平成23年第1回燕市議会定例会にあたり、私の市政運営の基本方針及び主要事業について申し述べ、市民の皆さま並びに市議会議員の皆さまのご理解とご賛同を賜りますよう、お願い申し上げます。
今、国も地方も大きな変革のときを迎えており、社会保障への不安や少子高齢社会の進展に伴う諸問題の発生など、課題が山積しております。
これらを解決していくためには、市民の皆さまと行政、議会が協力し、知恵と情熱を結集しながら、新しいまちづくりを進めていかなければならないと考えています。
私は就任当初から、できるだけ多くの市民や各種団体の皆さまの声をお聴きするよう努めてまいりました。
その中で、皆さまからの期待の大きさを痛感すると同時に、未来を見据えた高い目標と志を持ち、明日の燕市を形作る施策に積極的に取り組んでいくことの必要性を、改めて実感しているところであります。
23年度の予算は、私が本格的に編成する初めての当初予算となります。前例踏襲にとらわれず、事業を検証し、スクラップ・アンド・ビルドやペイアズユーゴー原則を強く意識しながら、議論を積み重ねてきました。
その結果、厳しい経済情勢が続く中、引き続き産業の振興に最優先で取り組むとともに、教育の充実を含めた子育て環境の整備や医療福祉の均衡ある充実を図ることで、市民の皆さまが、少しでも将来に明るい展望が開けるよう、新たな施策を中心とした積極的予算を編成したところであります。
今回、一般会計で355億9,100万円の予算案を組ませていただきました。これは、22年度6月補正後の肉付け予算と比較して、9億5,813万円、2.8%の増額となっております。
また、歳入につきましては、経済情勢の先行きの不透明感から、22年度と比較して、市税全体で2億1,278万円、2.2%の減額を見込むなど、やや慎重な見積もりをたてております。
なお、新たな施策に着手する財源を確保するため、財政調整基金を約4億円取り崩す予算となっていますが、今後、一層効率的な行政運営による経費縮減や税収の確保、地方交付税額の確定などにより、23年度末には積み増しを図る予定であります。
このような観点に立って、23年度は限られた財源の中、次の6つの施策を柱とし、「日本一輝くまち燕市」の実現を目指して、全力で取り組んでまいります。
施策の1つ目の柱は、「産業の振興」です。
地域産業の持続的発展は、地域社会全体の活力源です。産業の活性化なくして地域の活性化はありません。産業の振興を最重要課題として取り組んでまいります。
とりわけ燕市の基幹産業である製造業については、依然として本格的な回復基調の見いだせない景気動向の中、経営安定化のための金融対策に取り組むことはもちろんですが、グローバル経済や生活者ニーズの多様化への対応など構造的な変革や将来への成長戦略を見据えた、新たな施策に取り組みます。
具体的には、新エネルギー産業、航空機産業及び医療機器産業など今後成長が期待される分野にチャレンジする企業を支援するため、新産業開発アドバイザーやコーディネーターを委嘱し、研究会の開催や技術指導などを行います。
また、付加価値の高い新商品・新技術の開発を一層支援するため、補助対象経費の弾力化も含めて、補助制度の拡充を図ります。
販路開拓、需要開拓の支援策としては、見本市などへの出展小間料の補助を継続するとともに、業界団体との連携による中国市場などへの販路開拓プロジェクトや新たに県外企業とのビジネスマッチング事業に取り組みます。
さらに、小規模事業者を対象とした展示会共同出展事業や町田・両国のアンテナショップでの販路拡大と観光PRも行いながら、産業の振興を図ってまいります。
併せて、今後の学校給食センター改築を見据え、地元産業界と調理現場による、より使いやすい食器や調理器具などを製造するための共同研究も行っていきます。
次に、商店街活性化につきましては、新規事業として商店元気塾を開催し、個々の商店の魅力づくりや経営強化の支援を行います。
もとより、商店街の活性化は一朝一夕で実現できるものではありませんが、今年私が先頭に立って取り組んだ天神講菓子のPRが大きな話題を呼び、商店組合の独自活動を誘発し、売り上げ増にもつながるといった成果を上げることができました。
このように、燕の特性を生かした情報発信や徹底した顧客満足の視点に立った商店の魅力づくりに、今後の商店街活性化に向けたひとつの糸口があるのではないかと思います。
今後とも商店街の皆さまと知恵を出し合いながら、活性化の支援に取り組んでいきたいと考えております。
続きまして、観光についてであります。
