燕市が国の登録有形文化財への登録を目指す旧配水塔=水道町1=、通称「水道の塔」の改修工事が5日、始まった。工期は来年3月15日まで。
旧配水塔は昭和13年、旧浄水場の排水施設として建設された。いちばん上に205トンの水を蓄えられる貯水槽を備え、高くすることで圧力をかけて水道水を各家庭の蛇口まで届けた。
形状は上に向かって細くなる円筒形で、内部はがらんどう。極めて安定した形状だが、建設から73年たって老朽化が著しい。これまでも保存か撤去かという議論があったが、解体にも高額な費用がかかり、昭和56年の見積もりでは改修が2,100万円、解体が1,800万円とその差は小さかったこともあり、文化財的価値を考慮して保存を選択。48年に外壁補修、57年には防護網をかぶせる工事を行った。
平成16年の中越地震、19年の中越沖地震で倒壊の危険性が指摘されたことから、基礎の補強が必要になった。さらに改修工事の費用がかさむが、市は保存を選択。建設当時の詳しい資料が残っていないためはっきりしたことはわかっていないが、基礎杭は百本を超すと思われる松杭が使われている。
今回の改修工事では、コンクリートを地盤に高圧噴射し注入するマルチジェット工法により、地盤改良を行う。総工費は7,045万円だが、そのうち地盤改良が約5,000万円を占める。
構造は境目がなく見えるが、小窓の配置からも5階建てとわかる。コンクリート造で5階部分に貯水槽を設置。高さは31.4メートル、塔の直径は最下部が10.5メートル、最上部が6.4メートル。基礎部分を除いた地上に見えている上屋の重量は推定約1,200トン。ウルトラマンと比べると、身長は40メートルなので旧配水塔はその肩くらいまでの高さがあり、ウルトラマンの体重3万5,000トンの約30分の1とはるかに軽い。
工事は補修だけにとどまらず、建設当初のデザインの復元も図る。5階に通じる外はしごを復元し、玄関の扉は金属製に変更されているが、当初の木製両開き戸に、上部のアーチ部分は金属でふさいであるが、それも当初のガラス窓に戻す。
今の地面は、土を盛って高くしてあり、玄関前にあった数段の階段が地下に埋もれている。地面を下げて階段を元に戻すことはできないが、階段の親柱を配置して、そこに階段があったことがわかるようにする。