サクラ咲く燕市・大河津分水の桜並木で行われる燕市の一大名物観光行事、分水おいらん道中。ことしは第70回のメモリアルイヤーだったが、東日本大震災の影響で中止に。その節目にあわせて登場したマスコットキャラクター「分水おいらん道中PR隊」のメーンキャラクター「きららん」も出番を失ったが、代わりにツイッターに「きららん」が登場した。
アカウントは「@kiraran_tsubame」。担当者は「古風な感じ」と自己評価する、めがね萌えな感じの妙齢の女性職員。初ツイートは4月13日。分水おいらん道中の中止を告げる悲しいお知らせで始まった。
大河津分水のサクラの開花情報を伝えたり、スキー発祥100周年のゆるキャラ「レルヒさん(@TheodorVonLerch)」と北海道長万部町のゆるキャラ「まんべくん(@manbe_kun)」からんだり。そして何よりも「きららん」の特徴的なツイートが短歌だ。
4月19日
花を愛する 人だから好き
きららん♪
4月20日
だれより1番 桜をめでゐる
きららん♪
古典しか知らない人には、どう味わえばいいのか戸惑ってしまう現代短歌だ。
現代短歌がマイブームと言う彼女。今春、歌人の枡野浩一さん穂村弘さんで短歌に目覚めた。「ツイッターは140文字以内なので、限られた文字数のなかで思いを伝えるのが短歌と同じで興味深いです」と言うかと思えば、「短歌だから片思い的なのもいいかなと思って」と、つかみどころがない。想定している相手が誰なのかも謎だ。
4月28日のツイートの短歌は、前から温めていた歌で、満を持してツイートしたと言う。それが
こいのぼりがこい する5月こい
きららん♪
駄じゃれだと指摘すると、「絶対、違います!」とうそぶき、不敵な笑みを浮かべる。三条市の三線歌手、きよ里さんから返歌が届いたと喜ぶ。
越後の桜は如何にか見ゆる
きよ里
きよ里さんが燕市に避難している人の前で三線を演奏したときのことを歌っている。
我こそはという短歌の挑戦も受け付け中だ。5月9日には「きららんの短歌」でハッシュタグ「#kiratan」をつくった。コメントを引用して返信するリツイート、「RT」は現代版の「返歌」かも。
「燕市」と「短歌」から連想されるものと言えば、越後の禅僧、良寛。その良寛と心通わせた貞心尼の返歌のやり取りが知られるが、「きららん」はだれとツイッターで愛をつむぐのか。短歌の挑戦を受けることについて担当の彼女は、「それって、短歌で啖呵(たんか)?」と、けらけら笑う。
最近、立て続けに良寛が暮らした五合庵のある国上山(標高313m)を二度、登った。中腹の国上ビジターサービスセンターに車を止め、1周約1時間半の道程。すぐそばの弥彦山(同634m)を登ると帰りは車を運転のするのもおっくうになるほど疲れるが、国上山登山の帰りは「にこにこといい感じ」で、登り終えた人は「みんな良寛の気持ちになる」と山登りの愛好者が話していたと言う。
自分も国上山に登って良寛の気持ちになったということで、きららんのアイコンを良寛に変えたが、なぜかピンぼけ写真。理由は「うまく撮れなかったから」。かなりの天然でサブカルも香る彼女のツイートから目が離せない。最後にもうひとつ、5月9日のツイートはそのものずばりで次の通り。
だからは私は 短課課長よ♪
きららん♪
「分水おいらん道中PR隊」を生んだのは、燕市分水地区観光協会(田中公一会長)。キャラクターデザインを業者に発注して完成した。
おいらんの「きららん」のほかに、おいらん道中の傘持ち「かさもちーたー」、幇間(ほうかん)「ほうかんがるー」の3人(匹)セット。それぞれ駄じゃれで動物のチーター、カンガルーにかけている。
この「分水おいらん道中PR隊」をおいらん道中のパンフレットのデザインにも採用し、「きららんオリジナルハンカチ手ぬぐい」も作成したが、おいらん道中の中止で「分水おいらん道中PR隊」の大々的なお披露目は1年後に先送りとなった。
しかし、せっかく誕生したキャラクターを眠らせておくのはもったいない。おいらん道中に限らず、燕市のさまざまな観光情報をツイッターから発信してゆこうと、同協会と燕市商工振興課観光振興室がツイッター上に「きららん」を生み出した。
燕市では初めての公式ツイッターアカウント。今回の震災ではツイッターの有用性が実証されており、観光から防災まで、ツイッター利用の拡大が期待される。