燕市立図書館で9月16日から10月2日まで宮西達也絵本原画展が開かれるのを前に9日夜、燕市児童研修館「こどもの森」で絵本作家、宮西達也さん(54)による講演会が「にゃーごのやさしさ・ティラノのおもいやり」をテーマに開かれ、約200人が来場する大入りだった。
宮西さんは人形美術を手掛けた後、イラストレーター、そして絵本作家に転身。『にゃーご』(鈴木出版)や『おまえうまそうだな』(ポプラ社)を代表作に数多くの絵本を生み出し、『おまえうまそうだな』は昨年秋に映画化、全国ロードショー公開された。昨年秋にはテレビ朝日の黒柳徹子さんの冠番組『徹子の部屋』に出演している。
宮西さんはすらっとしたスタイルで、めがねにあごひげ、ボタンダウンシャツにチノパンで袖まくり。大きな身ぶり手ぶりでエネルギッシュな話す姿はとても50代には見えない若々しさだった。
絵本作家という机に向かって寡黙に作業している姿を想像するが、宮西さんは講演も数多くこなしているだけに、しゃべりもプロで、つかみもばっちり。今月は中国へも講演へ行くことになっている。
絵本の読み聞かせをしたり、ときにはキャラクターの人形を使って子どもたちを楽しませ、親に語りかけては子どもが飽きてきそうになったら再び読み聞かせというパターンを繰り返した。『まわるまわる』の読み聞かせでは、「回る、回る、何が回る?」と絵本の絵を指して子どもたちから答えてもらう、いわば絵本のコール&レスポンスで子どもたちを引きつけた。
もちろん『にゃーご』や『おまえうまそうだな』の代表作の読み聞かせも。『はらぺこおおかみとぶたのまち』では、子どもから「それ、持ってる!」の大きな声が上がり、宮西さんもにっこりだった。
その一方で、「お母さんは1ページだいたい0.8秒で読む。わたしは一晩かけて描いたんですよ。よく見て、皆さんの感性で読み取って読んでみてください」と絵に込めた思いをくみとってほしいと求めた。
さらに、「1日にひとつでも肯定的な言葉を増やし、否定的な言葉を減らしてください」、「子どもを変えようと言う人がいますが、子どもは変わりません」、「子どもは昔から変わってません。変わったのはおとなです」と絵本から子育てや教育、親子の関係などに対する持論へも話を展開させた。
また、いったん講演を終わってから、どうしてももうひとつ話したいと、8月初めに東日本大震災の被災地へ行った話をした。以前に講演をした岩手県大船渡市の学校が震災で避難所になっており、再び講演をしてほしいという要望を受けて現地へ向かった。
講演で子どもたちは笑顔にあふれたが、講演が終わると目の前で津波に流されていった家族を思い出して泣き出す子どもや戻す子どももいた。宮西さんは込み上げる思いをこらえ、「どうぞ、行ける人は行ってください」と被災状況を自分の目で確認してほしいと求め、「少しでも子どもたちの心のすき間を埋めてほしい」と願った。
講演後はサイン会で、宮西さんの前には行列。宮西さんは1分とかけずにあっと言う間に絵本のキャラクターと一緒にサインを書き、「ティラノ、描いてもらっちゃった!」と子ども以上にるんるんでご機嫌なお母さんもいた。