新潟県立三条商業高校商業クラブは、三条市下田地区に伝わる「ごんぼっ葉」を使った笹(ささ)団子にちなんだ世界初の「ごんぼっ葉アイスクリーム」を開発、販売し、さらには三条市のふるさと納税の返礼品に選定をと取り組んでいる。
笹団子は昔ながらの越後名物。よもぎ団子をササの葉でくるみ、スゲやイグサのひもで結んで蒸したりゆでたりして作る。しかし県内でもほぼ下田地区だけが、ごんぼっ葉を使うのが大きな特徴だ。
ごんぼっ葉は、多年草のオヤマボクチの葉の地元での呼び名。うちわほどもある大きな緑の葉だ。これをヨモギの代わりにつなぎとして練り込むことで、一般の笹団子よりもちもちと歯ごたえのある食感が楽しめる。
今年度の商業クラブは、ごんぼっ葉とフェアトレードのインド産砂糖を原料にしたアイスクリームを開発した。製造は「ジェラテリア ココ」(三条市)に委託。18日午前10時から午後1時まで「道の駅 漢学の里 しただ」で生徒も出向いて対面販売する。販売価格はまだ決まっていない。その後、JAにいがた南蒲農産物直売所「ただいまーと」でも対面販売を行う。
あわせて地場産業であるスプーンなどのカトラリーも一緒に開発し、ごんぼっ葉アイスクリームとセットにすることで、ふるさと納税の返礼品にしてもらえるのではと考え、滝沢亮三条市長にも商業クラブのプレゼンテーションを行って提案している。
カトラリーの開発にあたり、三条の金属加工技術がどういう工程で作られているのか、三条のものづくりの歴史を感じ、前提となる知識を学ぼうと、このほど三条鍛冶道場で五寸釘で作るペーパーナイフの体験を行った。
1年生3人と3年生7人の部員10人のうち5人が参加し、滝沢市長も参加。五寸釘を熱してたたいてペーパーナイフの形に作り、研磨して刃をつけるといった作業を体験した。
商業クラブの代表、3年生佐藤楓花(ふうか)さん(17)=燕市=は「フェアトレードの砂糖を使ったアイスクリームと三条の特産品でコラボできたらなみたいな感じで作った。それに金物とかをコラボさせたものをふるさと納税の返礼品にしたいっていう意見があって、それで体験に来ました」。
当初は笹団子アイスクリームの開発を計画した。しかし、ごんぼっ葉だけを使ったアイスクリームを試食してみると「ちょっと抹茶に近い感じのミルクみたいな感じで、あんこを入れなくてもおいしいくて。あんこ入りも食べてみたけど、なくてもおいしいなって」。
笹団子でごんぼっ葉を食べていても、ごんぼっ葉だけの味は知らない人がほとんど。どんな味に仕上がったのか興味深いが、「めっちゃ楽しみです。さらっとした感じのアイスになった」と自信満々だ。
滝沢市長は「地元の高校生が、まずは自分たちで体験してから、それを商品化も目指して頑張っていくチャレンジ精神と行動力に、本当に感銘を受けた。しかもそれを商品化してふるさと納税の返礼品という取り組みは、なかなかない」と成果に期待した。
商業クラブは、地元の伝統や文化を学習して地元の良さの再発見を目指す生徒有志のクラブ。かつては三条市の名物行事、三条凧(いか)合戦をヒントに、「タコじゃないよ。イカだよ」をテーマにしたオリジナル菓子パン「いかパン」を開発、販売。2007年度の全国高等学校生徒商業研究発表大会でトップの成績で県勢初の優秀賞や文部科学大臣賞を受賞した輝かしい実績がある。
ペーパーナイフ作り体験にも参加した吉田桃子教頭は、そのいわば商業クラブの黄金期の再来にも期待する。商品開発は毎年行っているが例年、文化祭での販売ていどにとどまっており、外部へ向けて販売するのは久しぶりと言う。
しかも、ふるさと納税の返礼品になれば「三条商業高校の卒業生だけじゃなくて、この地域に生まれた人や新潟県を懐かしく思う人が興味をもってくれれば、三条の地場産業の盛り上げにも一役買えるという思いもある」と地域貢献への期待も膨らむ。
「せっかく商業高校なので、生徒にはほかの学校ではできないことに頑張ってほしい」とも。商業クラブの担当教諭も「世界初のごぼっ葉アイスクリームを売りにして、皆さんが知らないごんぼっ葉の味をアイスクリームを買って確認してほしい」と願っている。