燕三条地場産業振興センターは、7日午後3時から同センターリサーチコアで「Good Design Award 2011 燕三条受賞商品プレゼンテーション」行い、燕三条地域から今年度のグッドデザイン賞を受けた6社の7件のプレゼンテーションを行うとともに、審査員による特別講演会、グッドデザインディスカッションを行った。
今年度のグッドデザイン賞は審査対象3,162件で、受賞は649社の1,112件。グッドデザイン賞を運営する日本デザイン振興会の浅賀武事業部課長はあいさつで、ことしは東日本大震災の発生で中止も考えたが1カ月遅れで行ったが、Gマーク制度が民営化された1998年度以降、最多の応募があったと紹介した。
新潟県内の企業が受賞するグッドデザイン賞の多くを燕三条地域の企業が占め、今年度は県内で受賞した12件のうち7件が燕三条地域。さらに特別賞を燕三条地域の3件が受け、中小企業庁長官賞は全国で8件のうち2件、ロングライフデザイン賞は同じく18件のうち1件が燕三条地域が受け、「これは驚愕に値する」と称賛した。
受賞企業の代表者や企画担当者が順に受賞商品のプレゼンテーションを行ったあと、浅賀事業部課長から受賞企業にそれぞれに賞状を手渡した。
続いて今年度の審査員でデザイン家電アマダナのデザインマネジメントをする株式会社エムテド代表取締役、田子学さんが「デザインの活用が戦略を生む」をテーマに特別講演のあと、コーディネーターに長岡造形大学の松丸武名誉教授、パネリストに田子さんとそれぞれ中小企業庁長官賞を受賞したスノーピークの山井太社長、相田合同工場の相田聡社長の3人を迎えてグッドデザインディスカッション「グッドデザインへチャレンジのすすめ」を行った。
特別講演で田子さんは、自身がデザインにかかわったスリットレスのエアコンが商品化に至るまでの社内の営業から受けた反発、田子さんがデザイナを担当したランドリーアイテムのブランド「nasta」で開発した洗濯ばさみなど、具体的な事例を示した。
それらフックに、製品特性と商品特性の整理、マーケットに迎合しない、デザインの本質には計画がある、重要なのはクリエーションにおける創造力、デザイナーは常にビジョナリーであるべきといった、普遍的なデザイン思想を導き出して見せた。
グッドデザインディスカッションで相田社長は、「続いてきた職人の技術とこれから進んでいきたい市場とをいかにつなぐかをテーマに」取り組み、社員の世代交代も進めたことも紹介。スノーピークの山井社長は「本社施設ともののデザインは同じこと」、「ユーザーとして見たときにほしい商品で、クリエーターとしても作っていて気持ちいい、両面がOKじゃなければいけない」と、ものづくりにかかわる人すべてに気づきを与えてくれるヒントが散りばめられていた。
さらに田子さんは、先に亡くなった米国・Appleの創業者、スティーブ・ジョブズが台湾で作っていたマウスを日本でもつくりたいとお忍びで来日し、日本の企業でプレゼンした事例を紹介。「大手の文脈では絶対にできないことがある」と中小企業の力を信じており、「マーケットが生んでしまった理屈、会社の経営で生んでしまった理屈とかいろいろあるが、もう一度、本当にお客さんの立場で考えたときに何ができるかと言うことを考えることが次の産業に近いレベルにジャンプできるのではないか」との考えも示した。
出席の申し込みは30人ていどだったが直接、会場を訪れた人が多く、実際には約60人の来場で席が足りなくなるほどいっぱいになり、短い時間だったが地元でデザインの牽引役となるリーダーの熱意や大企業には真似できない中小企業の戦略に関する話に聴き入っていた。