三条市立大学(アハメド・シャハリアル学長、新潟県三条市)は4日、令和7年度入学式を行い、5期生となる94人の新入生を迎えた。2021年の開学から今春、初めての卒業生を送り出して4年間のサイクルをすべて経験し、新たなスタートを切った。
三条市立大学はイノベーティブテクノロジストを育成し、ものづくりのまち燕三条地域で活躍する人材の輩出を目指す工学部技術・経営工学科(定員80人)の単科大学。新入生は昨年度より1人多い。県内出身者は昨年度より7人多い50人、県外出身者は6人少ない44人だった。
式辞でシャハリアル学長は、三条市立大学の特長と期待を述べ、全国から集まった新入生が、伝統あるものづくりの地の三条市で学び、イノベーティブ テクノロジストとして未来を切り開く力を養うことが求められていると話した。
社会はテクノロジーの進化や環境問題など多くの課題に直面しており、過去の知恵を生かし新たな価値を創造する姿勢が重要。大学では理論と実践を融合した学びを提供し、地域の職人や企業とも連携しながら、実践的な力を身につける機会が豊富にある。
挑戦や失敗を恐れず、4年間を通じて成長し続けることが期待し「これからの4年間、思いきり学び、挑戦し、仲間とともに成長してほしい。皆さんの未来は、皆さん自身の手でつくるもの。私たち教職員はその挑戦を全力で支える。さあ、新しい旅の始まりです。
皆さんの入学を心から歓迎する」と述べた。
新入生代表で東京学館新潟高校出身の原いづみさん(三条市)が宣誓。原さんは伝統産業が人手不足や後継者難に直面し、最先端技術の飛躍的な進歩に適応していかなければならない時代に直接、企業とかかわって産学連携実習やマネジメントも学べ、幅広い知識と経験が得られる三条市立大学に入学できたことに大きな意義を感じていると述べた。
さらに「産学連携実習を通じて、その素晴らしい製品がどのように企画され、開発され、生産されているかを直接、学び、将来の糧にしたい」、「さらなる発展の道標となる知識や技能を身に付けるために、日々努力をしていく」とし、「先輩を手本に新たな節目の新入生としての誇りと期待をもち、自らをさらなる高みへ成長していけるよう精進していくことを誓う」と述べた。
来賓祝辞で滝沢亮市長は「ぜひとも皆さんの若い風、若い感性をこの地域に吹き込んでほしい。このキャンパスでの学び、産学連携実習などの大学での学びのみならず、サークル活動や学園祭、アルバイトとさまざまな形でまちとも交流し、いろんなところに足を運び、飛び出して、人間的にも一歩でも二歩でもさらに大きくなってほしい」と学業だけではない人としての成長を願った。
入学式のあとシャハリアル学長は「4年間が終わって5期生が入学し、新しいスタートだと認識している。この4間でいいことも、直さなければいけないこともあるが、それらを点検をしながら、直しながらまた次のスタートを切りたい」、「来年はもっとたくさんの子どもたちが、この地域の企業を就職先として選んでほしい。地元の魅力を最大限にアピールするような場を設けて活動していきたい」と思いを新たにしていた。シャハリアル学長の式辞全文は次の通り。
令和7年度 三条市立大学入学式
学長式辞
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、これまで皆さんを支えてこられたご家族の皆さま、関係者の皆さまにも心よりお祝いを申し上げます。
本日、全国20の都道府県から集まった94名の皆さんが、ここ三条の地に新たな一歩を踏み出しました。皆さんが今日、この場に立っているのは決して偶然ではありません。一人ひとりが持つ可能性が、この大学の門を叩かせたのです。
三条市は、人口9万2千人の小さな町ではありますが、ここには日本屈指のものづくりの伝統と革新が息づき、世界に誇る技術が磨かれ続けています。そして、これから皆さんは、その伝統と革新の交差点の中心に立ち、学び、成長し、「イノベーティブ テクノロジスト」として未来を創造していくことを心から期待しています。
今、私たちは歴史的な転換期を生きています。
世界ではテクノロジーの進化が加速し、AIやロボットが社会を大きく変えようとしています。同時に、気候変動、エネルギー問題、地政学的な不安定さ、解決すべき課題も山積しています。日本は人口減少や労働力不足といった社会課題に直面し、これまでのやり方が通用しない時代に突入しています。求められるのは、過去の知恵から学び、新たな価値を生み出す力です。本学の理念である 「新たな発想を生み出す鍵は、蓄積された経験の中にある」 という考え方が、その指針となるでしょう。
三条のものづくりには、400年以上の歴史があります。歴史を振り返れば、時代の変化は常に新たなチャンスを生み出してきました。この町の職人たちは、伝統を守りながらも、時代の変化に合わせて新しい技術を取り入れてきました。それは、過去を学び、新たな価値を生み出してきた挑戦の歴史でもあります。変化を恐れるのではなく、それを活かし、新たなイノベーションを生み出すことこそが、これからの時代に求められる姿勢です。まさに、三条市立大学の人材育成の理念である「イノベーティブ テクノロジスト」として、皆さん一人ひとりが未来を切り拓く力を身につけることが、これからの4年間での大きな使命となります。
本学は、工学技術やマネジメントを横断的に学べる、日本でもユニークな大学です。ものづくりの最前線に立つ企業と連携し、理論と実践を結びつける学びを提供しています。教室で得た知識を実際のプロジェクトに応用することで、実社会で求められる力を身につけることができるでしょう。
また、この町には、ものづくりを支える職人や技術者、企業のリーダーがいます。その知恵や情熱に触れながら、自らの可能性を広げてください。大学は、知識を得る場所であると同時に、自分自身を深く知り、新たな挑戦を生み出す場でもあります。
皆さんの前には、多くの学びの機会が広がっています。本学では、産学連携の実践的な学びを大切にし、 「手を動かしながら学ぶ」 ことを重視しています。教科書の中だけでは得られない、生きた知識や技術を体得し、自らの手で未来を創り上げてください。
もちろん、その道のりは決して平坦ではないでしょう。時には壁にぶつかることもあるかもしれません。しかし、挑戦を恐れず、失敗を成長の糧としてください。失敗は、次の成功への大切なステップです。
これからの4年間、思いきり学び、挑戦し、仲間とともに成長してください。皆さんの未来は、皆さん自身の手で創るものです。私たち教職員は、その挑戦を全力で支えます。
「さあ、新しい旅の始まりです。」
皆さんの入学を心から歓迎します。
令和7年4月4日
三条市立大学 学長
アハメド シャハリアル