燕市が10月にスタートした燕工場見学・体験ツアーをさまざまなメディアで紹介してもらおうと、同市は9、10日の1泊2日で燕・弥彦産業観光プレスツアーを行っており、首都圏から旅に関するジャーナリストら12人を招いて、ツアーのコースを体験して産業観光の魅力を肌で感じてもらっている。
市は産業観光をメーンに着地型観光を推進している。その一環で10月から燕工場見学・体験ツアーを8コースで設定し、各コース週2、3回の実施を企画した。しかし、問い合わせは多いものの参加の申し込みまでつながっていないため、てこ入れを図ろうとプレスツアーを行っている。
プレスツアーは8コースのダイジェスト版で、工場を見学、体験し、良寛史跡を巡るコース設定。旅に関連した情報を発信しているジャーナリストを招いて実際に各コースを体験してもらい、それぞれの体験を各メディアで発信してもらおうという作戦だ。
プレスツアーのタイトルは「匠の技が冴えるものづくりのまち燕〜金属洋食器・鎚起銅器見学と磨き体験」。参加した12人は、日本旅行記者クラブやラジオ・テレビレジャー記者会に所属するジャーナリストやフリーランスなど12人。初日9日はJR燕三条駅集合で、燕市産業史料館、昼は杭州飯店で背脂ラーメン、午後は国の無形文化財鎚起銅器工房の玉川堂、金属研磨の職人を養成する磨き屋一番館、弥彦公園もみじ谷の紅葉を見学し、弥彦の旅館に泊まった。
玉川堂では、代表取締役の七代目玉川基行さんが鎚起銅器の歴史から製造方法や魅力について話した。昨年、人間国宝となった玉川宣夫さんが得意とした技術、何層にも重ねた金属から打ち出し、木目のような文様を表現する木目金(もくめがね)の技術に興味津々で、「表面はでこぼこしてるんですか?」、「相当、削らないと滑らかにならないんじゃないですか?」、「津軽塗りを金属で再現したんだ」と鋭い質問や意見が次々と飛び交った。
金属をたたいておわんのような形になるのはわかりやすいが、花器のように上に向かってすぼめられるのが想像できず、「マジックだね」、「説明されればわかるけど、でもわからない」。その後、工場を見学し、玉川宣夫さんの長男で工場長の達士さんから説明を聴いた。職人の間に入って詳しく説明を聴いたり、職人からポーズをとってもらって写真を撮ったり。
そうこうするうちに、ついっさっきたたいていた材料の口が狭まっているのに気づき、「これだ!」、「これから板を見ると何でもたたいてみたくなるね」と感激。中国には4,000年前からの銅器があると聴くと「ほとんど銅鐸(どうたく)並みだね」と驚いていた。
続く磨き屋一番館では、研磨工場を見学。研磨中のプライベートジェット機の主翼の外板があり、スティーブ・ジョブズやタイガー・ウッズが乗ったプライベートジェット機も同館で磨いたという説明にメモメモ。ステンレスのビアカップの磨き上げ体験も行い、それぞれが自分のビアカップの仕上げ研磨に挑戦した。
あいさつに訪れた鈴木力市長も体験に挑戦。左党の鈴木市長にとっても晩酌の味にかかわるだけに?真剣な顔で研磨機に向かったが、感想は「難しい」、「最初は押しつける力が弱かったみたい」と反省しながらも大事に持ち帰った。
最後に同館で磨いたビアカップとガラスのコップの泡の違いを実演。ビアカップの方がきめ細かくクリーミーな泡になり、百聞は一見にしかず。さらに試飲して「苦みが減ってまろやかな味になるね」、日本酒も注いで「大吟醸かと思ったら本醸造なんだ」と、まさにマジックを見るようだった。
参加者にとっては、まさに驚きの連続で、こうした魅力は言葉で伝えようとしても伝わらない。参加者と主催した市の両方にとって実り多いツアーとなっているようで、関係者もしっかりとした手応えを感じている。
翌10日は弥彦神社参拝と菊まつり鑑賞、国上で国上寺や五合庵を見学、小林工業で金属洋食器の製造工程を見学してから燕三条ワシントンホテルで燕の金属洋食器でランチを味わい、午後は燕三条地場産業振興センターで地元の金属加工製品を見学して帰る。