日本金属ハウスウェア工業組合(池田弘理事長)は28、29の2日間、燕市・燕三条ワシントンホテルで初めて「調理器具及び食器展示特別商談会」を開いており、レストランチェーンやホテル、調理師専門学校のシェフやオーナー、料理関係のメディアなどから100人近くが参加して地元のハウスウエアやカトラリーの品質を直に手に取って確かめてもらっている。
同組合は燕市内を中心に県外の13社を含む55社が加盟するほか、賛助会員が11社ある。商談会にはうち18社がブースを設置して自社製品を展示。さらに開会式、講演、試食会を行った。
開会式で池田理事長は「このものづくりの町を知ってもらうためには、この町に食に関する方々、料理を実際に作っておられる方々、あるいは流通にかかわっておられる方々に、この町に来ていただいて、この町を肌で感じていただいて、この町の良さを見ていただいて」、メーカーの製品を手に取り、メーカーの思いを聞いてもらい、燕に頼めば何でもできる、燕の製品は高いけれどもどこかが違う、機能が違うことなどを「インプット」してもらいたいと願った。
鈴木力燕市長は、燕の製品の品質の高さをプロの目で確かめほしい、メーカーにはこの商談会で聞いた声を商品開発に生かしてほしいと「マーケット・イン」への活用を求め、さらに燕市でも金属洋食器製造100周年記念事業に業界とともに取り組んでいることをアピールした。
この後の講演では、料理新聞社=東京都新宿区=の代表取締役で生活料理研究家、農政ジャーナリストの日出山みなみさんが「料理もネオクラシック〜これからの調理器具と食器のコンセプト」をテーマに話した。日出山さんは間もなく新潟をテーマに燕三条地域でも取材した著書を出版する。
さらに中華精進料理「凛林」=神奈川県鎌倉市=の主人、りんくんびさんが産地調理器具を使ったチャーハンなどの調理実演、地元カトラリーなどを使った試食会も開いた。2日目29日は商談会のほか、ステンレス製の器物メーカー、三宝産業=燕市小池=で企業視察を行う。
この商談会は、県の地域産業需要創出緊急支援事業の採択を受けて初めて開いている。3月に開く予定だったが、東日本大震災の発生で半年後に延期した。
同事業は、急激な円高で受注減や価格引き下げの影響を受けている小規模事業者など、地場の中小企業の受注確保に向けて商工団体などが提案する取り組みを支援するもの。
地元のハウスウエアメーカーは円高で大きな影響を受けている。円高というと輸出への影響と思われがちだが、現実には輸入品の値下がりの影響がはるかに大きい。というのも、ハウスウエアメーカーにとって輸出は出荷額全体の1割ていどに過ぎず、輸出への影響は限定的。それに対して国内向けは輸入品の値下がりで苦戦している。
率直に言えば敵は東南アジアの低価格商品ではなく、EUの一流ブランド。それと戦うには、ブランドなどの付加価値が必要になる。地元でも大手は自社ブランドがアピールしているが、小規模事業者にブランドを確立する余裕はない。そうした企業でも地域としてのブランドを構築すれば、「燕製品」というブランドを活用できる。
そのために地元の金属加工業から誕生したキッチン&ダイニングウエアのブランド「enn」の構築や燕商工会議所が燕製品の原産地を認証する「メイド・イン・ツバメ」事業などの取り組みを行っており、今回の商談会もそうした地域ブランドの確立が大きな目的になっている。
各企業が大都市で開かれる見本市の出展では、見本市のなかに組み込まれるだけで地域のブランドづくりにはつながらず、それよりも地元へ足を運び、燕市とそこに生まれたブランドを知ってもらおうというわけ。また、池田理事長は同様の商談会を全国の政令指定都市へ出張して開くプランも話していた。