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燕市の「大白藤」は有名だが、三条市にも有名なフジがある。井栗の「万葉の藤」がそれで、ことしは例年になく見事な花房を下げている。 井栗の集落を小川に沿って北野新田に向かって抜けると右手の田中に見える。エノキの古木にからみついてつるを伸ばし、高さ約5m、直径10数mも枝を広げてうっそうと葉を茂らせる。 初夏の陽気に恵まれた12日は、その向こうに県境の残雪の粟ケ岳がくっきり。田植えの終わったばかりの水田では、苗が根付き始め、用水路を透き通った水が流れ、花房を風になびかせていた。 大白藤のように棚があるわけでなく、自然のままに成長しており、遠目には大きな家のように見える。並んで梵字の刻まれた石碑を納めた小さな堂と鳥居もあり、それを守るかのようにどっかりと根を張る万葉の藤は“ご神木”と手を合わせたくなるような偉容だ。 反面、棚がないので、大白藤と比べて花は圧倒的に少ない。それでもことしは多い方で、花は一般的な紫色。開花も早く、例年だと三条祭りの5月15日を過ぎて満開になるが、ことしはすでに散り始めた。 三条市教育委員会は昭和39年にこれを市の文化財に指定した。安永五年の記録にも当時からここにフジの木があったことが記されている。今の木はその何代目かになる。 万葉集十七の大原高安真人(おおはらのたかやすまひと)が詠んだ“伊久理乃母乃藤花(いくりのもりのふじのはな)”の一節は、富山県高岡市の“万葉の藤”を詠んだものというのが定説だが、井栗の万葉の藤がそれだとする説もある。 万葉の藤にとってはかなり“分”が悪いが、想像をたくましくして見物するのも一興だ。 ■Copyright (C) kenoh.com Allrights Reserved. |
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