新潟県三条市の合併20周年記念を冠した「森山良子×エラールピアノコンサート」19日、三条市体育文化センターで開かれた。数々のヒット曲で知られるシンガー森山良子さんが県立三条東高校に眠っていた幻の名器、フランス・エラール社製ピアノで圧倒的なパフォーマンスを披露した。
エラール社のピアノは現代のピアノの機構を開発し、礎を築いた。そのグランドピアノは国内にはわずか4台しか残っていない。そのうちの1台が三条東高に眠っていた1930年製造のフルコンサート用グランドピアノ。鍵盤さえ動かなかったが、有志の運動で修復され、2023年に息を吹き替えした。
特定非営利活動法人燕三条エラール推進委員会でエラールピアノを使ったコンサートを開くなどの活動を行っており、今回のコンサートも企画、主催した。森山良子さんが500席の小規模なホールでコンサートを開くことは珍しく、チケットはすぐに完売した。
ひとりでステージに現れた森山良子さんは、マイクを使わずに自分でオルゴールを回しながらアカペラを披露して「わたしのコンサート、そしてエラールピアノさんが主役でございますが、ぜひお楽しみいただきたい」とあいさつして始めた。
ポップスのメドレーや「この広い野いっぱい」、「涙そうそう」、「さとうきび畑」など代表曲をはじめ、誰もが一度は耳にしたことのある曲をエラールピアノとギターの伴奏で次々と披露した。
森山良子さんの歌唱力を圧倒的で、会場の隅々まで響き渡る歌声の声量とロングトーンに思わず拍手がわくひとこまもあった。
さらにこの日のために結成した特別編成合唱団は、森山良子さんと「この広い野原いっぱい」で共演したあと、「この街で」を三小相承会の金床を金づちでたたく音、三条祭りの木場小路神楽と大名魚列のやっこと共演し、おまけに三条市出身プロレスラーのジャイアント馬場のコスプレも登場して盛り上げた。
三小相承会が出番を間違えて1曲早く「この広い野原いっぱい」で舞台に上がった。いったんはステージの袖に引っ込んだが、森山良子さんがステージに呼び戻し、一緒に演奏をうながした。森山良子さんのリードでアドリブで共演して会場をわかせた。
中島剛さんが1曲だけのピアノソロで選曲したのは、フランツ・リストのピアノ曲「ラ・カンパネラ」。「高速連打が可能になってたのを世に広めるのに白羽の矢が立ったのが当時、13歳くらいだったリストだった」。
そこで「エラールのピアノでコンサートできるということで思い浮かんだのは、リストの『ラ・カンパネラ』がいちばん合うと思った」。
エラールピアノがなければ生まれなかった、その革新性を象徴する曲をそのやわらかで温かい音色で披露。約200年前に誕生したエラールピアノと曲に思いをはせて聴き入った。