燕市で金属洋食器が製造されて100周年の記念行事に取り組む日本金属洋食器工業組合(田中正勝理事長)は6日、燕市産業史料館で「なるほどカトラリー展〜職人の知恵と工夫」のオープニングセレモニーを行った。来年3月31日まで1年間にわたって燕の洋食器製品、さらにその100年の歴史や製造工程を紹介する展示を行っている。
午前9時半から同史料館前で地元のアイドルユニット「ブルースカイレビュー」が100周年記念のテーマソング「レジェンド」、ジャズシンガーの吉田睦さんによるライブで始まり、100人近い市民が集まった。
日本金属洋食器工業組合の田中正勝理事長は、さまざまな環境の変化が今回の展示で表現されており、「この100年のわれわれが不死鳥としてよみがえってきた長い歴史を見ていただき、今後ともの100年を大いに応援していただき、われわれが基礎となってつくってまいった金属製造業を盛り上げて、また、燕市とともに町おこしをしていきたい」とあいさつした。
鈴木力燕市長は、これまでの100年に新たな100年を加えるのがこの事業の意味ととらえ、市は産業そのものを観光にする産業観光に取り組んでおり、「いろんな形でこの100周年事業を契機にさらなる新しい100年が築き上げられるように市としても最大限、応援していきたいので、皆さんも一緒になって盛り上げていってください」。
山崎悦次燕商工会議所会頭は、先人が素材の調達や機械化に苦労した歴史があり、職人の知恵と工夫で隆盛を極め、昭和30年代、40年代と非常にいい時代を過ごしたことを振り返り、「100周年の節目を全国にPRしていただいて、もうひとつ、もう一回、世界に燕を発信して頑張っていただきたい」と述べ、3人でテープカットを行って開場した。
会場には燕市で製造されるさまざまなスプーン、フォークが並ぶ。会場に入ってまず目を引くのが、ステンレス製の巨大なコイ。全長3メートル余り、重さ150キロもあり、皿の部分をウロコに見立てた2,200を超えるスプーンを取り付けてある。
約20年前に洋食器供養を行ったときに製造したもの。昨年末で営業を終わった共同展示館つばめに保存されていたもので、スプーンには金メッキも施されており、度肝を抜く大きさとキッチュな雰囲気につい声を上げるほど驚く。
力が入っているのが、昔の磨き屋の作業場の再現だ。研磨機を中心に真っ黒に汚れたいすやケースなどをありのままに再現。モーターや油なども展示し、当時を知る人なら研磨の音が聞こえてくるようだ。
あわせて月に1、2度電休日があったこと、ストーブでサツマイモを焼いていたこと、燕では「どこでもクラウン」というほど景気がよかったことなどをパネルに書いて紹介している。
古いものでは燕物産の前身だった金物商の捧吉衛門商店の天明4年(1784)から大正初期に書かれた大福帳や用件日誌もしており、読みやすい書体で書かれており、興味深い。
洋食器は、シリコン製、赤ちゃん用、フルーツをかたどった柄、キャラクターもの、七宝焼きなど千差万別。カツカレーやパフェ、イチゴなどごく限られた用途に限定して作られた洋食器もあり、燕の洋食器100年の歴史を凝縮した展示となっている。