書アートとヨーロッパ宮廷音楽の出会い「書と音のとびら」が1日、三条東公民館で開かれ、40人近くが来場して書とフルート、チェンバロの音楽というユニークなコラボレーションに耳を傾けた。
田上町の書アーティスト、あおのよしこさんと、三条市のフルート奏者、松井美瑞さん、同市のチェンバロ奏者、八百板正己さんによる共演。あおのさんはこれまでも生演奏とともに、書く字句もその場で決めて筆を走らせるパフォーマンスに数多く取り組んでいる。
あおのさんは、娘を松井さんのフルート教室に通わせたこともあり、2人は古い付き合い。そんな自然な流れで今回の共演を初めて企画。さらに松井さんが良く共演している八百板さんを誘い、3人によるコラボレーションが実現した。
パフォーマンスはたっぷり2時間に及んだ。八百板さんは、調度品のような装飾が施されたチェンバロに向かい、ピアノよりも小さく繊細な音を奏で、その上に松井さんが透き通るような笛の旋律を重ねてバロック音楽を蘇らせた。
そのサウンドにインスピレーションを受けて、あおのさんはひらめいた字句のイメージを思いのままに紙に写した。三条市のアロマコーディネーター、安達佐知子さんとのコラボで、アロマをブレンドした墨を使った書、香り文字を使った。
イエス生誕のときに東方の3賢人が贈り物にしたといわれている香料樹皮、フランキンセンスのアロマが含ませた墨を使うと、部屋中に高貴な香が満た。バロック音楽は、教会との結びつきが深く、厳かな雰囲気を視覚と聴覚、加えて嗅覚にも訴えた。
来場者には書の愛好者もいれば、音楽の愛好者もいる。どちらにとっても、もう一方のジャンルとの組み合わせは初めての体験で、ふだんは芸術鑑賞にあまり使わない感覚器官でアートの刺激を受ける新鮮な感覚を味わい、2時間はあっと言う間だった。
松井さんは、「演奏している間に文字を書くということイメージがわかず」不安もあったが、逆に八百板さんは客を退屈させないトークの盛り上げなど客のもてなしから開放されて「音楽にだけ専念していればいいっていうのが初めてのことでした」と喜ぶ。
演奏中は客の目が書のパフォーマンスにだけ向いているので、「こりゃいいやと思いました」と松井さん。八百板さんも「ふだんと違って休むことができました」とリラックスした演奏を披露できたことを喜んだ。
また、松井さんは「音楽が書に吸い込まれるような感覚」にも驚いた。あおのさんも「お客さんエネルギーも一緒に吸い込まれるような形で作品になっていきます」とライブでのインプロビゼーションならではの感覚に味をしめていた。