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「切り起こし」の手法で生まれた明間印刷所の立体学習本「起き上がる形本」が視覚障がいや教育関係の注目を集める (2011.1.6)
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明間印刷所(明間隆三社長・三条市月岡1)製造の9つの立体が一冊の本に折りたたんで収納されているアイデアいっぱいの立体学習本「木原隆明の世界 起き上がる形本(けいほん)1[基本立体編]」が、視覚障がいや教育関係などさまざま方面から注目を集めている。
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明間印刷所製造の立体学習本「木原隆明の世界 起き上がる形本(けいほん)1[基本立体編]」と明間社長
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A5判、厚さ18ミリで価格は6,300円。一見するとふつうの本だが、ページを開くごとに四面体、正三角錐、正四角錐、直方体、十八角錐など9つの立体が3Dとなって飛び出す。各ページとも起きあがる部分と土台の部分とで2枚の紙を張り合わせてある。
紙は1ミリと厚く、耐水性があり、一度にすべてのページを広げると891×630ミリの大きさになる。図形名は点字でも表記した。
立体になる部分は、起き上がる部分を切って起こす、折り紙建築の「切り起こし」という技法で製作してあるので、たためば立体部分が切った紙にきれいに収まる。折りたたんでもかさばらないのが飛び出す絵本との違いだ。
持ち運びや保管が大変な立体を1冊の本に収納し、必要に応じて9つの立体を一覧できる世界初の立体学習本。視覚障がい者や空間図形を学ぶ就学者用副教材にと同社はアピールする一方、健常者の空間図形学習にも有効で、あえて色をつけず、光と影で立体を認識させる和の感性も持ち込んだ。
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たたんだ状態はふつうの本だが、開くとにょっきりと立体が起き上がる
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同書の著作は、新潟県生まれの一級建築士木原隆明さん。木原さんは、グリーティングカードでも良く目にする1枚の紙から建築物や動物など立体的な造形物を浮き立たせる折り紙建築の創始者、茶谷正洋さんに師事した。
「子どもたちにものを作る喜びを教えたい」という木原さんと明間社長は、7年ほど前に知り合い、同社の折り紙建築のグリーティングカードも木原さんが手掛けた。それを今回は本という形で商品化したのが新しい。
本にした明間社長の目的は2つ。本なら図書館へ寄贈して切り起こし技法の伝承につながる。この技法を後生に伝え、残せるかと考えたとき、図書館への寄贈を思いついた。もうひとつは、木原さんの友人で視覚に障がいのある人にもさわられる教材が必要で、それにはさわっても壊れない強度の作品が必要で、それなら世界の建築物もさわって感じてもらえると考えた。
木原さんの立体の設計図を基に1年半の試行錯誤の末、昨年8月に完成。国内の点字図書館を含む図書館など20カ所に寄付した。視覚障がい関係をはじめ、数学など教育関係からの問い合わせもある。
第2号もすでに1月発行の予定で準備している。今度はピサの斜塔やピラミッドといった世界遺産の有名建築物などがモチーフ。木原さんの世界の建築物の設計図は、1,000種類余りにのぼり、本著書を第1号に今後、年に3、4冊のペースで100号まで発行することを決めた。
商売以前に自社の技術が社会に役立ち、1人でも多くの人から喜んでもらえることを願っている。問い合わせは同社「起き上がる形本」係(電話:0256-32-3090、電子メール: akema@pop01.odn.ne.jp)へ。
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