燕のご当地映画『アノソラノアオ』が24日にクランクインするのを前に21日、制作発表が行われ、三条市出身の水野久美さんや新発田市出身の三田村邦彦さんをはじめ、新潟県にゆかりのある俳優のほか、地元オーディションキャストも参加した。
午後1時から燕市吉田産業会館で行われ、俳優は三田村さんの三男の中山麻聖さん、新潟市西区出身の相沢まきさんと三上真史さん、先の地元オーディションでヒロインに抜てきされた燕市分水桜町の納谷美咲さん。ほかに、地元オーディションで選ばれた燕市議の長井由喜雄さんら10人余りも同席した。
中山さんは主人公の田上陽介役、父の大介役は三田村さんで、親子役での親子初共演。母ゆかり役に相沢さん、ラーメン店のおかみの深沢靖子役に水野さん、陽介の同級生の渡辺嵐役に三上さん、ヒロインの宇佐美那枷役に納谷さん。出席者以外にも糸魚川市出身の永井大さん、村松利史さん、村上市出身の原幹恵さんなど新潟にゆかりの有名俳優、タレントが名を連ねている。撮影は5月24日から6月10日まで行われる。
プロデューサーの映像作品を企画制作するアイエス・フィールド=東京都渋谷区渋谷3=代表取締役の島田豪さんは、これまでの経緯を説明し、「新潟県出身というキャストで固めて、日本で初めての本物のご当地映画をつくろうということで我々、頑張っております」と述べ、さらなる支援に期待した。
地元から映画制作を支援しようと発足した「はばたけ燕実行委員会」の委員長の細川哲夫燕商工会議所副会頭をはじめ、鈴木力燕市長、山崎悦次会頭、泉谷善二吉田商工会会長があいさつしたあと、主演者が順にあいさつした。
中山さんは、重要な役に喜びと期待を感じるとともに、初めて父との共演に「実際の親子を関係を芝居に生かせたらと思っているんですが、実際はどうなるかちょっと、現場に立ってみないとわからないので」と笑わせ、「ナシモト監督率いる多くのキャスト、スタッフの皆さまとすばらしい作品をつくっていこうと思ってます」。
相沢さんは、バラエティーで月2回ほど新潟で仕事をしているが、今回は「お芝居の仕事でかかわれるっていうのが本当にうれしくて」。一昨年から新潟県の観光特使を務めており、「この映画を全力で取り組んで宣伝していきたい」と頼もしい。
三上さんは、高校卒業まで新潟で育ち、ふるさとを愛しており、「新潟で仕事がしたいなって、芝居がしたいなって思ってたときに、このお話をいただいて本当にうれしく思いました。全力で頑張って、そして盛り上げていきたい」。
納谷さんは、「地元をPRできる映画ということで今回、選ばれてうれしい気持ちと不安な気持ちといろんな気持ちでいっぱいです。燕市のいいところをいっぱい見せられたらいいなと思っております」。
水野さんは、芸歴52年で「いまだにまだ頑張っております」。「やっと新潟の言葉が言えるせりふなんでもう、うれしくて、うれしくて。それにラーメン屋のおばあちゃんで、とっても、こうご期待」。
三田村さんは、相沢さんを指して「新潟県の方も最近は背が高くて8頭身の方が」、水野さんを指して「こちらを見ますと使用前…」と笑わせ、新幹線で田中真紀子元外相、谷垣禎一自民党総裁と同じ車両だったエピソードも紹介。「駆け引きのない、純粋なままの子どもがおとなになってもらいたい」と話し、中山さんの方を向いて「頼みますよ」。すべて新潟が舞台の撮影は初めてで「アウェーじゃなくてホームに戻ってきたという感じでぜひ頑張りたいと思います」。
地元キャストを代表して長井さんは、「ここで初めて会う人も多いですが、小さな縁がこの燕市、燕も燕(えん)と書きますけれども、その縁に結びついて最後は日本全国に、そしてさらに大きくその縁が広がっていったいいなと思っております」。
ナシモト監督は、ご当地映画の新潟弁に違和感があり、標準語に近い若者とのグラデーションも表現し、ここに住んでいる人たちの話であることにこだわりたいと話した。
2004年に三条市が被災地となった7・13水害が物語全体に大きな影響を与えていくが、7・13水害の物語ではなく、時代設定は7・13水害から10年後。それくらいたって表れる心に負った傷や生き方に対する悩みがあり、東日本大震災の発生に伴って「これから多分、日本全国でそういう人がもっと増えていくんですよ」。
「もっといろんな大変なことに、ここでも頑張って戦っているんだ、ここに立ってふつうにやれる、自分がやれることをやっているんだということを発信できる映画になれば」。それが東日本大震災からちょうど1年の来年3月11日に上映できることを願った。
ラストシーンの「大河津分水のあるラインの見える場所」を「自分はちっぽけだけども、こんなにやって、なんかここで立ってていいんだなーと思ってもらえるラスト」にし、県外や世界中の人が「あそこに行ってみたいと言ってもらえるような映画にしようと思ってます」と映画に託す思いを話した。
報道陣からの質問で、地元での映画制作について水野さんは「インチキの新潟弁みたいのばっかりお聞きしてたので、ここぞとばかりに発揮したい」、三田村さんはプロ野球やサッカーが生まれているが、地元の出資、協力で地元の映画ができることは「ちょっと信じられないくらい実はうれしい」。「これで終わらずに1作目、2作目と欲を言えば続けていただきたい」、そのために「この映画が成功しないと」と願った。
初の親子共演について三田村さんは、「本当に早かったんでちょっとびっくりしてますね…ダメ出されないように頑張ります」。中山さんは芸能界に7、8年で父と共演すると思わず、「監督や父と相談してシーンをつくっていこうと思っています」。「どっかでうれしいような、どっかでやなような、だから、(出演依頼の)結論を出すまでにはちょっとかかりました」と話していた。
制作発表のあと、燕・戸隠神社で制作祈願、燕三条ワシントンホテルで懇親会を行った。戸隠神社には出演者を一目見ようと100人近い市民が集まり、色紙とサインペンを持つ用意周到な人も。懇親会も和やかな雰囲気で、鈴木市長は三田村さんに時代劇『必殺仕事人』からのファンであることを告白し、話を弾ませていた。