三条市高安寺、諏訪田製作所=小林知行社長=では今夏、電力使用のピークカットへの協力として製造部の稼働を2時間早め、早朝6時から午後3時までの「SUWADAサマータイム」に取り組んでいる。
サマータイムの実施は、7月25日から8月26日までの1カ月。使用電力の大きい製造設備の稼働時間を前倒ししているもので、通常は午前8時から午後5時の操業時間を、製造部は午前6時から午後3時と2時間繰り上げ。また、営業部は2時間繰り下げとし、一般の人も買い物ができる同社ショールームは午後7時までのオープンとしている。
同社はネイルニッパーなどで世界的なブランドとして地歩を固めつつある。4月にロンドンに支店をオープンするなど、ヨーロッパでの取引も古くからあることから、サマータイムの導入については毎年のように話はでていたが、実施はこの夏が初めて。先の東日本大震災直後の計画停電は、実施予定とだった2日とも午前中を休業にして対応した。製造業にとって停電はなんとしても避けなければならず、電力不足解消と大規模停電回避のため今回のピークシフトへの協力を実践している。
ピークシフトが目的のサマータイム導入だが、節電効果もある。朝6時始業の段階では冷房は入れなくても大丈夫。サマータイム期間は残業もなしとし、午後3時に終了する製造部は夕方の照明代の節約にもなっているようだと総務部の小林加奈子さん。ただ、昨夏は長引く不況の影響で生産調整を行っていたこともあり、電力使用量の数字上では、昨夏との比較では大きな減少はみられないところは残念と言う。
本社工場の社員40人がサマータイム導入で生活時間の変化に対応しており、小林さん自身も朝は2時間前倒しの午前4時起床。「東日本大震災の被災地の様子を見ると、自分たちもできることを何かしないととの思いが原動力にもなっている」とも話した。また、夜はふだんより早く寝るようになったと言う。早い時間に眠れない人や早起きの苦手な人は大変だと思うが、朝の強い人は「ずっと続けてもらってもいい」と言う人もいる。
出勤時の道路の混雑はなく、仕事帰りにゆっくりと買い物ができたり、余裕をもって医者に行ける。長岡花火を楽しめたという人や夏休みの子どもと遊ぶ時間ができたというお父さんもいる。
また、取引先に影響はなく、朝6時から午後7時までと、これまでより4時間も長く開いていることで、電話対応などができる時間は長くなった。サマータイムの取り組みを知った青森県のユーザーが、午前6時ころ買い物に訪れたこともあった。
同社では、サマータイム期間の終了後に、社員などに取り組みの結果や感想などを聞いてみたいとしているが、今秋、いつでもだれでも工場見学ができる「オープンファクトリー」化を実施し、一般の受け入れに対応することから、来夏のサマータイム実施は難しいと話す。電力の供給不足問題の早い解決に期待している。