燕市成人式が20日、予定通り行われた。東日本大震災に伴ってさまざまなイベントの自粛、中止が相次ぐなか成人式も例外ではなく、県央地域でも三条市と田上町がいずれも21日に予定した成人式の中止を早々に決めたなかでの成人式決行。鈴木力市長は、新成人の成人式実行委員に「わたしの背中を押してくれてありがとう」と感謝し、成人式の開催に踏み切る決意に鈴木市長や新成人の最大のメッセージを託した。
市内中学校卒業生を基にした成人式の対象者、男426、女422、計848人のうち、79.2%にあたる672人が出席。毎年8割前後の出席率で、昨年の80.2%と比べても大差なく、出席率には東日本大震災の影響は表れなかった。
午後2時、燕三条地場産業振興センターを会場に黙とうで始まった。開式の言葉で藤沢健一教育長は、東日本大震災で延期も検討したが、予定通りの開催を判断し、成人式実行委員が被災者を応援する気持ちのメッセージを届ける内容にプログラムを見直したことを話し、「この成人式で皆さん新成人の熱い思いが多くの方々に伝わることを願っています」と述べた。
鈴木市長は式辞で、被災者の犠牲を悔やみ、見舞い、燕市内にも200人以上が避難生活を送っていることを話した。しかし、成人式は「燕市にとって大きな行事のひとつ」で、新成人にとっても「一生に一度の晴れ舞台」。成人がこれからの社会を担う義務と責任が生じることであるなら、「日本がこの未曽有の難局に遭遇しているときだからこそ、燕市の新成人がふるさとに集合し、成人式という日の意義を一人ひとりが真剣に考え、自分たちは今、何をすべきかを話し合い、行動に移してもらう貴重な機会とした方が良いのではないか」と考えた。
実行委員も悩み抜き、「自分たちに今、何ができるかを考えるスタートの日にしたい、地域の発展や日本の復興のために、自覚をもって行動していくことを誓いたいと、わたしと同じ思いをもっていることがわかり」、被災者を見舞い、応援のエールを送る内容に変更した経緯を話し、「新成人の皆さんには、このような状況のなかで成人式が行われているという意味をしっかりと考えていただきたい」と厳しさも。
最後に「この企画、運営にご尽力をいただいた実行委員の皆さん、わたしの背中を押してくれてありがとう」と感謝と礼を述べ、「ふるさと燕に誇りをもち、それぞれの分野でご活躍されることをお祈り申し上げ、式辞といたします。皆さん、成人おめでとう!」と結んだ。
鷲尾英一郎衆院議員、桜井甚一郎県議、大岩勉市議会議長の祝辞のあと新成人代表で新潟大学1年小田翔太さん(20)=燕市三王渕・燕北中卒=と青陵短大2年金山美咲さん(20)=同市八王寺・小池中卒=が二十歳の決意を述べて閉式。
続く第2部が大震災に伴って追加したプログラム。新成人に被災者を応援するメッセージを書いてもらうはがきを送り、会場受け付けで回収。実行委員9人がステージに上がり、ひとりが2、3通ずつメッセージを読み上げた。
さらに、難病で平成15年に17歳の若さで亡くなった燕南小学校卒業の岡村可奈子さん詩に山形県のシンガーソングライターが須貝智郎さんがメロディーをつけた曲「笑顔を忘れないで」の歌を流した。笑顔や生きることの大切さを伝えるこの曲を被災者へエールを送る気持ちと重ねて燕市成人式のメッセージソングと位置づけて紹介した。
曲を覚えている鈴木市長は一緒に歌い、ステージを下りる実行委員を笑顔と握手で迎えた。最後に第3部で恒例の抽選会、学校ごとに記念撮影を行って終わった。
東日本大震災が発生したのは、11日午後。それから3日後、週明け14日の夜に成人式実行委員会を急きょ招集し、成人式開催の是非について2時間半にも及ぶ議論を行ったが結論は出ず。翌15日夜に再度、話し合った結果、プログラムを一部変更して開催する結論。その実行委員会の意志を受け、最終的に鈴木市長と藤沢教育長の判断で開催を決めた。
受け付けでは義援金の募金箱を設置して寄付を募り、入場時だけで7万8,619円の新成人の善意が寄せられた。鷲尾衆院議員が祝辞で日本の緊急地震速報の優秀さを話して間もなく、揺れを感じるほどではなかったものの、携帯電話の緊急地震速報が一斉に鳴り響いて騒然、緊張が走るシーンもあったが、それ以外は例年以上に会場は静かで、自粛の雰囲気は諭されるまでもなかった。
実行委員長を務めたのは、長岡大学2年近藤彰太さん(20)=燕市五千国・分水中卒=。鈴木市長などの理解で成人式を開催できたことを喜び、開式前に「内容の濃い、内容を変えることでふつうの式とは違うなと言われるような式に」と願い、開催には批判の声もあったが、「実際、開いてみて、みんな笑顔でやってくれて、やって良かったなと思います」と晴れやかな表情だった。
自粛ムードのなかでの成人式開催の決定に対し、燕市教育委員会にはかなりの数の批判的な電話があった。しかし延期しても関連業者などの迷惑がかかり、どちらを選んでも批判の声は免れない。そんななかで成人式を開催する意志こそが燕市が発する最大のメッセージ。
鈴木市長は間もなく市長就任1年。そのなかでも対外的な影響の大きい決断のひとつで閉式後、鈴木市長は「日本でいちばんいい成人式になったと思いますよ」とほっとした表情で、決断は確信に変わっていた。