平成22年度三条市成人式が「海の日」の18日、燕三条地場産業振興センターで行われた。東日本大震災の発生で恒例にしてきた「春分の日」の3月21日から4カ月延期して初めて夏の成人式となった。出席率は52.9%と大きく前年を下回ったが、代わりに厳粛で家族的な雰囲気のなかで1,106人の新成人の門出を祝った。
東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげて開式。国歌斉唱、第二中学校卒業の小林俊也さんと羽生恵里菜さんのリードで市民憲章唱和のあと、国定勇人市長が式辞。国定市長は、新成人が生きてきた20年間はバブル崩壊後の暗いニュースが続き、「斜め横から見ながら生きていく、真っ正面から物事をとらえて生きていかない方がいい、そういうような生き方を皆さん一人ひとりに植えつけてしまったのではないかというふうに反省をしております」と、先輩としてわびた。
そしてことしの東日本大震災。新成人の門出に「ひとつの誓いをたてていただきたい」と求めた。進む方向は自由でも「それぞれの道を歩むという覚悟を決めた以上は、ほかの人よりも一歩でも二歩でも高い階段を目指して、上を目指して正々堂々と生きていっていただきたい」。
そのためには、「ほかの人よりも経験を積むということは多くの友人をつくり、ほかの友人の人たちの価値判断を自分のものにし、あるいはたくさんの本を読んでそれぞれの著者の考え方を自分のものにし、そしてそれを踏まえて実践をしていく。もうそれ以外ない」との持論を示し、三条市発展への貢献にも期待した。
下村喜作市議会議長の祝辞、祝電披露のあと、下田中学校卒業の熊倉茂樹さんと増井遙さんが成人のことばを述べた。2人は東日本大震災の被災者を励まし、被災地の一日も早い復興を願ったあと、「おとなになるということは、すべてのことが自由にできるようになる代わりに、すべての言動に責任をもちながら生活していかなければなりません。社会の一員として節度ある行動を心掛けていきます」。
さらに「今日に至るまで見守ってくれた地域の方々やいちばん近くでたくさんの思いやりと愛情を注いでくれた親に受けてきた以上のものを返していきたいと思います。そして社会を動かすひとりとして、より良い未来をわたしたちの力で築きあげていきます」と述べ、閉式。引き続きてアトラクションの成人式祝い抽選会、記念写真撮影が行われた。
ことしの三条市成人式の対象者は、平成3年4月1日までの1年間に生まれた三条市に住民票のある人と電話で出席を申し込んだ人を含む1,106人。出席は男329人、女257人の計586人で出席率は53.0%にとどまり、昨年の72.7%を20ポイント近くも下回った。
昨年の男406人、女421人と比べると女性の減少が著しく、女性の出席は昨年の61.0%。日程変更で都合が悪くなったほか、やはり暑さで振り袖を着られないからと二の足を踏んだ女性が多かったようだ。また、対象者848人だったことしの燕市成人式は出席672人で、それも下回った。
この日の三条は最高気温33.8度の相変わらずの酷暑。ステージから会場を眺めてもさすがに空席が目立ったが、出席した女性のほとんど振り袖だった。夏の盛りの猛暑の成人式だったが、実際はエアコンの効いた会場を車でドア・ツー・ドアで移動するため、猛暑を体感する時間は短く、閉式後は日中の暑さのピークも和らぎ、外へ出て話し込む新成人も目立った。
とはいえ、女性には浴衣が目立ち、3月の成人式では見られない肩を出したドレスを着る人も。男性はスーツだが上着を着ない人も多く、例年通りのはかまのほか、中学校の体操着や漫画『ドラゴンボール』の亀仙人のコスプレもお目見えした。国定市長式辞と成人のことばの全文は次の通り。
国定勇人三条市長の式辞
あらためまして皆さん、こんにちは。ありがとうございます。三条市長の国定でございます。本日、ここに三条市成人式が挙行されるにあたりまして一言、言葉を申し述べたいと思います。
まずもってことし新成人を迎えられました皆さま、心からお祝いを申し上げたいと思います。皆さま方の成人の門出を心からお祝い申し上げたいと思っておりますが、ここに皆さんに人生の先輩としてひとつ、お詫びを申し上げるところから入っていかなければいけないと思っております。
それは、3月11日に発生をいたしました東日本大震災、それによって従来、予定されていました成人式の日取りがこの7月18日の「海の日」に移ったということではありません。皆さんが、これまで生まれてから20年間たって今、新成人を皆さんは迎えられたわけでありますけれども、これまでの20年間、わたしたち先輩は一生懸命、この国の発展のために努力をし、さまざまな形で実践を積み重ねてきたと思っておりますけれども、残念ながら皆さんが生まれ育った時代というのは、バブルが崩壊してからなにひとついいニュースがなく、どちらかと言うと暗いニュースばかり。社会の有り様にいたっては、日本人の誇りというものをもつ瞬間ということがほとんどなく、皆さんが絶えず、見聞きをしたニュースは足の引っ張り合いであったり、批判のし合いであったりというなかで、どうも斜め横から見ながら生きていく、真っ正面から物事をとらえて生きていかない方がいい、そういうような生き方を皆さん一人ひとりに植えつけてしまったのではないかというふうに反省をしております。
