弥彦観光旅館組合は28日夜、午後8時から鬼婆の伝説にゆかりの県指定天然記念物「弥彦の婆々スギ」を保存する宝光院=弥彦村弥彦=で初めて「妖怪の集い」を開き、夜の本堂で弥彦周辺に残る妖怪の伝説に耳を傾けてもらった。
断らなければならないほど大勢の参加申し込みがあり、親子など約40人が参加して会場の本堂はいっぱいになった。語り手は新潟妖怪研究所の高橋郁丸さん。新潟県民俗学会理事で、新潟県内の民俗や郷土史について執筆、講演をし、昨年から新潟妖怪研究所として活動。BSNラジオ「ふるさと散歩」金曜日の原稿を担当している。
高橋さんは、弥彦山とその南北に峰を連ねる国上山と角田山、鵺(ぬえ)や酒呑童子(しゅてんどうじ)の伝説を紹介。弥彦山は、彼岸の中日にちょうど山頂に沈むとそこに阿弥陀如来(あみだにょらい)が姿を現すとされ、信仰を集めた。
そして本題の「弥彦の婆々スギ」。伝説は900年以上前の承暦3年(1079)にさかのぼり、弥三郎の母、ヤサブロバサがうらみから悪行の限りをつくし、「弥彦の鬼婆」と恐れられた。典海大僧正が大杉の根元に横たわっていた老婆を「妙多羅天女」の称号を与えて改心させた後は、逆に子どもの守護に尽くした。
村人はこの大杉を「婆々杉」と呼ぶようになり、同寺は妙多羅天女の像も安置する。高橋さんは「人間の側から責めたり手出しをしたりしなければ悪さはしない」、「酒呑童子も約束を破ったことはない。ヤサブロウバサもわたしたちを守ってくれる天女さまになった」と妖怪は必要以上に恐れる必要はなく、見方を変えれば愛すべき存在でもある妖怪のありようを話した。
この後、同寺から100メートル余り奥へ入ったところに立つ「弥彦の婆々スギ」の所へ行って見学した。外は真っ暗で、弥彦観光協会街づくり部会があかりを並べて通路を示し、参加者はペットボトルで作ったちょうちんを手に向かった。
「弥彦の婆々スギ」は樹齢1,000年と言われ、樹高40メートル、幹回り7メートルにもなる巨木で、ほんのりと明りに照らされた威容は神秘的。主催者は、映画『呪怨』に登場する白塗りの少年のような扮装を仕掛けておくという演出もあり、いろいろな面から妖怪話を楽しんだ。
また、高橋さんは10月16日午後1時から道の駅国上で開かれる新潟お笑集団NAMARA・高橋なんぐさんとのトークショー「酒呑童子は何者か?」にも出演する。