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燕市の金属プレス加工の職人技も駆使して県内3台目の手作り電気自動車が車検に通る (2009.10.30)

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燕市朝日町、(有)阿部製作所の阿部宏平代表(72)は、ガソリン自動車を電気自動車に改造して9月末に車検を通し、県内で3台目の手作りの電気自動車として公道を走っている。

県内3台目の手作り自動車として車検を通った燕市の阿部宏平さん製作の電気自動車と阿部さん

県内3台目の手作り自動車として車検を通った燕市の阿部宏平さん製作の電気自動車と阿部さん

ベース車は日産自動車のコンパクトカー「マーチ」の旧型。エンジンはもちろん、マフラーやガソリンタンク、ラジエーターなどを取り外し、代わりに電気モーターやバッテリーを載せた。

電気モーターは直径約18センチ、長さ約30センチで、重さ10数キロ。製作費は、ベース車の購入費から車検代まで含めて約100万円。メーカー製の電気自動車は、ガソリン車の何倍もするだけに、意外と安上がりだ。

バッテリーを充電する動力のプラグ

バッテリーを充電する動力のプラグ

阿部さんが代表の阿部製作所は金属プレス加工業で、若者に人気の腕時計「G-SHOCK」の裏ぶたの製造も手がける。阿部さんは若いころから車に興味があったが、仕事では車と縁がなかった。

ことし2月に東京で開かれた燃料電池展へ見学に行ったが、電気自動車の試乗は人気が高く、残念ながら試乗できなかった。CO2削減や環境問題、新エネルギーに興味があった阿部さんは、「これだ。これからは電気だ」と電気自動車の製作を思いつき、インターネットなどで情報収集を始めた。

手づくり電気自動車の製作支援も行う「日本EVクラブ」の存在を知り、必要な部品も手にはいることがわかった。「人ができるならおれもできるか」と5月下旬から製作を始め、休日や夜間を利用して約4カ月で完成した。

電気自動車であることをアピールするオリジナルステッカー

電気自動車であることをアピールするオリジナルステッカー

配線図などは部品に付属し、金属加工もお手の物で、モーターをつける加工に必要な腕も道具も十分。夢中で製作した。ただ、最初に車のボンネットを開けたときは「こんなに複雑だったかな。このままにしておこうか」と、2、3日考えたという。

バッテリーは鉛を使用した1個24kgのものを9個使った。充電は動力を利用しているが、差し込み口を変えれば家庭用のコンセントにも対応する。5、6時間の充電で、20kmほど走行できる。

モーターの始動は無音で、動き始めもタイヤと路面のすれる音が聞こえるくらい静かで滑らか。近くに出かけるのに電気自動車を利用しており「バッテリーの量を気にしなければ、快適」と大満足だ。

外観はマフラーがない以外は普通の車と変わらないので、オリジナルの「EV jiji 電気自動車」の文字のステッカーを張って電気自動車であることをアピール。「jiji」は、「じじの作った車」としゃれている。

今後の課題は蓄電池という。性能の優れるリチウム電池を使うと費用が約150万円もかさんでしまう。将来、値段が下がればリチウム電池に替え、ほかにも電力の消耗を抑え、効率化を図る改良を重ねる。

電気自動車の製作で楽しかったのは、すべての作業を完成させてスイッチを入れ、アクセルを踏んで静かに動き出した瞬間。「これを待っていたんだ」と、2月に試乗できなかった電気自動車を自分の手で作り、体感した。

「物ができたときの喜びは、やった人でないと味わえない」と阿部さん。「やる気があれば誰でもできる。若い連中にも挑戦してほしい」と電気自動車だけではなくモノづくりの楽しさを若い人たちにも味わってほしいと、モノづくりの町「燕」の職人の一人としてフォロワーの活躍に期待している。