49歳で初めて米国に行かれて、われわれ中高年の星のような存在。50代からでも夢をあきらめずに行動することに価値がある。新潟からこんなにすごい人が出ていることを知ってほしい」と桜井さんへの理解、評価が高まることを願っている。上映の問い合わせはシネ・ウインド(025-243-5530・〒950-0909 新潟県新潟市中央区八千代2丁目1-1 万代シテイ第二駐車場ビル)。