国定勇人国交政務官(衆院比例北信越選出)は、11日に石破茂首相から米国・トランプ政権の関税措置に対応する内閣府政務官に指名されてから3日後の14日、さっそくものづくりのまちで知られる地元燕三条地域の三条、燕両商工会議所を訪問し、関税措置による影響の現状や見通しについてヒアリングした。
自動車と自動車部品には25%の追加関税が課せられた。国交省の内部部局には自動車局があり、その役割のひとつとして自動車関連産業の支援なども担っている。
今回、訪問した燕三条地域は国定氏の地元で、三条市長も務めていただけに地元業界に詳しい。金属加工や金型製造で自動車関連の企業もある。国定氏にとってはトランプ関税の影響を把握する必要のある地域のひとつだ。
三条商工会議所では、兼古耕一会頭と副会頭3人、長谷川正実専務理事と懇談。兼古会頭は「来て、話を聞いていただいたという安心感がある」と国定氏の迅速な対応に感謝した。国定氏は「随時、時々刻々と変化していくと思うので」と情報交換の継続を約束した。
国定氏は冒頭、関税措置の分析、対米姿勢の組み立て、国内対策の3つに取り組むよう指示されたことを話した。対策を講じる前に具体的な影響の把握から始める必要がある。
「そういう意味では三条はものづくりまちで自動車関連部品の製造も多い。追加関税は、その他商品は10%にとどまっているが、自動車と自動車関連は25%でスタックしている状態で発動中なので影響がある。鉄とアルミニウムも関税が講じられている状態で、それがどんな影響を与えるのかというところ含めて、きょうは聞かせてほしい」と率直な声を聞いた。
兼古会頭は輸出に力を入れている市内企業1社に話を聞いたことにふれ、「今の状況では関税の影響はほとんど出ていないが、疑心暗鬼になって不安だけがマスコミを通じてあおられている」と見ている。
「この地域は米国向けの輸出、自動車向けは少ない。今は円高を乗り越えてきたときと同じで、その時も値引き交渉はしてこなかった。だから(値引きを)言ってきたらもう突っぱねるしかない」、「生き残った産地は米国に首根っこを押さえられてるような産地は少ない。だから頑張って交渉に当たってほしい」と地元企業と政府の踏ん張りに期待した。
野崎正明副会頭は、自社は鉄鋼、自動車の両方の関税措置が影響し、自動車メーカーがコストダウンで対応するなら自動車関連の外注先に価格交渉でしわ寄せがくる可能性を指摘した。
最悪のシナリオと前置きして「雇用を確保できるかという問題もあるし、設備投資はできなくなる」。減産もせず雇用も確保すると宣言している自動車メーカーもあるが、「その礎となっているのが、われわれ中小企業。われわれにしっぺ返しが来ては」と不安を示した。また、この5年間で材料価格が150%上がっている現状も訴えた。
齋藤一成副会頭は「建設関係でもいろんな資材が高騰しているが、米国の関税措置でサプライチェーンの混乱が起きたときに、資材の高騰があるのでは。どこから仕入れるか。売る方じゃなくても、仕入れる方の混乱があると思う」。
中国との貿易では日本も米国と同じような状況にあり、「今回、米国が自国で生産するので来てください、日本の中小企業がついていかなければならなくなったときに、日本の国内では製造業が空洞化する」と懸念した。
金子太一郎副会頭は、事前に金物卸業界の幹部にアンケートをとって状況を話した。影響は限定的で、包丁を米国に輸出している企業や中国を経由して米国へ輸出している企業が今後、影響を受けることが考えられる。
まだ実際に影響についての声は聞かれなかったが、「中国製品が日本にどんどん入ってくるといった間接的な影響は今後、心配される原因になる」。
長谷川専務理事は、市内企業にヒアリングしてわかった状況を話した。中国で製造している企業は米国向けの輸出は日本で製造する検討を始めていた。ほかにも、関税措置を円高になったとくらいに思って割り切るしかないが、これにプラスして為替が動くとさらに影響が大きくなると困る。今の仕事は継続しているが、これからの仕事はどうなるかわからない。今後のことは様子を見させてほしいといった声があった。
一方で長谷川専務理事は、中国のメーカーが日本の市場への参入を警戒しているが、「関税措置が確定していないと手の打ちようがないので、おしなべて皆さんが言っていたのは、ディールをうまくまとめてくれとういうこと」と政府の米国との交渉の成果に期待した。
国定氏は「サプライチェーンの話で言うと、中国で生産したものがだぶつく。それが日本に回ってきて、ダンピングが起きないかと少し心配している。部品を含めて日本製品が負けてしまう。そこはちょっと意識しないといけない」述べた。