燕市産業史料館では、5月13日から29日まで「追悼 捧武写真展『田園の微笑』」を開き、昨年12月20日に77歳で急逝した燕市のアマチュア写真家、捧武さんが全国の注目を集めた写真集『田園の微笑』に収録した作品のネガを捧さんが自分の手で印画紙に焼いたモノクロ作品を展示している。
『田園の微笑』は1992年発刊した捧さんの写真集。翌93年にアマチュア写真家にとって金字塔のひとつ、第2回林忠彦賞を受賞し、捧さんを全国レベルの作家に押し上げた。発刊に伴って開かれた作品展のために当時、捧さんが自宅アトリエの暗室で焼いた写真26点を展示している。
作品は記録的価値も高い昭和30年代の地元の風景。夢中でシャッターを押した当時はありふれた農家や子どもたちのようすを撮影している。初対面の人でもすぐに心を開いてしまうのが捧さんの人柄こそが捧さんの作品の魅力。レンズを見る人たちの視線や表情はまさに捧さんに向けられたもので、捧さんは亡くなっても写真の前に立つだけで、だれもが捧さんに向けられた当時の人たちの視線や笑顔を体験できる。
毎年5月は館蔵品展を開いているが、捧さんが急逝したことで急きょ、追悼展の開催に差し替えた。展示作品は、捧さんが市内5人の写真愛好者とつくった写真グループ「PHOTO風音(かのん)」の会員、田中未来さん(51)=燕市桜町=と、文章の作成などで『田園の微笑』発刊の立役者となった捧げさんの旧友、石黒克裕さん(71)=燕市中央通1=の2人が大型連休中、2時間がかりで捧さん宅のガレージ2階に保管されていた写真から『田園の微笑』を探してそろえた。
段ボール箱に入った写真を見つける作業に田中さんは、「ものすげー懐かしくて充実した1日だったね。涙が出てきた」。思い返せば田中さんは、捧さんと同じ写真の会に8つも所属したという。
「捧さんは、色が浅い部分を現像液のなかで、いい子、いい子、出てこい、出てこいと言ってさすると、不思議と色が出てくる。さすると少しでも温度が上がって色が出る。それを捧さんは理屈よりも実践で知っていた」と、きのうことのように捧さんの思い出を話し、懐かしんでいる。
15日と22日はそれぞれ午後2時から作品解説会も開く。 開館時間は午前9時半から午後4時半まで。入館料はおとな300円、子ども100で、土、日曜と祝日は、燕市内の小中学生と付き添いの保護者 1人が無料。問い合わせは同史料館(電話:0256-63-7666、メール:sangyoshiryokan@city.tsubame.niigata.jp)へ。