観光は、旅行・宿泊業や飲食業にとどまらず、農業やものづくり産業など幅広い分野において需要の拡大につながる新たな成長産業であります。今後、特に着地型観光の推進に力を注いでまいります。
まず、市・観光協会・県及び弥彦村が連携した産業観光戦略会議を開催するとともに、国上山などの自然や、良寛、金属洋食器などの魅力ある地域資源を活用した、体験型旅行のルート企画を行い、モニターツアーの実施や首都圏で開催される旅フェアといった展示会に積極的に参加するなど、国内外に情報を発信していきます。
さらに、任期付職員採用制度により、観光の専門知識とネットワークを持った人材を民間から登用するとともに、近隣地域とのウィンウィンの連携を深め、さらなる観光の振興に努めていきます。
また、23年度は燕市に金属洋食器の製造が始まって100周年にあたることから、これまで燕市が歩んできた洋食器の歴史や文献などを収集整理し、ガイドブックやカトラリー検定用の資料を作成しながら、今後の産業観光推進に役立てていきます。
22年度から実施し、大きな経済効果のありました住宅リフォーム助成事業につきましては、23年度は予算枠を拡大して引き続き実施しながら、市内建築関連業者の受注機会を増進させ、当該業界の活性化を図っていきます。
次に、農業政策の推進についてであります。
23年度は、JA・農家・商工会議所などで構成する「つばめ6次産業化推進協議会」を立ち上げるとともに、県・関係市・農業団体などで組織する中国向け新潟米輸出促進協議会に参画し、新たな需要拡大に向けた取り組みを検討していきます。
燕市独自の取り組みといたしましては、アンテナショップの開設を機に始まった、町田市民との農業体験を通じた交流事業を23年度も継続し、さらなる販路拡大に向けた活動を積極的に展開していきます。
また、23年度も農業生産基盤の整備に取り組むとともに、需要に応じた売れる米づくりを推進し、農産物の産地化を目指す農家の取り組みを支援していきます。
さらに、燕市産コシヒカリ「飛燕舞」のブランドの確立と、農産物や農産加工品の販路開拓を目指し、首都圏の消費者に情報発信していくとともに、ヤクルトスワローズとの交流連携による米の販路拡大の検討をスタートしていきます。
2つ目の柱は、「未来の燕を担う子どもたちの育成」であります。
子どもたちは、地域の大切な宝であり、燕で生まれ育つ子どもたちの存在は、まさに燕の未来そのものです。人をまちづくりの原点として、燕の未来を担い、次の時代をリードする人材の育成を目指し、学力向上対策の充実を図るなど、教育立市宣言の具体化に力を入れていきます。
まず、幼稚園・保育園において、朝の活動に10分程度の「つばめおはようタイム」を設け、絵カードや手あそびなどを行い、1日の生活リズムを整え集中力を育成していきます。
次に、小中学校では、「燕長善タイム」として毎日10分程度の時間を設け、音読や計算学習、郷土について学ぶことなどにより、子どもたちの集中力や学習意欲の向上を目指します。
子ども夢基金につきましては、現在まで市民の皆さまから、2千万円を超える善意のご寄附をいただいております。新年度に入り次第、早急に具体的内容を検討し、次世代育成推進事業、子育て支援活動や青少年健全育成活動への助成、子どもたちの夢のある活動への支援などに活用してまいります。
指導体制の強化としましては、指導主事の増員、学習指導補助員や介助員の配置、外国語助手による訪問指導の充実など、きめ細やかな学校支援に努め、学力の向上を図っていきます。
また、ICT導入校を4校から8校に増やし、プロジェクターやスクリーンを使用した、分かりやすい授業を展開するとともに、小中学校の耐震補強や大規模改修など、施設整備にも計画的に取り組みます。
さらに、老朽化が進み、かつ手狭である杉名児童館の改築や、吉田小学校の改築に併せた児童クラブ室の新設も行ってまいります。
学校給食につきましては、吉田・分水地区の学校給食センターの統合や燕地区の給食センターの運営の在り方を検討し、具体化を図るため、学校給食センター建設基本計画を策定いたします。
また、食の安全・安心に向けた取り組みの一層の充実を図るとともに、市内企業の製造技術を活用しながら、古くなった学校給食用食器類について、計画的に入れ替えを行っていきます。
一方で、人口減少、少子化が進行している中、安心して子どもを産み育てられるまちづくりに向けて、多様化する保育ニーズに応えるとともに、行財政改革を推進するため、民営化も含めた公立幼稚園、保育園の適正配置を進めていきます。
3つ目の柱は、「医療・福祉の充実」であります。
健康で長生きすることは、市民共通の願いです。子どもたちの元気な声が響き、高齢者や障がい者が笑顔で暮らせるまちづくりを目指し、引き続き全力を注いでまいります。
