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天領の里で鼓童の山口さんによる竹笛と田上町のあおのさんの書道が共演、幽玄へといざなう (2010.10.11)
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出雲崎町尼瀬、越後出雲崎「天領の里」(三輪正館長)は9日、同施設時代館の御奉行船を使った特設ステージで、鼓童の山口幹文さんによる竹笛コンサートと田上町の書道家あおのよしこさんによる書道パフォーマンスとの共演「『結』出雲崎と佐渡を結ぶ 想いの竹」を行い、竹笛と竹の筆という、タケが取り持つ組み合わせで幽玄な時空を味わってもらった。
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越後出雲崎「天領の里」で行われた鼓童の山口幹文さんによる竹笛コンサートと田上町の書道家あおのよしこさんによる書道パフォーマンスとの共演
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山口幹文さんは、佐渡の創作和太鼓集団「鼓童」の竹笛奏者で、舞台演出や作曲も担当する。「一管風月」のタイトルでソロコンサートを行う一方、ハリウッド映画の音楽監督も務め、活躍のフィールドは世界に広がっている。
あおのさんは、書アート筆文字教室あじさいを主宰し、ロゴ制作や手書き暖簾、看板、額作品、筆文字名刺、大筆パフォーマンスなどさまざまな書道作品を提供する。
今回は山口さんが1曲を演奏するごとに、その間にあおのさんが1作品を制作するというスタイル。出雲崎特有の妻入りの街並を再現した展示体験館「時代館」には、金銀を満載し、葵(あおい)の紋の帆を立てて佐渡と出雲崎を往復した御奉行船が展示してあり、その船上をステージに使うユニークな趣向だ。
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竹笛の音で幽玄へいざなう山口さん
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巨大な吹き抜けの空間で、まずはあおのさんが船上でパフォーマンス。山口さんが2階部分から笛を吹きながら階段を下りてくるという演出でスタートし、以後は山口さんが船上で演奏し、あおのさんが床に敷いたり、船に立てかけたりした紙に書を書いた。
山口さんは自身が作曲した『道(みち)』や『静(しずか)』をはじめ、アイルランド民謡の『ダニーボーイ』、モンゴル民謡の『オヨーダイ』、沖縄民謡の『西武門節(にしんじょうぶし)』、韓国民謡の『ミリャン・アリラン』など、世界の民謡をまじえた10曲余りを演奏した。
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たおやかに筆を走らせるあおのさん
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日本の笛は音が小さく、か細いようなイメージがあるが、山口さんの演奏はそうした先入観を一掃する。横笛とは思えない聞いている人の頭の中にまで響くような大きく、太い音を出した。もちろん息をしぼった横笛の繊細な表現も見事にコントロールし、そのダイナミクスの幅広さは、圧巻。横笛1本の音色しかないのに、多様な表現力で観客を飽きさせるどころか、ぐいぐいと演奏に引き込んだ。
一方であおのさんは、曲が始まると演奏に聴き入ってから、何をどう書くかイメージを膨らませてから筆先を紙に落とした。まったくのノープランで、横笛の音色に背中を押され、演奏にあわせて筆を舞わせるようにたおやかに動かした。
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金銀を積んで佐渡と出雲崎を行き来した御奉行船がステージに
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紙に書かれた字句は「月の舞」、「風のように光のように水のように」、「響音 祈り届く」など。会場に訪れた音楽ファンにも視覚という視点で演奏をひきたて、2人でしかつくり出せない時空を生み出した。
あおのさんはラストで十畳大の紙に書く大作に挑んだ。あおのさんは、ほうきのように大きな筆を両手で持ち、全身を使って筆を運んだ。もちろん、あおのさんにとっても書きながら全体像を把握できず、後ろを振り返って紙を見渡したりして空間構成を確認した。
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あおのさんが書き上げた作品
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山口さんの演奏は即興のインプロビゼーション。あおのさんのパフォーマンスを意識しながら演奏し、音と書が互いに呼応した。あおのさんは「絆」の一字を大書し、さらに「佐渡」と「出雲崎」の言葉を加えた。
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十畳大の紙に「絆」と書いた大作
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1日2回公演で、夜の部は昼の部の半分ほどの客の入りだったが、それでも70人ほどが来場した。世界で活躍する鼓童の主要メンバーである山口さんの演奏を間近に聴くことができると貴重な機会で、静まりかえった会場で響き渡る笛の音、張り詰めた緊張感に息を凝らし、演奏が終わると大きな拍手を送り、さらに完成した作品を解説するあおのさんにも拍手を送って内容が凝縮した共演をたっぷりと味わっていた。
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