新潟県燕市で鈴木市長の辞職に伴って行われる燕市長選(10月12日告示・19日投開票)に立候補する元市議の佐野大輔さん(41)の後援会(大倉龍司会長)は20日、選挙事務所で総決起大会を開いた。支持者ら約250人が参集。佐野氏は自身の半生を振り返りながら「人生最大の挑戦に臨む」とかたい決意を表明。「みんなでつくる燕市」を旗印に、教育や産業の振興、地域の一体化を柱とする政策を掲げ、「市民一人ひとりの声を形にし、誰もが挑戦できるまちを実現したい」と訴えた。
佐野氏はまず、これまでを支えてきた家族や後援者に謝意を表した。とくに昨年12月に亡くなった父のことを「きっと今も見てくれてる」と話すと目を潤ませた。
選挙戦に向けてダイエットに励み、137kgあった体重が目標の100kgを切ったことを報告してから立候補した経緯から話した。
幼少期を緑町の市営住宅で過ごした。「決して恵まれた環境ではなかったが、そこで得たものが自分の原点」。大学卒業後は市内中学校で臨時職員として勤務し、剣道部の指導にあたり、全国大会優勝を果たした。「教育の現場に立ち、子どもたちと向き合う中で、地域を支える喜びを知った」。
その後、燕市役所に入り10年間勤務。教育委員会や地域振興課、観光協会などを担当し、文部科学省への出向も経験。「朝から深夜まで働いたが、国の教育を変えようとする熱意を間近で学んだ。燕市のために何ができるかを考える礎になった」と振り返った。
市職員を辞し、より直接的に市政を動かしたいとの思いから市議に転身した。「市職員ではできない視点で燕市を支えたい」と挑戦を選んだ。議会活動では教育や地域課題に積極的に提言を行い、「市民の声を聞き、政策につなげるやりがいを実感した」。
しかし、現職鈴木市長の引退が迫るなか、「このまちの未来を人任せにはできない」と決意を固めた。「誰もが挑戦できる環境をつくり、子どもたちが誇りをもって暮らせる燕を実現したい」と出馬理由を明らかにした。
政策の柱に「育てる燕市」、「稼ぐ燕市」、「燕はひとつ」を掲げる。
「育てる燕市」では、教育現場や文科省での経験を生かし、個別最適な学びの環境づくりを重視。「すべての子どもがやりたいことを実現できる環境を整える。燕で育った子どもが再びこのまちに戻り、担い手となれるようにしたい」。
「稼ぐ燕市」では、ものづくりや農業の現状に危機感を表明した。調査では、45%の企業が自分の代で廃業を考え、25%が後継者未定と回答した。「70%の事業者が将来に不安を抱えている。燕のものづくりがこのまま途絶えるわけにはいかない」。そのうえで「子どもたちが農業やものづくりに挑戦し、誇りをもって働けるまちにする」と強調した。
「燕はひとつ」では、旧町村の枠組みや行政・民間の垣根を越えた連携を訴えた。「自治会や地域組織は高齢世代が支えている。そこに若い世代が加わり、先輩の思いを受け継いで次世代へつなぐのが自分の役目だ」。
「燕市は人口減少や産業構造の変化に直面し、大きな岐路にある」と指摘。「行政やひとりの市長だけでは限界がある。だからこそ市民一人ひとりの力を結集する必要がある」と繰り返した。
最後に「この戦いは厳しい壁に挑むことになる。しかし、市民の力を合わせれば必ず乗り越えられる」と決意を表明。「10月19日、皆さんと笑顔で泣きながら喜びを分かち合いたい。そのために最後まで全力を尽くす」と呼びかけた。
燕市の政治団体「みんなでつくる燕市の会」の熊倉正人代表は、「燕は世界に誇るものづくりのまちだが、人口減少や地域経済の停滞という大きな壁に直面している」と現状を指摘した。
「市役所や政治家だけで未来は築けない。若者や市民一人ひとりが世代を超えて力を合わせなければならない」と強調。そのうえで「現場を知り、市民の声を聞いてきた佐野氏こそ先頭に立つべき人物。ともに未来を築こう」と呼びかけた。
大倉隆二後援会長は「市長はいちばん偉い人ではなく、市民の代弁者にすぎない。主役は市民一人ひとりだ」と訴えた。
今回の市長選は一騎打ちが予想されるが、「勝ち負けにこだわるのではなく、燕の未来をどう描くかが大切」で、「楽しい選挙にしたい。ぜひ一緒に参加し、未来をともにつくってほしい」と求めた。
柴山唯県議は「佐野さんは熱い議論を交わした仲間。責任の重さに押しつぶされそうになりながらも、市民の未来を背負う覚悟を感じる」と述べ、「仲間と市民が後ろ盾となり、新しい燕市を切り開いてほしい」と激励した。
中山眞二市議は「市議会でともに活動し、デジタルに強く俊敏な行動力に助けられた。若さが武器であり、挑戦する勇気に敬意を表したい」とエールを送った。
田澤信行市議は「変化の時代に必要なのは気づく力と行動力。剣道で培った精神を生かし、即断即決できる佐野氏に期待する」と支持を訴えた。