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長善館史料館に寄贈されていた鈴木文台の遺墨十二幅すべての軸装が終わり、新春特別企画として初公開 (2011.1.7)

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燕市長善館史料館(吉田勝館長)では、年明けから3月27日まで平成23年新春特別企画として長善館を創設した鈴木文台(すずきぶんたい・1796-1870)が漢詩を書いた十二軸を展示、初公開している。

燕市長善館史料館が展示、初公開している鈴木文台十二軸

燕市長善館史料館が展示、初公開している鈴木文台十二軸

蘇東坡(そとうば)とも呼ばれた蘇軾(そしょく・1036-1101)が詠んだ後赤壁之賦(ごせきへきのふ)が書かれている。文台お気に入りの漢詩で、全紙の幅約四分の三、「全紙聯落」と呼ばれる52×131センチの紙に書いた作品12点を65×200センチの軸装にして展示している。

文台の肖像画

文台の肖像画

文台60歳のときの作品。屏風に張られたものをはがして保存されていたため、はがすときに破れて失われた部分もあるが、保存状態はそれほど悪くない。

文台は1833年(天保4)、粟生津村(今の燕市)に私塾、長善館を創設。中国の古典を中心に教え、越後の禅師、良寛(1758-1831)とも親交があった。書ではあまり知られなかったが、後赤壁之賦で見せる自由な作風は良寛の影響も感じさせる。

「有」の字を挟む上下の字はいずれも「酒」だが書体がまったく異なる

「有」の字を挟む上下の字はいずれも「酒」だが書体がまったく異なる

書体は楷行草が入り交じり、感性のおもむくままに筆を走らせたのだろう。伸びやかな運筆に気取りはなく、文台の精神世界を表出しているようでもある。

この書は平成16年に燕市下粟生津の本井ツイさんから寄贈を受けた。夫だった敬章さんが生前に求めていたものを家で大切に保存していたが、死蔵されてはいけないと寄付を申し出た。

当時、同史料館は「鈴木虎雄博士の漢詩鑑賞会」始めていた。長善館二代、てき軒の五男で文化勲章受章の鈴木虎雄博士の漢詩を鑑賞する会だったが、そこで後赤壁之賦の読み下しや解釈を手掛けており、それらもあわせて展示している。

同史料館では、寄付を受けた後赤壁之賦を小分けにして毎年、順に表具してきたが昨年、一気に残り4幅の軸装が完成。12軸がそろったことから初めて公開している。

ことしは同史料館の開館20周年の記念すべき年で、その節目を飾る最初の展示。また、てき軒の長男で長善館の教師となった柿園(しえん・1861-87)の生誕150年にもあたり、同史料館では展示や公演など記念事業の計画を進めており、ことしの同史料館に注目だ。


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