国定勇人三条市長 所信表明全文

※文中のリンクはケンオー・ドットコムで設置しました

はじめに

平成18年三条市議会第5回定例会に臨み、所信表明の機会をいただきましてありがとうございます。ただ今から、今後の市政運営に際しまして、私の基本的な考え方を述べさせていただきます。

私は、先般の三条市長選挙におきまして、市民の皆様から温かいご支援をいただき、今後4年間、市政を担当させていただくことになりました。

これからの市政運営に当たりましては、市長職務の重責を十分認識しつつ、今回の選挙期間中、市民の皆様からいただきました市政に対する期待や要望、苦言に対して謙虚に耳を傾けながら、市政発展のために、全身全霊を傾けて努力いたしますことを10万7千余人の市民の皆様にお約束いたします。

さて、地方自治体を取り巻く社会経済情勢は、加速する少子高齢化や産業・経済活動のグローバル化高度情報化、本格的な地方分権への対応など、かつて経験したことのない大きな転換期を迎えています。「今日の常識は、明日の非常識」と言っても過言でないほどのスピードで、まさに激変の時代の真っただ中にあります。少子高齢化問題一つを見ても、人口構造の変化により、これまでの右肩上がりの経済を前提に機能してきた社会保障制度などの社会システムや地域社会の在り方などが抜本的な見直しを余儀なくされています。

このような時代背景の中、行政の在り方や役割もまた従前と同じで良いということは決してなく、これからも地方自治体が必要とされる公共サービス機関として生き残っていくためには自ら変革していかなければならないと強く認識しております。

他方、「平成の大合併」を経て、三条市も10万都市に生まれ変わりましたが、近隣自治体でも大規模な合併が行われた結果、政令指定都市となる80万都市新潟市と中核市を目指す28万都市長岡市に南北に挟まれる格好となりました。

大新潟市、大長岡市の間に埋没する三条市となるのか、逆にその間にあるという地の利をいかし、自立的に発展しながら人々からそこで暮らしたいと選ばれる県央の三条市を形づくっていけるのかは、これからの私たちの取組次第です。

私たちが目指さなければならないのは、もちろん、自立的に発展を遂げ、選ばれる三条市への道であり、そのためには、まず、先ほど申し上げましたように行政自らが変革を図りながら、時宜にかなった的確な施策を着実に推進していくことが必要であると考えております。

幸いなことに、三条市には、優れた人材、しっかりとした地場産業と農業基盤があります。加えて、豊かな自然環境にも恵まれています。このようなまちは全国を探してもめったにありません。これらのまちの魅力をより一層高め、連携させながら活用していくことが大切です。

私は、愛する三条市が発展していくために、6つの重点政策、「行財政改革の断行」、「バランスのとれたまちづくりの推進」、「防災対策の推進」、「地域経済の再活性化」、「安心、快適な都市・住環境の整備」及び「子育て環境の充実」を柱として各種施策を推進するとともに、全国に向けて三条市の良さを発信し続けます。

行財政改革の断行 〜住民サービスの向上を目指して〜

世の中の在り様が大きく変わろうとしている今、より良い住民サービスを提供していくためには、地方行政もまた質的に変わりながらしっかりとした行財政基盤を確立していくことが必要です。

ところが、当市は現在「三位一体の改革」等による財政の悪化、さらには、「団塊の世代」の職員の大量退職による人的不足に直面しています。

こうした状況に果敢に対応するため、行政内部の改革の具体的な道筋を示す「経営戦略プログラム」が本年3月に策定されています。

私は、このプログラムを確実に進めることにより生み出された資源を活用し、選択と集中によって住民サービスの向上を図りながら、以下に申し上げます、これ以外の5つの重点政策を始めとする重要課題の具体化を図ってまいります。

とりわけ、今後、職員の大量退職等により「小さな市役所」となっても各般にわたって市民の皆様から満足していただけるサービスを提供し、かつ、都市間競争に打ち勝つべく各種施策を企画・実施していくために、何よりも徹底した職員の意識改革と資質向上を図ってまいります。

バランスのとれたまちづくりの推進 〜一体感のある新三条市を目指して〜

私は、上越新幹線北陸自動車道など高速交通体系を始めとする社会資本がしっかりと整備されており、かつ、豊かな自然と確かなものづくり技術が息づく当市は、本格的な都市間競争に打ち勝って大きく飛躍できる潜在能力を秘めたまちであると確信しています。

