燕市展は隣の三条市に住む私にとりましては何となく親しみを感じ、興味深く審査させていただきました。出品された五十八点は期待に違わず多種多様の書体書風に及び、しかも力作揃いで授賞候補から入賞作品を決定するのに大変苦労をしました。
市展賞『薩都剌詩』武田珠市
修練の跡が窺われるような習作で墨量をひかえめにした作品構成は明るさを感じさせ、清々しい線と相俟って瀟洒(しょうしゃ)で品位が漂っている。
新潟日報美術振興賞『王維詩』坂井天聲
細部にこだわらず気分の赴くままに書かれていて楽しめる。ねばっこく紙に喰い込んだ線が魅力的である。
奨励賞『おもひやる』坂井由美子
美しい画箋紙に切れ味のよい線が素晴らしい。惜しむらくは最終行が締まりに欠ける。
奨励賞『長安晩秋』飯塚裕子
濃いめの墨で気力が充実し、力強さの中に品格も感じられる。余白が実にきれいである。
奨励賞『幽限』五十嵐太山
線が強く動きもよいが余白に変化があればなお素晴らしい。
奨励賞『杜甫詩』石井渓月
肩の力を抜いて筆を運んだ作品は潤渇の変化にも富み一種独特のリズムを感じさせる魅力的な作品となった。
奨励賞『袁宏道詩』鴨井美代
金冬心の臨書かと見紛うほどに習いきった上での創作は、特に細線の冴えが見事である。
奨励賞『白雲の』渡辺文子
三行を一気呵成に書き上げており力を感じるが鋒先を閉じる線が不足しているのが惜しまれる |