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三条のはさみメーカーが“刃物研ぎ処”開業(2001.8.28)

小鋏や握り鋏を製造する三条市元町、みやぐち工房(宮口猛代表)。「職人だからできるようなサービスを提供していきたい」と、自宅工場内で“刃物研ぎ処”を店開きした。

包丁を研ぐ宮口さん

古くなった包丁などを研いで新品に迫る切れ味を蘇らせる。料金は菜切り包丁、洋包丁、裁鋏が600円、出刃包丁、刺身包丁、刈り込み鋏が800円で、木鋏500円、小鋏150円。ちょっとした刃欠けは料金内で直してくれるが、極端な刃欠けやヒビは100円から200円増しになる。ほかに和包丁の柄の取り替えも500円で受ける。

包丁や鋏は鋼が入っているため、研いで半分になっても使うことができる。ただし、包丁の研ぎは素人でも研げるが、鋏は刃の裏側が少しえぐってあるので、素人が研ぐと逆に切れなくなってしまうこともある。

8月12日のスタートから毎週日曜日と二・七の市が開かれる日に営業しているが、平日でも宮口さんが出張中でなければ研いでくれるし、留守でも預かってくれる。

研ぎの作業の間は、自宅庭に設置したパラソルの下で奥さんが茶をふるまい、世間話に花が咲く。そこには職人と客、言い換えればメーカーとエンドユーザーの直接的なコミュニケーションが昔のままある。

工房の主人、宮口猛さんは鍛冶職人の3代目。繊維産業が盛んな見附や栃尾、村松、県外では群馬などに出張し、自分で製造した鋏を販売。同時に鋏や包丁を研ぐ機械を持参し、その場で研ぐこともある。

奥さんと二人三脚で

“金物のまち”といわれる三条市の地場産業の隆盛を支えた鍛冶屋は、機械化の進展とともに安く広い土地を求めて次々と郊外に移転する一方で、昔ながらの鍛冶屋の廃業も進んだ。昔なら、さびた包丁や鋏は近所の鍛冶屋に頼めば研いでくれたが、今はどこに頼んだらいいかわからない。

宮口さんの家も文字通り鍛冶屋が軒を連ねる“鍛治町”のかいわいにあったが、道路建設に伴う立ち退きで二・七の市に隣接した今の場所に移転したことも“刃物研ぎ処”の発想のきっかけになった。

「お客さんから刃物を研いでくれるかと聞かれることがあります。せっかく研ぐ道具と腕があって、お客さんが喜んでくれるならと、研ぎのサービスも始めようと思いました。二・七の市に来るお客さんにPRできたらいいんじゃないかと、引越しもきっかけになりました」と説明する。

数がまとまれば出張研ぎもする。出張研ぎ歴は20年。「私たちのような職人は大手と競争することなんかできませんが、職人だからできるようなサービスを提供していきたいと思っています。さびで切れなくなった刃物を捨ててしまえば、ただのゴミ。研いで切れ味が戻ることでゴミの軽減にも役立ちます。お客さんから“きれいになった”“よく切れるようになった”と言われると一番うれしいですね」と目を細める。

こんなにさびついた包丁もピカピカに

続けて「昔は使えなくなった包丁や鋏はクズ鋼として出せば少しでもお金になりましたが、今は燃えないゴミとして出されてしまいます。研ぐことで刃物にもう一度、命を与えることが出来ます。古くなっても手になじんだものを使うのが一番ですから」。

古いものを手入れして長く使い続ける“刃物研ぎ処”の精神は先祖返りとも言える。資源の有効活用や環境保護の立場からそれが逆に新鮮に映る。

開業を記念して、9月末まで来店して「ケンオー・ドットコムの情報を見た」と言うと、2丁以上持参した人は研ぎ1丁分をサービスする。問い合わせは同工房(電話0256-34-2876、mailto: miyatake@ginzado.ne.jp)へ。

【関連リンク】

MapFan Webで地図表示(三条市元町18-11)



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