この潜在能力が十分に顕在化されるためには、旧3市町村が融和し、相互理解していくことが絶対条件であり、「三条ひとつ」という一体感がどうしても必要です。私は、市民の皆様と直接じっくり懇談し、皆様のご意見に耳を傾けながら、行政サービスが特定の地域に偏ることのないようバランスのとれたまちづくりを進めてまいります。

そのための第一歩として市内24小学校区単位で市民との「ふれあいトーク」を定期的に開催してまいります。また、市長へのたよりや地域審議会など様々な機会を通じて市民の皆様のご意見をお伺いします。

融和し、相互理解を進めた上で、「新市建設計画」の趣旨を十分尊重しつつ、その具体的な事業については行財政改革とのバランスの中で事業費や事業効果などをきちんと検証・点検し、必要に応じた事業の見直しをも辞さない覚悟で同計画の理念実現に向けて着実に取り組んでまいります。

また、新三条市の融和を実現するためにも、旧3市町村の均衡のとれた発展が重要です。そのため、例えば、便利で快適な生活を支える高度情報通信基盤を山間地を含めて整備し、「いつでも、どこでも、だれとでも」情報のやり取りができる環境づくりを行ってまいります。

さらには、この場で申し上げております6つの重点政策を着実に推進することで三条の魅力をより一層高めるとともに、近隣自治体との連携を様々な形で深めていくことにより、県央地域の一体感を醸成してまいります。

防災対策の推進 〜安心・安全に暮らせるまちを目指して〜

市民が安心して安全に暮らしていけるまちを実現することは、行政の根本的な使命です。

私は、平成16年に発生した「7.13豪雨水害」で当市が未曾有の被害を受けたこと、今なお多くの市民が苦しんでおられることをしっかりと心に刻み、五十嵐川、刈谷田川等の改修事業に全力を尽くし、災害からの復興を進めてまいります。

さらに、これらの事業推進とあわせ、市内に流れる中小河川の整備促進を図るとともに、内水対策については、大雨による浸水被害を軽減できるよう努めてまいります。また、貝喰川の整備や須頃地区の内水対策については、近隣自治体と連携を図りながら推進してまいります。

防災対策は行政だけで完結するものではなく、地域の力が不可欠です。具体的には、「公助」、「共助」、「自助」の中の「共助」の中心となる「地域コミュニティ」の維持・発展に努めるとともに、水害対応マニュアルの充実・強化などソフト面での防災対策について更なる充実を図ります。

他方、安心・安全の実現に当たっては、市民の皆様に主体的に取り組んでいただくことも大切であることから、地域等が行う防犯・防災対策に対して支援に努めるとともに、関係機関との連携を図ってまいります。

地域経済の再活性化 〜日本全体の牽引役を目指して〜

私は、高い技術力に裏付けられた、全国有数の金属加工業の集積地であるといった、この地域の持つ資源、優位性を最大限に活用し、産地の更なる発展を図るために、産業界の方々と議論を深めながら、異業種間連携戦略などを推進してまいりたいと考えております。

また、情報通信基盤の利活用によるビジネスモデルの確立や流通経費の削減などが進むよう支援していくとともに、企業の誘致を推進します。

中心市街地や既存商店街の活性化については、関係する方々と十分に議論し、先進事例を参考としながら行政としての支援策を検討してまいります。

一方、農業も当市の大切な基幹産業の一つです。私が三条に来てもったいないと感じたのですが、三条産の農産物は安全で美味しいものばかりにもかかわらず、残念ながら首都圏での知名度がありません。

今後は、自立できる農業の確立に向けて、農業基盤の整備や農産物の高付加価値化を進めることはもちろん、県内外へ積極的にPRを行いながら三条産農産物のブランド化を進めます。

当市は合併によって豊かな自然、文化遺産、伝統的産業など多様な観光資源を有するまちとなりました。多くの「団塊の世代」の方々が間もなく定年を迎えられることを一つの好機ととらえて、都市部などから当市においでいただけるよう、グリーン・ツーリズムの取組や雄大な自然に着目したアウトドアの拠点づくり、刃物づくりなど、農業や工業の体験を含めた多様な地域資源を活用した観光戦略を推進してまいります。

