三条の職人にほれて埼玉県から三条市に移り住んだ(有)トラディショナル・スピリット取締役、小山雅由さん(32)が、外山進光鋏製作所=外山健さん経営・三条市八幡町=が手掛ける握り鋏(にぎりばさみ)を「地域との縁=人」のコンセプトで「made in sanjo」にこだわったコラボレーションをプロデュース。パッケージにも地元の「いからし和紙」を使い、若い女性をターゲットに握り鋏には不釣り合いと思われていた雑貨ショップで販売し、チャレンジしている。
鍛冶職人の外山健さん(70)が作る握り鋏は、火造り手打ち製法で1丁ずつ仕上げる和鋏で、キャリアはすでに55年。経験の積み重ねで磨かれた技から生み出される握り鋏の切れ味に定評がある。
今回のプロデュースでは、握り鋏を麻の鋏入れに入れ、和紙を張った化粧箱に収める。鋏入れは手芸用品と雑貨の店「BonBon」=三条市旭町1=、化粧箱は紙器製造業(株)相場紙器製作所=同市八幡町=が製造した。厚紙の化粧箱に張った和紙は、三条市内の福祉施設「いからしの里」の入所者が作った「いからし和紙」。麻とともに素朴な風合いが生きる。
PR用の写真はアウトドア雑誌などにも掲載して中央で活躍する写真スタジオ「クローバースタジオ」=同市猪子場新田=のフォトグラファー、山本智さんが撮影。まさに「made in sanjo」のコラボレーションから生まれた。
サイズの違いで2種類あり、プロに人気の長いサイズは4,410円、手の中に納まる普通サイズは3,780円。ことし10月に三条市で開かれた三条マルシェで販売を開始し、雑貨ショップ「Room」=三条市猪子場新田=と、新潟市岩室観光施設「いわむろや」=新潟市西蒲区=で扱っている。三条マルシェでは、これまで素通りしていた人たちも若い女性も足を止めていた。
外山さんが作る握り鋏は、裁縫のプロや作家、デザイナーにも愛用され、一般のファンも多い。有名手芸誌をはじめ百貨店や新聞社が製作する冊子でも紹介され、金物専門店や百貨店でも販売されているが、パッケージにもこだわった商品企画は今回が初めてだ。
小山さんは、埼玉県出身で早稲田大学政治経済学部政治学科2005年卒業し、同大学大学院生でもある。東京で知り合った(株)ヤマトキ製作所=三条市鶴田=の小林秀徳専務との縁で2008年に初めて三条市を訪れ、職人のプロフェッショナルな経験や魂に触れ、「人に惚れた」、「何か一緒にやりたい」という思いを抱いた。2010年には東京で仕事をしながらも燕三条の団体などの活動に参加していた。
その後も国定勇人市長はじめ多くの燕三条の人たちとの出会いから、「この地域の人の思いをクローズアップしてPRできたら」、「住んでいる人、個人にフォーカスをあてて新しい商品開発があってもいいのでは」と、この地域に可能性を見い出し、本格的に活動しようと2011年3月、三条市民になった。
小山さんは、「地域のいい物を発掘し、どう磨いていくか」ということが地域活性化には大切と考え、その第1弾が今回の握り鋏のプロデュースで「三条にいるみんなでつくったはさみ」と胸を張る。さまざまなコラボレーションから生み出し、1つの商品にたくさんの地域の情報を持たせた商品をツールに「燕三条を見せていきたい」と、次は「発掘」に目を向けている。