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玉川宣夫さんの人間国宝で注目が集まるなか22日まで燕市産業史料館で水燕鎚工会作品展 (2010.8.6)
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燕市は6日から22日まで燕市産業史料館で水燕鎚工会作品展を開いている。同会の初代会長でもある燕市花見、玉川宣夫さん(68)が鍛金の技術で人間国宝に認定されることが決まったばかり。全国的に鍛金や鎚起銅器に注目が集まるなかでの作品展となっている。
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22日まで燕市産業史料館で開かれている水燕鎚工会作品展
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一枚の金属を金づちでたたいて延ばしたり、絞ったりして形を作る鍛金、金属にたがねなどを使って模様を刻む彫刻。そうした技術に取り組む8人の会員が制作した合わせて49点を展示する。作品は花入れが多く茶道具やオブジェ、レリーフもある。
今回のテーマは「時代−今と昔」。このテーマにあわせて、「昔」なか?らの伝統を意識して「今」の視点を加えた作品を1点ずつ制作した。今は使われなくなった燭台(しょくだい)、経典を入れる経筒、砂が減る砂時計をモチーフに「時」を表現した作品もある。
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展示している会員の作品
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作品の素材は大半が銅で、次いで銀が多い。銅のイメージでは渋い色だが、銅を酸化させた歳月を感じさせる緑青(ろくしょう)や深みのある赤銅(しゃくどう)。さらに燕独特の手法で錫(スズ)を塗って焼いた鈍く光る銀色、銅の上に塗り込んだはんだの一種でもある銀ろうなど、金属ならではの重厚感あふれる発色が目を引く。
「四分一(しぶいち)」と呼ぶ銀と銅の合金、そして黒味銅のそれぞれを材料にまったく同じ形の花入れを作り、四分割する形で横にスライスして互い違いに組み合わせた「接ぎ合わせ(はぎあわせ)」という途方もない時間や労力、高度な技術から生まれた作品もある。
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展示している会員の作品
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水燕鎚工会は、燕市合併前の旧燕市と旧分水町の10人を会員に、両市町名から「燕」、「水」の一文字を取って「水燕」と名付け、1988年に発足。勉強会で課題制作に取り組む一方、作品展を開いて技を磨き、刺激しあい、ときには競って質の向上を目指してきた。
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接ぎ合わせの花入
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今は鍛金6人、彫金2人が会員で1人が三条市のほかは燕市に住む。活動はもっぱら毎年の作品。発起人でもある燕・分水鎚起銅器伝統工芸士会会長の石高靖男さん(66)=燕市分水新町3=は、活動を続けるなかで「黙っていてもお互いの表現力が参考になる」、「持ち味を生かしながら相手のいい所を取り合ってきた」と振り返る。
18歳から玉川宣夫さんが腕を磨いてきたのと同じ燕市・玉川堂で玉川宣夫さんと働く伝統工芸士の細野五郎さん(59)=燕市新生町=は、「昔は決まり切った職人の作品ばかりだったけど、今は創作味があります」と感性の向上に目を見張る。
ともに同会発足に尽力した玉川宣夫さんの人間国宝には「メリットはあってもデメリットはないはず」。12月にも同史料館で玉川宣夫さんの作品展が開かれることが決まっている。鍛金が産業として成立しているのは全国でも燕だけで、人間国宝の誕生がさらに産地の起爆剤となることを願っている。
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鎚起小皿制作体験で作る小皿
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作品展にあわせて日曜の8日、15日、22日にいずれも午後2時から3時まで作品解説会を開くほか、8日午前10時から鎚起小皿制作体験を行う。作品解説会は無料で申し込み不要だが、入館料が必要。制作体験は同史料館実習生の指導で1枚500円で小皿を作る。参加したい人は同史料館に予約する。
作品展は会期中の休館日は9日と16日、午前9時から午後4時半まで開館。入館料はおとな300円、子ども100円で、土、日曜と祝日は燕市内の小中学生と付き添いの保護者1人が無料。同会のメンバーと作品解説会で開設を担当する会員は次の通り。敬称略。
石高靖男
昭和19年 燕市(旧分水町)生まれ
日本工芸会東支部会員
新潟県工芸会会員
新潟美術家連盟会員
伝統工芸士
燕市分水新町3
岡本國雄
昭和21年 燕市生まれ
日本工芸会東支部会員
伝統工芸士
燕市杣木
岡本秀雄
昭和26年 燕市生まれ
伝統工芸士
燕市杣木
椛澤伸治
昭和32年 三条市生まれ
新潟県工芸会会員
三条市東三条2
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高橋純一
昭和24年 燕市(旧分水町)生まれ
日展会友
現代工芸美術家協会本会員
燕市分水桜町1
広田温樹
昭和28年 燕市生まれ
三軌会会員
燕市秋葉町4
深海晃一
昭和22年 燕市生まれ
伝統工芸士
燕市中央通2
細野五郎
昭和25年 村上市生まれ
伝統工芸士
燕市新生町
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■展示作品の解説会
- 8月8日(日)石高・岡本(秀)・細野
- 8月15日(日)高橋・椛沢
- 8月22日(日)岡本(國)・廣田・深海
関連リンク
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