燕市八王寺、真宗仏光寺派安了寺にある県指定の天然記念物「八王寺の白藤」の保存に務める八王寺大白藤保勝会(大原大八会長)は、17日午後1時過ぎから白藤のマメもぎを行い、春の花を終わって鈴なりのマメが詰まった大きなさやが重みで枝を傷めないようにもぎ、あわせてせん定も行った。
春先にフジ棚のタケを入れ替えるなどの補修と、夏のマメもぎが毎年恒例。主に地元の八王寺や小池に住む約200人もの会員があるが、フジの手入れを行うの75歳以上の高齢の会員が中心で手が足りないため若手にも参加を呼びかけ、今回は例年の2倍の15人が参加した。もっとも若手といえ60歳前後の「ベテラン」だ。
大原会長はあいにく腰を痛めて参加できず、監事の清水充治さん(75)=八王寺=が陣頭指揮をとり、寺の松島孝夫住職も参加して作業した。
フジ棚は高さ2.5メートルほどあるため、脚立にのぼったり、脚立に渡した板に上がり、上を向いての作業。ケムシ「八幡太郎」に刺されては大変なので、前の週には殺虫剤の散布作業も。虫や日差しを防ぐために長袖で、マメは手で引っ張ったり、せん定ばさみで切ったりしてもいだ。
マメは長さ20センチほどあり、さやのなかに実が納まっている。マメもぎというとエダマメを連想するが、会員によると昔はフジのマメをいって食べたと言う。あぶらっぽいがうまかったという人もいれば、下剤になったという人もいる。
この日も頭がぼーっとするような猛暑が続き、やかましいくらいのセミの大合唱。会員は汗びっしょりで、熱中症にならないように休憩をとって無理せずに作業を進めた。フジ棚は東西約30メートル、南北約20メートルにも広がる。ひとりでは気が遠くなるような作業も2時間であっと言う間に終了し、作業後のお楽しみの懇親会に移った。
前住職の妻、綾子さん(74)は玄関から作業を見守っていた。同寺に嫁いだ翌年の昭和33年(1958)、樹齢は300年の「八王寺の白藤」として県天然記念物に指定されたが、それから50年余りたち、「樹齢350年に訂正しないとだめら」と笑う。
戦前は今よりも広く道路側にフジ棚が伸び、フジの花が咲くと、芸者の手踊りがあったり、三条の「たいよう」?や燕のカフェが境内に店を出したことを覚えている。
木が弱ってきたため、数年前に県や市の補助金、会の負担金を充てて土中の数カ所に肥料を埋める工事を行った。今ではすっかり元気を回復し、落ち葉の片付けをする綾子さんは「あの葉っぱばっかしゃ、どれほど捨てたやら」と半ばあきれながらも、戦前と変わらない樹勢を取り戻した「八王寺の白藤」を見上げて目を細めていた。