ただ、我が国はもう待ったなしの時代であります。3月11日に発生をいたしました東日本大震災、ここから我が国が総力を挙げて立ち上がっていくためには、やはり一人ひとりの皆さんが気持ちを前に大きくもって一歩一歩、前進をしていかなければいけないと思っております。ですからどうか、この新成人の門出にあたり、皆さんにはひとつの誓いをたてていただきたいと思っております。
皆さんはもうすでにそれぞれの確固たる道を歩み始めた方もいらっしゃれば、これから数年の間で長い人生の軸を決めていこうとされる方もいようかと思います。それぞれの分野に進んでいくことはそれぞれの方々の評価、価値判断ですから、それを批判することは一切ありません。ただし、それぞれの道を歩むという覚悟を決めた以上は、ほかの人よりも一歩でも二歩でも高い階段を目指して、上を目指して正々堂々と生きていっていただきたいと思います。
ほかの人に勝つということはどういうことか。社会人の生活のなかで人よりも勝る、人にも打ち勝って一歩でも二歩でも高みに上がっていくということは、それよりも前にさまざまな経験を積み重ねるということに尽きると思っています。
わたしたち一人ひとりにもたされている時間は変わりはありません。1日24時間しかない、1年には365日しかないわけです。ですから、そのなかでほかの人よりも経験を積むということは多くの友人をつくり、ほかの友人の人たちの価値判断を自分のものにし、あるいはたくさんの本を読んでそれぞれの著者の考え方を自分のものにし、そしてそれを踏まえて実践をしていく。もうそれ以外ないと思っております。
どうか皆さんが、きょうわたしが申し上げた言葉の一端でもこれから先10年間は少なくとも覚えていただき、一歩一歩、実践をしていただき、それによって最終的には三条市発展のために貢献をしていただければ望外の喜びでございます。
最後になりますが、あらためて皆さま方の輝かしい前途を心からお祝いを申し上げまして長くなりましたけれども、あいさつとさせていただきたいと思います。本日は誠におめでとうございました。
成人のことば
成人のことば。本日、わたしたちのためにこのような素晴らしい成人式を挙行していただき、成人を代表して心より感謝申し上げます。
先ほどは三条市長、国定勇人さまをはじめ、ご来賓の皆さまより力強い励ましとお祝いの言葉をいただき、本当にありがとうございました。
成人となった喜びとともに、おとなとしての自覚をもつ大切さを強く感じ、身の引き締まる思いがいたしました。
3月11日に発生した東日本大震災から4カ月が過ぎました。被災地ではいまだに多くの方々が避難所生活を余義なくされ、三条市でも多くの方を受け入れています。余震も落ち着き、復興作業も本格化されるなかで、わたしたち一人ひとりが被災された方たちに何ができるかを考え、行動し、1日でも早い復興に努めていかなければならないと感じています。
三条市の新成人全員で何ができるかを考え、受け付けにて募金活動を行いました。本日の成人式をきっかけに三条市だけではなく、わたしたちの日本が一日でも早く元気になるよう行動してまいります。なお、地震で被災された方たちに心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。
さて、成人になったことでおとなとして認められ、投票権を得て政治に参加していくことになります。より良い社会環境の形成に向けてわたしたちはその投票権に自らの意思を込めて行使していきたいと思います。また、おとなになるということは、すべてのことが自由にできるようになるかわりに、すべての言動に責任をもちながら生活していかなければなりません。社会の一員として節度ある行動を心掛けていきます。
また、自分自身だけでなく、他人を思いやる気持ちをもち、今日に至るまで見守ってくれた地域の方々やいちばん近くでたくさんの思いやりと愛情を注いでくれた親に受けてきた以上のものを返していきたいと思います。そして社会を動かすひとりとして、より良い未来をわたしたちの力で築きあげていきます。
今年度の成人式のスローガン「三条に参上!新成人 三条盛り上げよーれー」には、三条から離れた人も本日のために三条に集結してみんなが成人式を迎えられた喜びをともにわかち合いたいという思いが込められています。また、本日をきっかけにこれからの三条を新成人みんなで盛り上げていきたいと思います。
最後にわたしたちは、この三条市に生まれたことに誇りをもち、皆さまの期待に応えられるよう、社会に貢献することを誓い成人のことばとさせていただきます。