まず、医療の充実についてであります。
子ども医療費助成事業につきましては、子どもが安心して医療サービスを受けることができるよう、23年4月診療分から、通院にかかる子ども医療費助成の対象年齢を、子どもの人数にかかわらず、すべての子どもを対象に就学前までから小学校卒業前までに拡大し、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ります。
また新たに、中学1年生から高校1年生の女子を対象とした子宮頸がんワクチンや、生後2カ月から5歳未満の乳幼児を対象としたヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種費用を全額助成いたします。なお、このワクチン関係につきましては、昨今の状況を踏まえて止めているという国の対応もありますので、国の状況を見ながら適切に対応してまいりたいと考えております。日本脳炎の予防接種についても積極的勧奨を再開し、疾病予防と子育てしやすい環境づくりに努めていきます。
さらに、子どもを持ちたいという願いを支援するため、特定不妊治療費の一部を補助いたします。
次に健康づくりへの支援であります。
23年度も、スポーツを通して健康づくりの輪を広めていくため、健康づくり100日運動を継続していくとともに、総合型地域スポーツクラブの整備・統合などに向けた支援やスポーツの全国大会で活躍できる環境づくりを進めていきます。
介護・高齢者への支援につきましては、高齢者を取り巻く現状や課題、ニーズを的確にとらえ、高齢者が安心して介護保険制度を利用できるよう、24年度から始まる第5期介護保険事業計画を策定いたします。
行政への支援の求め方が非常に多様化する中、買い物弱者などを地域で支え合う仕組みづくりや交通システムの整備など、高齢者福祉の在り方を総合的に調査研究するため、新たにプロジェクトチームを立ち上げます。
なお、在宅介護手当につきましては、24年度から、支給目的を在宅サービスの利用促進から介護の負担の大きい家族に対する支援へと見直しをさせていただきたいと考えており、23年度1年をかけて周知を図ってまいります。
障がい者への自立支援では、障がい者が安心して福祉サービスを利用できるようにするため、障がい者基本計画及び障がい福祉計画を策定するとともに、社会福祉法人などが行う障がい者社会福祉施設の整備に要する費用の補助を行い、障がい福祉サービスの基盤整備を促進していきます。
4つ目の柱は、「生活環境・都市基盤の整備」であります。
まず、温室効果ガスの削減や環境にやさしい生活への転換を促進するため、新エネルギー普及促進事業として、個人や事業所で購入する電気自動車や太陽光発電などの新エネルギー設備設置費用の一部助成をスタートさせます。また市としましても、率先行動の一環として電気自動車を1台購入いたします。
公共下水道事業につきましては、普及率向上を目指し、下水道管布設工事を進め、生活環境の整備促進に努めていきます。
市民の足として親しまれている循環バスと巡回バスは、燕市地域公共交通会議を設置し、新庁舎建設時を見据えて、運行コースや時刻表などの見直しの検討を始めます。
現在の車社会においては、道路は生活を支える重要な基盤であります。今後とも緊急性、効率性を考慮し、計画的に整備を進めていきます。
水道事業につきましては、浄水場施設の更新や下水道・ガス工事などと連携を密にした老朽管の布設替えを実施するとともに、経営の効率化、経営基盤の強化を図り、安全で安心な水を安定供給してまいります。
続いて生涯学習への支援であります。総合文化センター再整備事業として、文化会館・中央公民館の駐車場不足を解消するため、新たに用地を購入し駐車場の拡張整備を行います。
さらに、燕市のシンボルとして親しまれてきた旧配水塔を改修し、登録有形文化財として保存することで、上水道の普及とともに発展してきたまちの歴史・文化的意義を地域や子どもたちに伝えてまいります。
新庁舎建設につきましては、23年度から建設工事に着手し、24年度末に施設の完成、25年度早期の移転開庁を目指します。また、工事の推進にあたっては、できる限り地域経済の活性化に配慮しながら、事業を進めていく方針であります。
なお、計画段階から実施段階に移るため、総務部内に新庁舎建設室を設け、関係部署間の総合調整を図りながら、円滑かつ適正な事業執行に努めてまいります。
5つ目の柱は、「行財政改革の推進」であります。
