シンディ・ローパーとのレコーディングやコンサートでの共演をはじめ、世界で活躍する三条市出身のジャズボーカリスト&フリューゲルホルンプレーヤー、TOKUさんのふるさと三条市での初めてのコンサートが28日、三条市中央公民館で開かれ、会場をいっぱいにした500人はスタンディングオベーションでフィナーレの大興奮の一夜となった。
前日27日は午後から3時間近くにも及んだ「TOKUジャズクリニック」で市内中学校吹奏楽部の生徒を指導し、夜は国定勇人市長と会食したあと、日付が変わるまで地元ミュージシャンとのジャズセッションと、忙しい1日を過ごしたTOKUさん。その疲れもまったく見せず、ピアノ、ギター、ベース、ドラムと5人のユニットで、休憩をはさんでアンコール1曲を含めて14曲を演奏し、うち1曲は新潟市のジャズシンガー、えのもとくみこさんがゲスト出演した。
デビュー10周年コンサート「TOKU JAZZ LIVE」として、前半は今春リリースしたスティービー・ワンダーの完全カバーアルバム「TOKU sings&plays STEVIE WONDER」から6曲。後半はスタンダードな「Fly Me To The Moon」や父に捧げてつくった「Shosuke's Place」など。スティービー・ワンダーの曲もヒットナンバーばかりなので、ジャズファンでなくとも聞き覚えのあるメロディーが多く、地元だからと来場した人も親しみやすかった。メローで深く響くTOKUさんの声には、誰もがうっとりだった。
MCでTOKUさんは、新潟市や湯沢町では何度も演奏しているが、高校から新潟市だったこともあるのか、生まれ育った三条市で演奏の機会がなかったのを「あんまり人気ないのかと思った」と笑わせ、三条市では「いずれできたらいいなと思っていて、そんなときも来るのかなと思っていました。きょうは特別な日になります」と三条市での初コンサートの実現に感謝した。
途中で「この水、おいしいんですよ」と三条市のミネラルウオーター「千年悠水」をPRしたり、久保田利伸に誘われてEXILEのATSUSHIとデュエットしたエピソードを紹介したりとMCでも楽しませた。メンバーとのチームワークも抜群で、ランダムにメンバーにいきなりソロを振ったり、思いつきでどんどんテンポアップしたり。笑いもあればインプロビゼーションでのコミュニケーションもあり、ジャズの魅力にあふれていた。
最後にTOKUさんが三条市に住んでいた当時にライブ演奏した三条市・SATO'S BARのマスター、ピアニストの佐藤祐一さんを紹介。前日のセッションでは佐藤さんも参加した。そして三条市でのコンサートは「そう遠くないうちにまたやると思います」。地元のこともあってジャズをあまり聴かない人の来場が多く、ジャズライブにしてはおとなしい会場だったが、最後は会場総立ちで拍手。終演後もあちこちから「良かったー!」と興奮気味に話す声が聞こえた。
TOKUさんはサイン会にも応じた。そのようすを会場で見守っていたのは父の馬場章介さん(63)。和装小物卸を営むかたわら音楽練習スタジオを手掛け、自身もカントリーギターを弾く。父があって今のTOKUさんの活躍があるのは間違いなく、「特別な思いがあった感じですね。ミュージシャンとしては音に出るじゃないですか」とTOKUさんの凱旋を喜んだ。
「いつも通り一生懸命やらせてもらったんですけど、どこか力が入ったんでしょうかね」とTOKUさん。同級生や学校時代の先生とも再会し、「喜んでもらえて楽しかったです」と特別な夜に充実していた。