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三条市指定有形文化財に新指定された下田地区の仏像2体をテーマに文化財講演会、仏像の着衣の実演も含む講演に120人来場 (2011.2.27)
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三条市と下田郷文化調査審議会(近藤久男会長)は、27日午後2時から下田公民館で平成22年度文化財講演会「新指定の仏像をめぐって〜本都寺阿弥陀如来立像と最明寺千手観音菩薩坐像〜」を開き、テーマにした仏像のある地元下田地区の住民や文化財、仏像のファンなど120人が来場して着衣の表現による仏像の制作年代の判定など、仏像に詳しくない人の興味も引きつけるわかりやすい講演に聴き入った。
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27日開かれた文化財講演会「新指定の仏像をめぐって…」で仏像の着衣を実演する熊田教授
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三条市は昨年、3件の文化財を新たに市指定有形文化財にした。うちいずれも下田地区の寺院が安置する仏像の2件、千手観音菩薩坐像(せんじゅかんのんぼさつざぞう)=最明寺・院内=と阿弥陀如来立像(あみだにょらいりゅうぞう)=本都寺・飯田=の学術調査を行った愛知県立芸術大学の熊田由美子教授が講師を務めた。
熊田教授は、芸術学(日本・東洋美術史)、文化財学が専門。仏師運慶と鎌倉彫刻の研究、中世仏教美術を中心に日本美術における創造と受容の関係史、地域の仏教美術の調査と保存に関する研究、童子形像の史的変遷についての研究などを研究課題にしており、新潟県文化財保護審議会委員も務めている。
熊田教授は、本都寺の阿弥陀如来立像については、「後ろの美しさを見て一目瞭然、あっ、鎌倉だなと思いました」。旧三千坊時代からのものと伝わるが、時代的に「三千坊から移したものとは考えにくく、むしろ移ってから作られたのでは」との考えを示した。
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120人が来場して満員の会場
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最明寺の千手観音菩薩坐像については、「平安風を残している鎌倉」で、「元になったの古像があったのだろう、復刻像なのだろう」とし、新潟には千手観音像が多く見られるのは、山岳信仰とのかかわりも指摘した。
収集した資料や京都や奈良の類似した仏像の写真との比較をプロジェクターで上映することで、仏像に詳しくない人にも視覚に訴え、飽きさせなかった。とくに興味を引いたのが、着衣の実演だ。
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講師の熊田教授
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「仏像の制作年代は着衣は非常に重要です」と熊田さん。複数の長方形の布を使い、インド、中国、日本の順に仏像に見られる着衣の変遷を実際にモデルに布を着付けながら実演してみせた。
来場者の関心は高く、講演の最中から衣を巻く意味、衣のひだの意味を質問する人も。仏像の材料の木の種類に関する質問あった。最後に熊田教授は、今回の学術調査を通じて「思いがけぬ名像に出会えてわたしもうれしかった」と喜び、仏像など文化財の保存に「皆さんのご協力をたまわりたい」と締めくくった。
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