行財政改革を進めるにあたっては、スクラップ・アンド・ビルドによる財政の健全化と、時代の変化に適切に対応できる行政運営への見直しを、車の両輪として、取り組んでいかなければなりません。政策官庁への変革を目指し、市役所の機能を2つの側面から強化していきたいと考えています。
その1つ目が、組織の強化です。新庁舎建設後を見据えた組織機構の見直しを、可能なところから前倒しで進めていきます。23年度の組織機構の見直しの重点として、財政部門と企画部門の統合を行い、中長期的な財政運営の見通しを立てながら実効性のある政策を立案する体制を整備します。
2つ目は、職員一人ひとりのレベルアップです。
専門家を講師として招いた政策研究会やセミナーを引き続き実施し、職員の能力向上を積極的に行っていくとともに、プロジェクトチームを立ち上げ、燕市の数々の課題について真剣に議論する場を設けていきます。
また、組織の活性化と人材の育成を図るため、国や県との人事交流を拡大していくとともに、大学に集積する豊富な知識や情報などを、幅広く市政に活かしていくため、包括的な提携に向けた取り組みも進めていきたいと考えております。
3年にわたり、市民の皆さまと一緒に検討してきた、協働のまちづくりにつきましては、まちづくり基本条例の考え方を広く市民の皆さまからご理解いただくため、協働フォーラムを開催します。
また、まちづくり協議会やNPO法人などの市民団体の自主的な活動に対して支援するとともに、男女共同参画社会の実現に向けた、第2次推進プランを作成します。
一方で、市民サービスの向上、業務の効率化などを図るため、21年度に策定した情報システム最適化計画に基づき、安定的に稼働するシステムの導入に取り組んでいきます。
併せて、入札に要する費用の縮減や公正な競争の促進、事務の簡素化などを図るため、電子入札システムの導入にも着手いたします。
6つ目の柱は、「燕はひとつプロジェクト事業」であります。
今年は、合併5周年の節目の年です。私は就任以来、「燕はひとつ」ということを掲げてまいりました。これは、必ずしも各地域の違いを強引に統一することを意味するものではなく、お互いの伝統や文化を認め合い、尊重し合いながら、心をひとつにし、その上で未来に向かって新しい共通の歴史を築いていくということです。
昨年私は、検討チームを設置し、若手職員と一緒に、市民みんなの心がひとつになれるもの、燕市の新たな文化として根付いていくものを考えてきました。23年度にはこれらを、燕はひとつプロジェクト事業として着手します。
具体的には、まず市内各地区単位で行われている活動やイベントをひとつにする取り組みなどへの助成を行います。
また、各地区の夏まつりなどにおいて、地区住民が相互に交流・参加しやすい仕組みの構築を目指すこととし、そのきっかけづくりの第一弾として、子どもから大人まで誰でも踊ることができる、新しいよさこいを創作いたします。
さらに、地域の歴史や文化を小学校の子どもたちに楽しく勉強してもらいながら、ふるさとへの誇りと愛着をもってもらうため、燕ジュニア検定の実施に向けた問題集作りや、保育園・幼稚園児などを対象としたつばめっ子かるた作りにも取り組みます。
加えて、難病を患い17歳の若さで亡くなった燕市の少女が書いた詩をもとにできた曲「笑顔を忘れないで」を市内の全小学校で合唱し、歌詞に込められた想いを全市民に広めるといった取り組みを進めてまいります。
以上、平成23年度の市政運営の基本方針及び主要事業について申し述べました。
地域経済は引き続き先行きが不透明な厳しい状況が続いていますが、今年、燕市は合併5周年を迎えます。また、金属洋食器が製造されてから100周年、分水おいらん道中が第70回目を迎え、大河津分水の可動堰が誕生して80年になるなど、記念すべき節目の年にあたる話題が多くあります。
私は、常に時代を切り拓き、輝き続けてきた歴史がある燕市には、難局にも敢然と立ち向かい、困難を乗り越える勇気と、危機を飛躍につなげていく力があると確信しています。
市長就任時の所信表明でも申し述べましたが、さまざまな分野で市民活動が活発に行われ、日本一輝いているまちとして全国から注目を浴びるまち。子どもたちが未来への大きな夢を抱き、郷土への誇りを持てるまちを、市議会はもちろん市民の皆さまと一緒に築いていきたいと考えております。
そのために、23年度は、燕市の新たな発展に向けた転換の年とすべく、職員と一丸となって従来の慣習や常識を打ち破り、スピード感と実行力をもって全力で市政運営に取り組んでまいります。
何とぞ、市民の皆さま並びに議会議員の皆さまの、より一層のご理解とご支援を賜りますよう心からお願い申し上げ、平成23年度の施政方針とさせていただきます。