新潟県で活躍する同世代の書家、三条市の木原光威(きはらこうい)さん(63)と見附市の若林溪竹(わかばやし けいちく)さん(63)。出会いから30年にわたり筆を交えてきた2人のコラボレーション展「木原光威×若林溪竹展 余白と充満」が31日(土)から6月29日(日)まで、みつけ市民ギャラリー「ギャラリーみつけ」(見附市)で開かれており、初日31日は2人よるフリートークが行われ、2人に師事する書道愛好者など約80人が参加した。
木原さんは現日会副理事長、太空会副会長、新潟県書道協会副理事長、新潟県美術家連盟理事、書道研究洗心書院主宰、書道雜誌「太空」編集人に就く。
若林さんは、新潟県書道協会理事、新潟県美術家連盟常務理事、日本書法教育会常任理事、新潟県展無鑑査、文字のあとりえ心齋主宰。
今回は初めての2人のコラボ展。それぞれの作品15点ほどと若林さんの刻書、2人の共同作品、展示販売する小品もある。
抽象性の高い作品が多く、インスタレーションと呼ぶにふさわしい作品もあり、多様な書道表現を披露する。
木原さんは、赤の顔料が入ったボンド墨を使って萩原朔太郎の詩をモチーフにした作品が印象的。フェラリーと同じという鮮烈な赤が目を引く。若林さんは篆刻(てんこく)や細長い紙に書いて天井からつり下げたインスタレーションのような作品もある。
このあとも6月7日(土)に木原さん、22日(日)に若林さんによるギャラリートークをいずれも午後2時から3時まで行う。31日のフリートークの概要は次の通り。
■フリートークの概要
若林さんは自己紹介で、展覧会の話が昨年10月にギャラリーから来て、木原さんと一緒に展示することになったことを喜んでいると述べた。木原さんの作品が好きで展覧会にも足を運んでいたと語った。
木原さんは自己紹介で、本名で活動していること、小学校2年生から書道を始めたこと、高校では中村城翠先生に師事し、その後、大学で書道を学び、教員になったが10年前に退職したことを語った。
2人の出会いは「鉄」というグループでの活動だった。約30年前、20代後半から30代前半の仲間が集まって書道の勉強会をしていたグループで、そこで「若林さんの何でもできる多才さに感銘を受けた」(木原さん)。
若林さんは最初から「鉄」のメンバーではなく、後から参加した。ギャラリーみつけから今回の展覧会の話が来た時、「木原さんの名前があったので喜んだ」(若林さん)。
作品制作について、若林さんは小学校のころから書道をやっていて、高校生のころに村上の須貝竹山先生に師事してから何人かの先生についたが、現在の作風は最後の奈良の今井凌雪先生の影響が強いと述べた。
木原さんは若林さんに得意なジャンルを尋ね、若林さんは金文、古代文がいちばん好きで、次に篆刻(てんこく)が好きだと答えた。一方で、木原さんは金文、篆書、甲骨などはやらなかった。なぜならそのままでおもしろいので、それを素材として使うのは「ある意味、ひきょうだと思ったことがある」。ところが最近、素材にすることが多くなってやりだしたら「すごくおもしろくて魅力的で奥が深くて今からじゃ追いつけない部分がある」(木原さん)。
共同作品について、若林さんの提案で2枚の作品を制作したことが説明されました。1枚は木原さんが先に書き、若林さんが後から書き加え、もう1枚は若林さんが先に書き、木原さんが書き加えるという形式で制作した。
用具溶剤について、若林さんは中国の筆を好んで使っていること、墨は手ですっていることを語った。木原さんは「ボンド墨」という接着剤のボンドを使った墨を使用していることを説明し、赤い作品はボンド墨に赤い顔料を入れたものだと述べた。
展覧会のテーマ「余白と充実」について。これについて相澤五峰先生から質問があり、木原さんは相反するものをひとつの紙面で表現することで趣が生まれるという考えを説明した。