色鉛筆のもつ繊細な線と柔らかな色を生かして女性を描く三条市の渡辺花子さんは9、10、11の3日間、三条東公民館で2回目の個展「hanacoten vol.2」を開き、昨年に続いて色鉛筆を中心としたイラストレーションの原画を展示している。
昨年の個展に続いて長岡造形大学の卒業制作で作成した、縦長の額に入れた2枚を1組にした作品が2点。B4のワトソン紙に女性と花を描いた「フラワーチャイルド」シリーズが9点、オーダー作品1点、墨彩画1点、色鉛筆画用課題作品の「ウサギサンタX'mas」1点を展示している。
卒業制作は、描いた作品に色の付いた紙を組み合わせたコラージュ的な要素を加え、縦長にして掛け軸のような雰囲気も漂わせる実験作。「ただの絵では納得させられないので」、「ここまで色鉛筆で描く人がいっぱいいるなかで、どうやって見てもらうかという。厳しい世界です」と渡辺さんは言う。
「フラワーチャイルド」シリーズは、季節の花と女性を組み合わせる。花はクリスマスローズ、スズラン、コスモス、あまり知られないバラのような花を咲かせるラナンキュラスも。広く着色する部分にはベースとして一部、パステルや水彩を使うが、基本は絵画用の色鉛筆を使う。
女性は雑誌などの素材も利用するが、顔の輪郭と目鼻立ちを別の女性のものを組み合わせ、自分のイメージを組み合わせる、いわば脳内でコラージュのような作業を行って生まれる。それを色鉛筆ならではの繊細な線、ぬくもりも感じさせるような柔らかな色彩で描き、フェミニンでおとぎ話のような世界が生まれる。
色鉛筆は誰もが子どものころにふれ、愛着のある画材だ。塗り絵に使うものという認識が一般的なだけに、会場を訪れる人は「色鉛筆でこんなきれいに描けるんだ」と、まず意外性にびっくり。「髪1本1本まで描いている」と精密な作業にも驚き、「どのくらい制作時間がかかるんですか?」と渡辺さんにたずねる人も多い。
渡辺さんは三条高校で美術部だった。当時の美術部顧問が墨彩画を描く画家、藤井克之さん=新潟市西蒲区=。今も藤井さんに学んでおり、加茂山公園を描いた墨彩画はその成果。今回の個展の展示も藤井さんが手伝ってくれた。
2001年に長岡造形大学を卒業したが、仕事に忙殺されて物理的にも絵を描く余裕がなかった。「その気になればいつでも描けると思いながら、このままで描けなくなるという不安」もあったが、それを察した友だちから昨年3月、長い髪はゆるふわウエーブ、外国人のような顔立ちで手にはティーカップ、さらに色や花との指定で作品の注文を受けた。
それが渡辺さんにとっては絵を描く「リハビリのようなもの」になり、大学以来、ブランクだった創作を復活。昨年12月には同じ会場で初めての個展を開いた。仕事もやまて絵画に集中。「踏ん切らないとそのままだと思って」、「貧乏ですけど有意義ですね。使命感みたいなものもあって」と充実感を味わう。
もう一度、本か的には絵を学び直そうと、来年2月まで新潟市のグラフィックデザインの専門学校に通う。ことしは新潟市内での個展も勧められたが、「今、やっていることを知ってもらうために、地元密着型でちびちびとやっていこうと」。おかげで知人や友人、公民館利用者がふらりと来場してくれることもある。
「色鉛筆ですが、実は真剣にやるとここまでできるということをわかってほしいですね」と渡辺さん。来年のカレンダー用に「フラワーチャイルド」シリーズ12点を完成させる計画だったが間に合わなかったため、4月からのカレンダーを作ろうと計画中。作品が足りないので来年は個展を見送るつもりだが、それ以外での発表の場を考えている。
ちなみに渡辺さんの黒ずくめのファッションはゴスロリを目指したものではなく、好きな洋服を買って一緒に着たら黒ずくめになったという「結果的なゴスロリ風」。祖父は旧三条市立図書館の館長を務めたことがあり、「三条凧ばやし」の作詞、作曲者でもある渡辺行一さん。
会場では「フラワーチャイルド」シリーズのポストカードを1枚100円で販売している。10日は午前10時から午後6時まで、11日は午後5時まで、入場無料。