これまで申し上げましたように、地域経済の活性化のためには、商工業、農業、観光業などといった産業の枠を越えた産業間連携を進めながら、地域一丸となって取り組むことが必要です。私自ら先頭に立って三条の魅力を積極的にPRしてまいりたいと考えております。

安心、快適な都市・住環境の整備 〜だれもが住みたくなるまちを目指して〜

だれもが住みたくなるまちであるためには、日常生活を安心・快適に過ごすことのできる環境づくりが不可欠であり、高齢者福祉障害者福祉などの充実に努めることはもちろんのこと、万一の際の医療体制の整備も重要な課題であると認識しております。

私は、医師会と連携を深めながら、県央地域の関係市町村と協議を進め、この地域に一日も早く救命救急センターの整備がなされ、症状が重い患者さんも含め、市民の皆様や県央地域の住民の方々が新潟や長岡まで行かなくとも県央地域の中で迅速に医療が受けられるべく努めてまいります。

そのため、まずは、現行の夜間診療所を拡充した内容の救急診療所の開設を目指します。県央地域を中心とする医師会や病院間の協議の進展にあわせ、関係市町村や県と協議を行い、県央地域にとって最も望ましい救急診療所の設置の在り方を見いだしていけるよう最善を尽くしてまいります。

また、道路交通網の充実を図るため、新保裏館線を始めとする幹線道路の整備促進に努めるとともに、だれもが快適に使用できるようユニバーサルデザインに配慮した公共施設の整備に努めてまいります。さらには、美しい自然と都市景観が調和し、市民の皆様からいつまでも住み続けたいと愛着を持っていただけるまちができるよう、20年、30年先を見据えた都市・住環境の在り方について早期に検討してまいります。

子育て環境の充実 〜子どもたちの笑い声が響くまちを目指して〜

過去の歴史を振り返ったとき、明治維新や戦後日本の経済発展の原動力となったものは、「知・徳・体」のバランスの取れた日本の教育水準の高さだと考えています。

また、子どもたちが個々の持ち味を最大限に発揮できる環境の整備、これこそ私たち大人に課せられた責務であるとも考えています。

さらに、子どもたちにきちんとした学力を身につけさせ、将来の三条を担う人材を育てていくことは地域づくりにとっても大事なことです。

しかし、全国的に少子化が進む中、当市においても児童生徒数が減少し、小中学校の小規模化が進行しており、子どもたちの学力の向上や子どもたちが社会性、集団性を培いながら成長していく上で、このことが少なからず影響を与えるのではないかと懸念されます。

これらのことから、私は、有識者や教育関係者と力を合わせて学力向上等のための具体的な教育プランを策定するなど、教育の充実に力を注いでまいります。さらに、成長期の子どもたちにとって、スポーツや文化に親しむ習慣や意欲を育成すること、望ましい食習慣を身につけさせることも重要であることから、こうした取組についても積極的に進めてまいります。

また、私は、一地方自治体でなしうる少子化対策には一定の限界があるものの、これからの地域社会を支えていくために、子育て支援は最も力を入れるべき課題の一つであると認識しております。

共働きの家庭でも安心して子育てができる環境を整えるためには、地域全体で子どもたちを支える仕組みづくりが必要です。この仕組みづくりを行いながら地域の方々の協力を得て子どもの放課後対策をしっかり行うとともに、一時保育の充実などを通じて子育てをしやすいまちを実現してまいります。 

むすび

以上、私の基本的な政策の考え方を述べさせていただきました。

「都市間競争」の時代は、地方自治体が知恵と工夫により市民の満足度を高めるべく競い合い、あわせて、市民の自主的な取組がいかにまちづくりにいかされるかが問われる時代であり、言い換えれば、真の意味での「地方の時代」であると認識しております。

三条市がこの「地方の時代」をリードする魅力ある地方の拠点都市となるよう、また、三条市に暮らす市民の皆様から本当に三条市民で良かったといっていただけるよう、これから4年間、議会の皆様を始め市民の皆様と真剣に議論を重ねながら、精一杯努力してまいりたいと思っております。

何とぞ、議会の皆様と市民の皆様の温かいご理解とご協力をお願い申し上げます。

2006年12月11日

■参考

平成18年度三条市施政方針

平成17年度三条市施政方針