燕署(五十嵐喜一署長)は21日、燕市吉田上町、第四銀行吉田支店(中村肇支店長)でガソリンを使った強盗訓練を行い、消火作業や鑑識の参加も含めて総合的に訓練した。
警察が模擬犯人となってガソリンに見立てた水の入ったペットボトルを持って店内に侵入。ガソリンに火を着けると行員を脅迫して現金を奪い、ロビーに火を放って逃走するが、通報で駆けつけた警察官に逮捕されるという想定。行員が任務分担に従って的確に対応できるか、さらに模擬消火や同署鑑識係員による現場の証拠保全の説明も行った。
帽子にマスクを着けた模擬犯人が「おい、動くな、こらー!」と怒鳴り声を上げて店内に入ると、窓口の女性行員は訓練と身構えていても想像以上の声の大きさに、思わずいすから腰を浮かせて驚いた。
その後は模擬犯人に小額紙幣を先に出し、奥から持ち出した紙幣も床に投げ捨てるなど、マニュアル通りに時間を稼ぐ一方、防犯責任者、通報係、観察係と任務分担に沿って計画通りに対応した。
鑑識係員は、犯人が動いた場所には足跡やDNAが採取できる可能性があるため、現場の証拠保全のために入らないように求め、実際に鑑識は歩行板を敷いてその上を歩き、靴にもカバーをつけて自分の足跡が残らないようにしていることも紹介し、協力を求めた。
訓練後の同書による講評では、前週に模擬犯人役が正体を隠して来店したところ、行員から声をかけられ、模擬犯人であることを明かしたことを高く評価した。強盗は現金を奪うための方法や逃走の確認のために必ず下見をするため、「ちょっとした不審なお客さんには積極的に声をかけるように」と求めた。
訓練の感想について行員は、「驚くと何も声が出なかった」、「お客さんにもう少し気配りできたらもっと安全かなと」、「全然、周りが見えなかった」と、机上では想像することも難しいさまざまな気づきを得ていた。
同支店では定期的に強盗訓練を行っているが、燕署の協力を得ての訓練は多くない。強盗訓練は拳銃や刃物を凶器にすることが多いが、マンネリにならないよう形を変えてと今回はガソリン使用を想定。また、総合的な訓練をと鑑識係員が参加したのも珍しい。
昨年、全国で発生した金融機関を対象とした強盗事件は、銀行4件、郵便局58件、農漁協2件、信金など6件の計70件でうち57件が検挙されている。県内での発生は0件だった。
また、ガソリンなどを使用した事件の発生は、全国で平成18年26件、19年18件、20年11件、21年10件、22年6件と減少傾向。平成18年から22年までに実際に火をつける事件は9件あった。