東日本大震災で福島県南相馬市から三条市に避難している高校生たちがメンバーのバンド「KtKB」の南相馬復活祈願ミニライブが23日、三条市嵐南公民館で開かれ、メンバーは避難先で考えもしなかったライブステージを経験し、100人近くが来場して盛り上がった。
「KtKB」は「帰宅部」の子音を連ねたバンド名。高校3年生になった6人編成の同級生バンド。うち3人が三条市勤労青少年ホーム「ソレイユ三条」に避難しており、新発田市と秋田県、埼玉県に避難しているメンバーを呼び寄せ、ボーカルは代役に地元三条市の女性を立て、さらにメンバーのひとりの兄も加わり、7人編成で演奏した。
このライブをお膳立てしたのは、ミニライブで前座も務めた三線とギター「きよ里&トシ遠藤」の三条市桜木町、本間里子さん(33)。ソレイユ三条内に設置された市の出先機関の嘱託職員で、同ホームで避難生活を送るメンバーと知り合い、ライブをやりたいという声に応えて楽器や機材を借りる手配もした。
会場の嵐南公民館は、ソレイユ三条から歩いてすぐ。来場者の多くがソレイユ三条に避難している人たちで、演奏もメンバーのMCも楽しんだ。レパートリーの4曲の演奏を終わると拍手がアンコールを求める手拍子に変わり、同じ曲をもう一度、演奏した。
バンドリーダーでドラムの富岡高校3年の鈴木崇也さん(17)=小高区南町=は最後にあいさつ。「少しでも元気を与えられたかなと」、「ぼくたちは楽しんでやたんで、楽しんでいただけたでしょうか?」にもちろん会場は大きな拍手。
続けて「新潟に避難してきて里子さんとの出会いがあって、こういう機会を設けさせてもらって、人とのつながりを広げてって、こういう風にできたのをとても感謝しています」と崇也さん。「気にすんな、そんなちっちゃいところに」という里子さんに崇也さんは「自分にとっては結構、大きなものだったんで」とあらためて感謝した。
崇也さんの兄、宮城県仙台市・東北福祉大学2年の将也さん(20)はバンドの経験はないが、「小学校の教育課程でピアノを覚えたので」と急きょ、キーボードで参加。記念すべき初ステージが避難所とのみんなとのライブになった。
親せきなど16人で三条市へ避難した。家のある小高区は22日、警戒区域となり、立ち入りが法的に制限されたため、津波で家は流されなかったが、戻ることはできない。家が流された親せきもあり、「元気で明るくやってます」と暗い表情は見せない。
「地震が収まらず不安」はあるが、「そんななかでも前を向いて進んでいかなきゃならない、過去のことより前へとみんなで話してます」。
初ステージなのに「終わっても熱が冷めないっていうか、腕を上げてまたやりたい」と欲も出た。「偶然に偶然が重なり、皆さんとの出会いに感謝です。本当に良くしていただいて」。東日本大震災で失ったものは計り知れないが、避難先での忘れられない思い出を手にした。
大学も東日本大震災の影響で新学期が大型連休明けからになった。翌24日には仙台の大学の寮に向かう予定だ。
また、会場に設置した義援金箱には2万0,621円が寄せられた。